日本繁殖生物学会 講演要旨集
第104回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-37
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臨床・応用技術
中空糸法でガラス化されたブタ体外成熟・受精桑実胚からの高効率産仔作出
*前原 美樹本田 香澄中野 和明松成 ひとみ竹内 靖浩金井 貴博松田 泰輔萩原 由以笹山 典久白数 昭雄高橋 昌志渡邊 将人梅山 一大花園 豊長嶋 比呂志
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抄録
【目的】中空糸法が、ブタ体外成熟・受精胚の凍結保存に有効であることを、培養および移植試験に基づいて実証することを目的とした。【方法】ブタ卵丘卵子複合体をHP-POM液で培養し、体外成熟卵を得た。それらをYoshiokaら(2008)の方法に準じて体外受精(IVF)に供し、一部は電気的活性化により単為発生を誘導した。IVFにはKusabira-Orange遺伝子導入ブタの凍結精巣上体精子を用いた。IVF胚及び単為発生胚をPZM-5液で96時間培養し、形態的に正常な桑実期胚を選別して、ガラス化区と対照の非ガラス化区に二分した。胚のガラス化は修正した中空糸法(松成ら,2010)を用いた。操作の基本液には20%仔牛血清含20mM Hepes緩衝TCM199液を用いた。5-22個の胚を収容した中空糸膜を7.5%ethylene glycol(EG)、7.5%DMSOを含む平衡液中に5分間、15%EG、15%DMSOを含むガラス化液中に1分間保持した後、液体窒素に投入しガラス化した。融解には38.5°Cの1M sucrose溶液を用い、段階的に希釈・洗浄した。融解胚を約40時間培養し、胚盤胞への発達を評価した。さらにガラス化区、非ガラス化区各々から得られた胚盤胞を同数ずつ3頭のレシピエント雌(25-32個/頭)に移植し、産仔への発達を比較した。【結果】6回の反復実験において、IVF胚の桑実胚への発達率は平均46.4%(559/1206)であった。IVF桑実胚のガラス化後の生存率は高く、77.2%(88/114)が胚盤胞 (d-6)へ発達したが、非ガラス化区に比べるとやや低い成績であった(92.0%,127/138;P<0.05)。単為発生桑実胚を用いた比較でも同様の傾向が見られ、ガラス化胚の胚盤胞(d-7)への発達率(79.0%,49/62)は非ガラス化胚よりわずかに低かった(90.3%,56/62;有意差なし)。両区のIVF胚盤胞(d-5,6)を各々3頭に移植した結果、全頭が妊娠し、これまでに得られた産仔作出成績はガラス化区で4/32(12.5%)及び8/31(25.8%)、非ガラス化区で9/32(28.1%)及び9/31(29.0%)であった(1頭は妊娠継続中)。【結論】中空糸法の使用によって、体外成熟・受精ブタ桑実胚からの高効率な産仔作出が可能となった。本研究はJST CRESTの助成を受けた。
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© 2011 日本繁殖生物学会
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