日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-14*
会議情報

性周期・妊娠
出生直後の雌ラットethynyl estradiol曝露が成熟後の性行動に及ぼす影響
*小峰 千亜希近藤 保彦小田島 夢花植村 英恵千本 隆志川口 真以子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】Ethynyl estradiol(EE)は経口避妊薬や化粧品の成分として使用されている合成エストロゲン である。エストロゲンは、げっ歯類の脳の性分化に影響し、生涯にわたって行動に重篤な作用があることが知られている。したがって雌の仔ラットのEE投与も、脳のエストロゲン受容体に作用して脳の正常な発達に障害を及ぼす可能性がる。そこで本研究では、EEを生後24時間以内の雌ラットに1回投与し、成熟後の性行動にどのような影響を及ぼすか を検討した。【方法】実験はWistar Imamichi系雌ラット31匹を用いた。生後24時間以内に、oil投与群(対照群) 、低用量EE 20 μg / kg投与群(low EE群)、高用量EE 2000 μg / kg投与群(high EE群)、17β-estradiol 20 mg / kg 投与群(E2群; 陽性対照群)の4群に分け、性成熟後pentobarbital麻酔下で卵巣摘除した。各行動テストの2日前に5 μg estradiol benzoateを、3~5時間前に500 μg progesteroneを皮下投与した。性行動テストは、仕切り板で区切られた2つの部屋からなる観察箱を用い、仕切り板は床から2.5 cmの隙間を設けた。装置の一方の部屋に実験雌ラットを、他方の部屋に性的に活発な刺激雄ラットを入れ、20分間観察した(実験雌は、隙間を通り2つの部屋を行き来できるが、刺激雄は体が大きいため部屋の移動はできない)。【結果】high EE群およびE2群は、oil群とlow EE群に比べて雌の受容性の指標であるロードーシス商が有意に低くなった。また、oil群とlow EE群では、刺激雄に対して拒絶や攻撃行動をほとんど示さなかったが、high EE群では著しく増加した。一方low EE群とoil群の行動には有意な差は認められなかった。これらの結果から、生後24時間以内の高用量EE曝露は陽性対照群より低濃度であるにもかかわらず脳の性分化に作用し、正常な雌脳の発達を阻害することが示唆された。

著者関連情報
© 2012 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top