抄録
初期胚における遺伝子制御支配が母性から胚性に移行する時期(Maternal-to-zygotic transition, MZT)では、母性タンパク質や酸化ストレスなどによる異常タンパク質の分解は正常な胚発生のために重要である。近年、母性タンパク質の分解にはユビキチンープロテアソーム系が関与することが報告されている(Stitzel M.L. and Seydoux G., 2007)。しかし、その詳細なメカニズムは不明である。我々は、20Sプロテアソームの形成に関与しているPOMP(proteasome maturation protein)と相互作用する遺伝子DD2-2を同定し機能解析を行っている。DD2-2とPOMPはマウスMZT時期に特異的に発現しており、これらの遺伝子をノックダウンすることにより胚発生が1細胞期で停止することと、停止した胚においてはユビキチン化タンパク質が分解されなかったことが明らかになっている。これらのことから、DD2-2はプロテアソームの形成に関与する可能性が示唆された。本実験では、DD2-2とPOMPをノックダウンした胚から、細胞周期制御タンパク質や母性タンパク質を解析することにより、DD2-2がプロテアソームの形成にどのような影響を及ぼすかを検討した。方法として、DD2-2とPOMPをノックダウンした胚と、プロテアソーム阻害剤(MG132)処理を行った胚を回収し、細胞周期制御タンパク質や母性タンパク質、ユビキチン抗体を用いて、ウェスタンブロッティングと免疫沈降を行った。その結果、DD2-2とPOMPをノックダウンした胚においては、MG132処理した胚と同様に細胞周期制御タンパク質や母性タンパク質が分解されなかった。分解されなかったそれらのタンパク質はユビキチン化されていることが確認された。これらのことは、DD2-2やPOMPをノックダウンすることによりプロテアソームが形成されなかったため、ユビキチン化されたタンパク質は分解されなくなったと考えられる。以上のことから、プロテアソームは胚発生のために重要であり、DD2-2遺伝子はプロテアソームの形成に関与する可能性が示唆された。