日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
選択された号の論文の236件中1~50を表示しています
優秀発表賞(口頭発表二次審査)
内分泌
  • 中村 翔, 上野山 賀久, 早川 由紀, 池上 花奈, 冨川 順子, 美辺 詩織, 後藤 哲平, 家田 菜穂子, 田村 千尋, 三宝 誠, ...
    セッションID: AW-1
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    キスペプチン−GPR54系は,性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)分泌を介して生殖機能を制御することで注目を集めている。GPR54を欠損したヒトやマウスでは,一様に著しい生殖機能抑制が認められる一方で, キスペプチンをコードするKiss1をノックアウト(KO)したマウスの表現型は一定せず,正常な性腺機能を持つ個体が見られることから,GPR54の新たなリガンドの存在の可能性も示唆されている。本研究では,キスペプチンがGPR54のリガンドとして生殖機能制御に必要不可欠であることを証明することを目的とし,Kiss1 KOラットを作出した。このラットはKiss1遺伝子を赤色蛍光タンパクtdTomatoに相同組換えし,両アレルにtdTomatoの配列を有する。ラットの利点を活かし,黄体形成ホルモン(LH)分泌動態を詳細に解析するとともに,性行動を解析した。Kiss1 KOラットでは,脳内のキスペプチン発現が欠如し,性成熟に至らなかった。また,雌雄ともに著しく萎縮した性腺を有し,性腺除去後も, LHのパルス状の分泌は認められなかった。さらに,高濃度エストロジェンによってLHサージも誘起されなかった。エストロジェンを負荷した雌雄のKOラットは明瞭なロードシス反射を示したのに対し,テストステロンを負荷した雄のKOラットは雄型性行動を示さなかった。以上の結果からKiss1にコードされるキスペプチンは,GnRH/LHのパルス状およびサージ状分泌に必須であることが明らかとなった。また,キスペプチンは雌型の性行動には関与しないことが示唆された。一方で,同KOラット雄が雄型性行動を示さなかった事から,キスペプチンが性行動を制御する脳の雄性化に関与するという新たな機能を持つことが明らかとなった。本研究は生研センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」の一部として実施した。
卵巣
  • 吉岡 伸, 作本 亮介, 奥田 潔
    セッションID: AW-2
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】黄体ステロイド合成細胞 (LSC) に分化する前の卵胞顆粒層および卵胞内膜細胞は増殖能を有するが、黄体化することにより増殖能は失われると考えられている。このことから、排卵後の黄体の成長は LSC の増殖ではなく、細胞サイズの増加であると考えられている。しかし、黄体の成長機構は不明な点が多く詳細は明らかではない。本研究では、ウシ黄体の形成機構を明らかにする目的で、LSC の増殖能について検討を行うと共に、黄体化誘導因子である黄体形成ホルモン (LH) の LSC の増殖能に及ぼす影響についても併せて検討した。【方法】LSC の増殖能を評価するため、1) 発情周期を通じた黄体組織における Ki-67 (細胞増殖マーカー) 発現を免疫組織化学により調べた。2) 発現が認められた周期について、Ki-67 と LSC の指標となる HSD3B の二重染色を行った。3) LSC の増殖能を評価するため、形成期および中期黄体から LSC を単離し、その増殖能を DNA assay により調べた。4) LSC の増殖能に及ぼす LH の影響を検討するため、形成期および中期黄体から単離した LSC に LH を添加し、細胞の増殖性を DNA assay により調べると共に細胞周期調節因子発現 (CCND2、CCNE1CDKN1A および CDKN1B) を定量的 RT-PCR 法で調べた。【結果】初期、形成期、中期黄体において、Ki-67 陽性細胞が確認された。HSD3B と Ki-67 の共発現は初期、形成期および中期黄体で確認され、中期黄体と比較して初期および形成期黄体で共発現細胞数が多かった。形成期および中期黄体から単離した LSC のDNA 含量は共に増加したが、形成期 LSC のDNA 増加率が有意に高かった。また、LH 添加により中期黄体 LSC の DNA 増加率のみ減少した。形成期黄体 LSC の細胞周期調節因子は LH の影響を受けなかったが、中期黄体 LSC の CCND2 mRNA 発現は LH により抑制された。本研究より、ウシ LSC は増殖し、LSC の増殖は初期黄体、形成期黄体で活発であること、また LH は CCND2 発現を抑制することにより、LSC の増殖能を調節する可能性が示唆された。
  • 川口 翔太, 奥田 潔, 作本 亮介
    セッションID: AW-3
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】LH が progesterone (P4) 分泌を刺激する際に,cytochrome P450 side chain cleavage の活性化と同時に電子の放出が起こり活性酸素種 (ROS) の生じることが報告されている。ROS は黄体退行を誘発する因子として知られており,LH が ROS を増加するにもかかわらず黄体機能を刺激するのは,同時に ROS を分解する抗酸化酵素合成を刺激するという仮説を立てた。本研究では,LH の黄体機能維持機構を解明する目的で上記仮説の証明を試みた。【方法】1) ウシ黄体細胞に LH (10 ng/ml) 及び P4 receptor antagonist の onapristone (OP,100µM) を単独または組み合わせて添加し 24 時間培養後 copper-zinc SOD (SOD1),manganese SOD (SOD2) 及び catalase (CATA) mRNA 発現を定量的 RT-PCR 法により,タンパク質発現を western blot 法により,SOD 活性を SOD activity assay kit を用いて調べた。2) ウシ黄体細胞に LH と SOD 阻害剤である diethyldithiocarbamate (DETC,100µM) を添加し 24 時間培養後,細胞生存率を WST-1 法により調べた。3) 排卵周期各期のウシ黄体組織における SOD1,SOD2 及び CATA mRNA 並びにタンパク質発現を調べた。【結果】1) SOD1 mRNA 及びタンパク質発現が LH 単独添加区において control と比較し有意に増加した。また,SOD1 タンパク質発現が OP を単独または LH と供添加区において control と比較し有意に減少した。SOD2 と CATA mRNA 及びタンパク質発現並びに SOD 活性が LH と OP 供添加区において control と比較し有意に増加した。2) LH 単独添加区において control と比較し細胞生存率が有意に増加したが,LH と DETC 供添加区において LH の作用が抑制された。3) SOD1 及び CATA mRNA 及びタンパク質発現が黄体中期において最も高くなることが示された。一方で,SOD2 mRNA 発現は黄体中期に高くなるものの,SOD2 タンパク質発現は退行期に向けて発現が増加した。本研究から,LH は P4 刺激時に生ずる ROS に対し抗酸化酵素産生を増加し黄体を保護する可能性が示された。
卵・受精
  • 鈴木 伸之介, 野澤 佑介, 塚本 智史, 金子 武人, 今井 裕, 南 直治郎
    セッションID: AW-4
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】Chd1(Chromodomain helicase DNA binding protein1)はSWI/SNF同様のクロマチン再構成タンパク質であり、トリメチル化したH3K4に結合し、RNAスプライシングに関与することや、ES細胞では多能性を維持することが明らかにされている。しかし、これまでのChd1の研究は培養細胞やES細胞における役割を解析したものが主であり、ほ乳類の生殖細胞における役割を解析した報告はない。そこで本実験は初期胚におけるChd1の役割について検討を行った。【方法】1細胞期胚にChd1を標的とするsiRNAを顕微注入し、5.5日目まで胚の培養を行い、発生率、脱出胚盤胞率について検討を行った。次に、受精後4.5日目の胚盤胞期胚を回収し、定量PCRによって多能性マーカー(Oct4, Nanog, Sall4, Sox2)、栄養外胚葉マーカー(Cdx2, Eomes)、原始内胚葉マーカー(Gata4, Gata6)、桑実期胚以降にOct4、Nanog、Cdx2の転写を制御するHmgpiの発現量について解析を行った。また、免疫染色によって胚盤胞期胚におけるOct4、Cdx2のタンパク質の局在についても比較解析を行った。さらに、得られた胚盤胞期胚の正常性を確認するためにoutgrowth実験を行い、4日後にコロニー形成能を調べ、6日後に形成されたコロニーにおけるOct4タンパク質を免疫染色によって確認した。【結果】Chd1抑制胚では受精後から5.5日後まで形態的な異常は見られず、胚盤胞期胚までの発生率、脱出胚盤胞の率にも影響はなかった。しかしながら、Chd1抑制胚においてはすべてのマーカー遺伝子の発現が有意に減少していることが示された。また、胚盤胞期胚を用いて免疫染色を行ったところ、Oct4、Cdx2タンパク質の局在に変化はなかったもののタンパク質量はが有意に減少していることが明らかになった。さらに、Chd1抑制胚はICM由来のコロニー形成能が対照区(72.4%)と比較して著しく低いことが示された(27.8%)。以上の結果から、マウス初期胚においてクロマチン再構成タンパク質Chd1は、胚盤胞形成期の遺伝子発現を制御することで、胚の多能性を維持していることが示唆された。
生殖工学
  • 福田 篤, 若井 拓哉, 渡辺 大士, 河野 友宏
    セッションID: AW-5
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】マウス体細胞クローン胚は胚盤胞期以降急激に発生能が低下する。これまでに,単一クローン胚盤胞からのトランスクリプトーム解析から,Xist遺伝子の発現異常によるX染色体不活性化(XCI)が全能性獲得の障害となることが明らかとなった。体細胞核のリプログラミングは核内局在性の母性因子が重要な役割を果たすことが知られている。そこで,本研究では量依存的Xist活性化因子である母性RNF12に着目し,体細胞由来のXist活性化及び,全能性へのリプログラミングに及ぼす影響を検証した。【方法】核移植のレシピエント卵子にはB6D2F1系統マウス(8-12週齢),ドナー細胞にはB6CBF1系統(新生仔)のセルトリ細胞をそれぞれ用いた。母性RNF12の発現抑制にはsiRNAを用いたノックダウン(KD)法を用いた。母性RNF12抑制卵子より,セルトリ細胞クローン胚(mRnf12KD SeCNTs)を作出した。KSOM培地で胚盤胞期まで体外培養し,定量PCR法を用いた遺伝子発現解析を行った。免疫染色解析(H3K27me3)でXCIの状態を評価した。クローン胚の一部は子宮へ移植し,体内発生能を調べた。【結果】mRnf12KD SeCNTs胚盤胞期におけるXist発現量は,コントロール区の6倍以上発現抑制された(P<0.01)。さらに,胚盤胞期におけるH3K27me3陽性細胞の割合も,mRnf12KD SeCNTsでは有意に減少した(37.2%vs7.9%)。また,母性Rnf12が60%以上存在する卵子を用いた場合,Xist発現量に有意な減少はみられなかった。移植試験の結果,コントロール区では2.2%(2/93)が至ったのに対し,mRnf12KD SeCNTsでは8.7%(9/103)が産仔に至り,有意に発生能が向上した(P<0.05)。以上の結果より,SeCNTsにおけるドナー細胞核のXist活性化は母性RNF12依存的であり,母性RNF12は全能性へのリプログラミングを阻害する因子であることが明らかとなった。
  • 新田 卓, 阿部 朋行, 田中 裕次郎, 佐々木 京子, 増田 茂夫, ボラジギン サラントラガ, 林 聡, 北野 良博, 花園 豊, 長尾 ...
    セッションID: AW-6
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【背景】再生医療において、ES/iPS細胞を移植に用いる際、目的とする組織幹細胞への分化誘導が必要であるが、造血幹細胞のように発生後期に「場」誘導的に出現する組織幹細胞は、体外での分化誘導が困難である。これに対し我々は、サルES細胞をヒツジ胎子に移植することで、生後のヒツジ骨髄内にサル造血組織をもつヒツジの作出に成功した。本研究では、サルES細胞のヒツジ胎子内における生着および分化制御のメカニズムを解析することを目的に、移植細胞の分化状態、ヒツジ胎子の日齢および部位の影響について検討した。【方法】サルES細胞個を未分化のまま、または初期中胚葉系へ分化させた後、妊娠43-73日齢のヒツジ胎子29頭の肝臓または皮下に移植した。得られた産子におけるサルES細胞の生着および分化状態について、免疫染色およびPCRにより解析した。【結果】50日齢未満のヒツジ胎子の皮下に、サルES細胞を初期中胚葉系に分化させた後に移植した5頭中1頭、ならびに未分化サルES細胞を移植した5頭中3頭で、サルES細胞由来のテラトーマが形成された。いずれの産子においても、サル造血系細胞は検出されなかった。一方、50日齢以上における移植においては、ES細胞を初期中胚葉系に分化させた後に胎子肝臓に移植した8頭中5頭において、ヒツジ骨髄内にサル造血系細胞が検出された(1.1-1.6%)。テラトーマはいずれの産子においても認められなかった。未分化サルES細胞を移植した9頭中全頭において、テラトーマおよびサル造血系細胞は検出されなかった。【まとめ】体外で初期中胚葉系に分化の方向付けを行なったサルES細胞を、胎齢50〜73日のヒツジ胎子肝臓へ移植することで、サルES細胞の造血系分化が支持された。一方、未分化なサルES細胞をヒツジ胎子の皮下に移植した場合に、テラトーマが形成された。以上より、サルES細胞の分化状態、ならびにヒツジ胎子の日齢および部位が、ヒツジ胎子体内におけるサルES細胞の生着および造血系分化に重要な要因であることが示された。
臨床・応用技術
  • 関 信輔, 李 承起, 岩崎 佳子, 平塚 匡, 草野 和成, 江藤 澄恵, 成瀬 清, 吉崎 悟朗
    セッションID: AW-7
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】メダカでは,生命科学の材料として近交系,野生系統や近縁種など他にはないユニークなリソースが多数維持・提供されている。これらの生物遺伝資源を保存するためには,未受精卵や受精卵の凍結が望まれるが,現在までにその技法は開発されておらず,すべて継代により維持されている。しかし,継代飼育は,異なる系統間の混入,病原体への感染,転位因子による系統の変質などの問題を抱えている。そこで本研究では,精子および卵子の両者へと分化可能な未分化生殖細胞をガラス化凍結し,代理親魚技法により凍結細胞由来の個体を得ることを目的とした。【方法】メダカ生殖細胞の低温生物学的特性を調べるために,L-15液に回収した生殖細胞を,スクロース添加L-15液あるいは耐凍剤(エチレングリコール以下EG,グリセロール,プロピレングリコール以下PG)添加L-15液に浸した後に生存性を調べた。次に,耐凍剤を添加したガラス化溶液(フィコール,スクロースを含む)を作製し,メダカ生殖細胞(vasa-GFP発現系統)の凍結を行った。最後に,融解後に得られた生殖細胞を孵化直後の不妊3倍体クロメダカ(宿主)に移植し,成熟した宿主からドナー由来の精子および卵子を得られるか調査した。【結果】メダカ生殖細胞は25℃では高張液中での浸透圧的収縮に弱いが,処理温度を0℃に冷却することにより,その傷害は軽減された。耐凍剤のうち,PGの毒性が低く,ついでEGの毒性が低かった。PG添加ガラス化溶液では,融解後に生存した生殖細胞を十分に得ることはできなかったが,EG添加ガラス化溶液では,生殖細胞を含む精巣をまるごと凍結しても,融解後に44.9%と高生存率で生殖細胞を得ることに成功した。最後に,このガラス化凍結した生殖細胞(vasa-GFP緋メダカ由来)を不妊宿主へ移植したところ,宿主両親からドナー由来のハプロタイプを示す次世代のみが得られた。以上,本研究において,メダカ生殖細胞をガラス化凍結し,代理親魚技法により凍結細胞由来の個体を作出する方法の構築に成功した。
一般口頭発表
卵・受精
  • 藤原 祥高, 徳弘 圭造, 室 悠子, 荒木 慶彦, 伊川 正人, 岡部 勝
    セッションID: OR1-1
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】哺乳類の受精には様々なステップがあり,それらは巧妙なメカニズムによって成り立っている。しかし,受精の分子メカニズムについてはほとんど明らかになっていない。また,これまで精子上に存在するGPIアンカータンパク質が受精に関与すると言われているが,その詳細についてもよく分かっていない。本研究では,ヒト及びマウス精子において精子上に存在し抗体により受精阻害が起こると報告されている精巣内生殖細胞特異的GPIアンカータンパク質TEX101(testis expressed gene 101)に着目し,受精におけるTEX101の生理的機能を明らかにするために遺伝子欠損(KO)マウスを作製し,その機能解析を行った。【方法】TEX101の生理的機能を明らかにするために,ES細胞を用いた相同組換え法によりTex101遺伝子KOマウスを作製した。交配より得られたホモKOマウスを用いて目的遺伝子の欠損を確認後,表現型解析を行った。【結果】作製したヘテロKOマウス同士の交配からメンデルの法則に従って,正常に発育するホモKOマウスが得られた。交配実験の結果,KO雌マウスの妊孕性は正常だったが,KO雄マウスは不妊であることが分かった。その原因を探るためin vitro解析を行ったところ,Tex101KO雄マウスが産生するKO精子の形態及び運動性は正常であったが,卵透明帯への結合不全であることが明らかとなった。また,KO雄マウスの不妊の直接の原因は,KO精子が子宮から輸卵管へと移行できないことが分かった。これらの結果から,TEX101は精子の受精能において必須の因子であることが明らかとなった。本会では,TEX101の受精における機能とKOマウス解析から見えてきた受精の分子メカニズムについて報告したい。
  • 畑中 勇輝, 守田 昂太郎, 清水 なつみ, 西川 慧, 西原 卓志, 加藤 里恵, 武本 淳史, 樋口 智香, 天野 朋子, 安齋 政幸, ...
    セッションID: OR1-2
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】受精直後のリプログラミング機構を明らかにするために、当研究室では、MII期卵子と受精後15時間の胚におけるディファレンシャルディスプレイ解析を行ない (Matsumoto et al., 2001)、成熟個体で、生殖細胞特異的に発現する新規遺伝子GSEを同定している (Zhang et al., 2002; Mizuno et al., 2006)。GSEは着床前初期胚において、核内に局在していることが明らかになっている (Mizuno et al., 2006)。そこで、本研究では受精直後の前核期胚に焦点を当て、GSEの機能解析を行なった。【方法】MⅡ期卵母細胞cDNAライブラリーを用いた酵母two-hybrid systemにより、 GSEと相互作用するタンパク質のスクリーニングを行った。体外受精卵を供試し、ペプチド抗体を用いたGSEの蛍光免疫染色、さらにH3、H4及びASF1抗体を用いた免疫沈降を行なった。またMII期卵母細胞を用いて、GSE antisense RNA顕微注入によりGSEをノックダウンした。MII期卵母細胞は透明帯穿孔後IVFに供試した。さらに得られた受精卵は5mCと5hmC抗体を用いた蛍光免疫染色、及びLINE1とOct4CpG領域におけるバイサルファイト解析に供試した。【結果】相互作用タンパク質のスクリーニングにより、GSEはコアヒストンと相互作用することが認められ、GSEはH3及びASF1で複合体を形成している可能性が示唆された。受精卵の雄性前核にGSEの強いシグナルが認められ、GSEをノックダウンさせると雄性前核の5mCレベルは無処理区と比較して高く、一方5hmCレベルは低いことが示された。バイサルファイト解析の結果、GSEノックダウン胚はLINE1及びOCT4のCpG領域のメチル化レベルが高いことが認められた。以上から、GSEはヒストンと複合体を形成し、受精直後の能動的脱メチル化機構に関与することが示唆された。
  • 浜崎 伸彦, 今村 拓也
    セッションID: OR1-3
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】CG配列のメチル化は、細胞ごとにパターンを形成している。核移植やiPS細胞技術により体細胞ゲノムリプログラミングを人為誘導できるが、DNAメチル化パターン異常と形質異常に至る。我々はDNAメチル化パターン異常を仲介する分子として、遺伝子プロモーター領域から転写されるpromoter-associated noncoding RNA(pancRNA)に着目した。pancRNAはプロモーター領域の配列特異的脱メチル化に関わる。【方法】8週齢雌マウスから未受精卵、受精卵とSrCl2活性化卵を採取し、解析に用いた。マウス初期胚で特に高発現を示したIl17d遺伝子座のpancRNA (panc-Il17d)について機能解析を行った。pancRNA発現解析にはRT-PCRを、DNAメチル化解析にはバイサルファイトシークエンス法を、pancRNA機能解析にはsiRNAマイクロインジェクション法を用いた。【結果】panc-Il17dは受精胚と人為的活性化胚では異なる発現挙動を示し、panc-Il17d発現変化に対応して、DNAメチル化異常を示した。 panc-Il17d発現に先立って一過的に非CG配列のメチル化が出現しており、panc-Il17dノックダウン胚ではCG/非CG配列のDNAメチル化レベルが上昇した。【考察】panc-Il17dは配列特異的DNAメチル化制御を仲介していると考えられた。人為的活性化胚において、Il17d遺伝子座ではpancRNA異常抑制が起こるが、逆にpancRNA上昇が起こる遺伝子座も見つけており、pancRNA異常発現上昇/抑制が複数遺伝子座で起こっている可能性が高い。新たに見つけた非CG配列のメチル化については、相補鎖にシトシンが存在しないことから、細胞分裂を経るとメチル化が娘細胞に引き継がれない。非CG配列がpancRNAと相互に作用しながら初期胚エピゲノム形成に関わる新規の一過的エピジェネティックシグナルと考え、現在解析を進めている。
  • 水町 静華, 佐々木 邦明, 松原 和衛, 平尾 雄二
    セッションID: OR1-4
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】マウス卵母細胞の体外発育において2%ポリビニルピロリドン(PVP)の添加は透明帯の厚さを約30%減少させた (第104回大会)。本研究では,透明帯を挟んで連絡する卵母細胞と卵丘細胞の関係に着目し,それらの形態に及ぼすPVPの影響を検討した。【材料および方法】生後11~12日齢のマウス(ICR)の卵巣から前胞状卵胞を注射針で分離し,コラゲナーゼ処理した後,組織培養インサート上で培養した(37℃,5%CO2 in air,Day 0~10)。培養液には5%ウシ胎児血清および1 ng/ml FSH等を含む修正α-MEMを用い,0%または2%(w/v)のPVP (MW360000)を添加した。Day 2まで一律にPVP0%で培養した後,各濃度とした。Day 10に複合体を回収し,定法に従って,透過型電子顕微鏡(TEM)観察あるいは共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)によるアクチン細胞骨格(Alexa Fluor 488ファロイジン)観察に供した。CLSM観察では,一部の卵丘細胞を取り除き,透明帯を貫通するプロセスを観察した。【結果および考察】PVP0%区および2%区における卵母細胞の平均直径は,それぞれ Day 0の56.8 µm (n=40)および57.0 µm (n=40)からDay 10の69.8 µm (n=30)および70.2 µm (n=37)へと増大した。TEM観察の結果,PVP0%区の卵丘細胞では透明帯との間に幅0.2~0.5 µm程度の間隙が多く観察されたのに対し,2%区では両者が密着し,in vivo由来の複合体の組織像に類似していた。CLSM観察の結果,0%区の透明帯を貫くプロセスは長くて本数が少なく,2%区では(おそらく薄い透明帯と符合する)短いプロセスが密に存在することが明らかとなった。以上の結果, PVPの添加によって,卵母細胞―卵丘細胞間の連絡が,物理的距離および機能面(プロセス)の二つの点で,強化されている可能性が示唆された。
  • 小賀坂 祐平, 星野 由美, 種村 健太郎, 佐藤 英明
    セッションID: OR1-5
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】有糸分裂において、mTOR-raptor複合体(mTORC1)は紡錘体形成・染色体分配に寄与することが示唆されているが,卵成熟における機能は明らかでない。これまでに我々は,マウスの卵母細胞でmTORが紡錘体上に,特にリン酸化mTOR(ser2448,ser2481)は紡錘体極・中央体に局在することを報告した。本研究では,卵成熟におけるmTORC1の役割の検討を目的として,マウス卵丘細胞・卵母細胞におけるmTOR,raptorの局在解析を行った。【方法】未成熟ICR雌マウスにPMSG 投与後46時間に卵母細胞を採取した。体外成熟培養には,Waymouth’s MB 752/1培地を用い,卵核胞期(GV),培養後GV期,卵核胞崩壊(GVBD),第一減数分裂中期(MI),第一減数分裂後期-終期,第二減数分裂中期(MII)の卵母細胞はそれぞれ培養後0,4,8,10,12,18時間に採取した。 mTORの局在は,裸化卵母細胞および卵丘-卵母細胞複合体を2%パラフォルムアルデヒドで固定後,抗mTOR,抗リン酸化mTOR (ser2448, ser2481) 抗体を用い免疫蛍光染色により解析した。mTOR,raptorの共染色は,抗raptor抗体感作後,Alexa Fluor 488 標識の二次抗体で標識し,その後Zenon Alexa Fluor 568で標識した抗mTOR抗体を反応させた。核染色にはpropidium iodideまたはヘキスト33342を用い,共焦点レーザー顕微鏡により観察した。【結果】分裂期の卵丘細胞でmTORは紡錘体上に,リン酸化mTORは紡錘体極および中央体に局在した。また,raptorは紡錘体上でmTORと共局在した。卵母細胞において,mTORとraptorは,GV期で核内,GVBDでは染色体周辺,MI-MIIで紡錘体上に共局在を示した。先の報告と合わせ,以上の結果から,mTORC1は有糸分裂に加え,減数分裂において紡錘体制御に関与する可能性が示された。
  • 加川 真二朗, 長友 啓明, 高橋 昌志, 川原 学
    セッションID: OR1-6
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    ウシ胚盤胞期胚におけるTEAD4およびYAPの発現動態に関する研究

    ○加川真二朗,長友啓明,高橋昌志,川原学 (北大院農)

    【目的】哺乳類の個体発生における最初の分化は胚盤胞期胚に起こり,構造的に内部細胞塊(ICM)と栄養外胚葉(TE)に二分される。この分化調節機構についてマウス胚では解析が進んでおり,Hippo pathway下流の転写コアクチベーターであるYes-associated protein(Yap)が重要な役割を果たすことがわかっている。すなわち,胚のそれぞれの割球における転写因子Tead4の細胞内局在を,Yapが直接変化させることにより分化を制御している。しかし,ウシ胚でも同一の仕組みで分化が制御されているかは不明である。そこで,ウシ胚におけるICM/TE分化制御機構を探るため,ウシTEAD4(bTEAD4)遺伝子の胚盤胞期胚における発現解析を行い,さらにウシYAP(bYAP)遺伝子の塩基配列を解析した。【方法】体外受精により作出したウシ胚盤胞期胚からICMおよびTEの部分胚を採取した。これらのサンプルに通常の全体胚(Whole)を加え,3種のサンプルより抽出したtotal RNAを用いて,bTEAD4の定量PCRを行った。また,RT-PCRでbYAP遺伝子cDNAをクローニングし塩基配列を決定したのち,マウスYap(mYap)のデータベースと比較した。【結果および考察】ICM,TE,Whole胚でのbTEAD4の発現を定量PCRで比較した結果,TEでの発現レベルがICMおよびWholeサンプルの発現レベルよりも高い値を示した。また,決定したbYAP塩基配列からタンパク質一次構造を予測しマウスと比較した結果,ウシではN末端領域が欠損していることが判明した。この欠損領域はTeadファミリー転写因子との結合領域であり,mYapタンパク質局在に重要な役割を果たすリン酸化部位も含まれている。以上の結果から,ウシ胚では,マウス胚のようなTead-Yapの直接的な相互作用を介した機構とは異なる様式でICM/TEの細胞分化が制御されている可能性が示された。
  • 塚本 智史, 山本 篤, 原 太一, 南 直治郎, 鬼頭 靖司, 小久保 年章
    セッションID: OR1-7
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】リソソームは細胞内で分解を担う重要なオルガネラである。リソソーム内には酸性環境下で働く多種多様な分解酵素が含まれ、リソソームに取り込まれた物質はその構成単位にまで分解される。これまでの研究からリソソームの機能は単なる分解だけでなく、細胞内の様々な生理機能と関連していることが明らかとなっている。受精後の初期胚発生においても、オートファジー・リソソーム経路が着床までの胚発生に必須であることが明らかとなっている。しかし、着床前胚のリソソームの形態や活性ついては未だ不明な点が多い。そこで我々はマウス受精卵の発生過程におけるリソソームの形態や活性の変化とリソソームの機能不全が胚発生に与える影響を多面的に解析した。【方法】発生過程におけるリソソームの形態を観察するために、未受精卵と着床までの各時期の受精卵をLysoTrackerで染色後に共焦点型顕微鏡で観察した。次に、リソソーム内の主要な分解酵素であるカテプシンBとDの抗体を使ったウェスタンブロット法によって、発生過程におけるカテプシンの活性状態を検討した。リソソームの機能不全が胚発生に与える影響を解析するために、リソソーム膜の構成タンパク質であるLampのsiRNAを受精直後に顕微注入してその後の胚発生を観察した。さらに、カテプシン阻害剤などの薬剤処理による影響も併せて観察した。またリソソーム不全が微細構造に与える影響について電子顕微鏡を用いて解析した。【結果】リソソームは受精卵に豊富に存在するものの、時期特異的にサイズが変化することが分かった。これと関連してカテプシンの活性が変化することが明らかとなった。siRNAや薬剤処理によるリソソームの機能不全によって胚発生は停止することが分かった。また、カテプシン活性を阻害するとリポフスチン様の構造体が蓄積することも明らかとなった。マウス受精卵ではリソソーム活性が非常に高く発生段階特異的に制御されている可能性が示唆された。リソソーム活性を高く維持することは卵細胞質の品質維持に必要なのかもしれない。
  • 中小路 宗洋, 舟橋 弘晃
    セッションID: OR1-8
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】 小卵胞(SF)由来ブタ卵丘細胞卵母細胞塊(COCs)は中卵胞(MF)由来COCsより卵丘膨化が劣ることが知られている。卵丘膨化の主要物質は,卵丘細胞で主に産生されるヒアルロナン(HA)である。そこで本研究は,SFおよびMF由来COCsまたは卵丘細胞塊(CCs)のHA産生能を比較検討した。【方法】 屠場由来ブタ卵巣の直径1-2mmおよび3-6mmの表層卵胞からCOCsを採取し,それぞれSF区およびMF区とした。COCsはmPOM培地中で既法(前半20時間のみGn・dbcAMP添加)に従い合計44時間体外成熟培養した。CCsは27G針を用いてSFおよびMF由来COCsを圧迫し,卵細胞質を除去して作製した。HA量は市販のHA定量キットを用いて定量した。卵丘細胞数は,培養0時間と20時間にCOCsとその培地から卵丘細胞を回収し,血球計算盤を用いて算出した。卵丘細胞の生存率は,Propidium iodide/SYBR-Green染色後に算出した。【結果】 CCsとCOCs間に卵丘膨化の度合いに差はなかった (p>0.05)。SF由来COCsの卵母細胞の体外成熟率は,MF由来のそれらより低くかった(p<0.05)。SF由来COCsの卵丘細胞数およびHA産生能は,ともにMF由来COCsのそれらより低かった (p<0.05)。しかし,卵丘細胞あたりのHA産生能は,SFおよびMF由来COCs間に有意差はなかった(p>0.05)。以上の結果から,SFおよびMF由来COCs間の卵丘膨化の違いは,卵丘細胞自体のHA産生能に差があるわけではなく,COCあたりの卵丘細胞数に起因することが示唆された。
  • 町田 遼介, 星野 由美, 佐藤 英明, 種村 健太郎
    セッションID: OR1-9
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】現在,卵母細胞の体外成熟培養(IVM)には,ディッシュ底面に作成したドロップ中で卵丘細胞-卵母細胞複合体(COC)を複数個培養する,Culture Drop(CD)法が広く用いられている。しかしCD法では,卵丘膨化の際,重力の影響でディッシュ底面に付着するような形で,二次元的に膨化することとなる。生体内での卵丘膨化の際は,卵丘細胞は三次元的に増殖,膨化を行っていることから,培養環境を生体内に近づけるという点で,三次元構造を維持しつつIVMを行うことが重要であると考えられる。そこで,三次元構造を維持できる培養法である,Hanging Drop(HD)法をIVMに用いることで,重力影響の軽減によりCOCの三次元構造の維持が可能となり,より生体内に近い環境でIVMを行うことができるようになることが期待される。また,HD法を単独培養法として用いることで,培地添加物の種類や濃度の影響を検討する際に,より条件を細分化して検討することができるようになり,培養条件の最適化に大きく貢献できると期待される。本研究では,ブタ卵母細胞のIVMにHD法を用いることで,単独体外成熟培養時の体外成熟率の向上が可能であるか検討することを目的とする。【方法】実験には,食肉処理場由来のブタ卵巣から採取した卵母細胞を用いた。96wellプレートに,NCSU-23培地を10μl/wellになるようドロップを作成し,採取した卵母細胞を,このプレートをそのまま用いたCD法と,プレートを逆さまにしたHD法によってIVMを行った。IVMは,ホルモンとdbcAMPを含む培地で22時間培養し,細胞周期の同期化を行い,培地交換の後,22時間の成熟培養を行った。IVM後,酢酸オルセイン染色により,核相判定を行い,核成熟率を算出した。【結果】CD区に比べ,HD区において,核成熟率の向上が見られた。また,HD区ではCD区に比べ三次元的な卵丘膨化が見られた。これらのことから,ブタ卵母細胞における単独成熟培養においては,CD法よりもHD法の方が適していること,IVMにおいて三次元構造を保つことの有用性が示唆された。
  • 安藤 萌, 杉浦 幸二, 内藤 邦彦
    セッションID: OR1-10
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】卵の減数分裂が正常に進行するためには、卵内に蓄積されたmRNAが適切な時期に翻訳される必要がある。減数分裂過程においては、RNA結合タンパク質のCPEBを中心とした翻訳制御機構が主として働いているとされているが、近年アフリカツメガエルの卵ではMusashi(Msi)というタンパク質がMos mRNAに結合し、翻訳を活性化することで減数分裂の再開に関与することが明らかになった。しかし現在のところ哺乳類卵におけるMsiの機能を示した報告はない。そこで本研究は哺乳類卵においてMsiが減数分裂進行の制御に関与しているか明らかにすることを目的とし、ブタ卵を材料に実験を行った。【方法】はじめにブタMsi(以下pMsi)遺伝子の単離を試みた。脊椎動物のMsiには1と2の2種類が存在し、どちらもマウスやヒトで報告されているため、それらの配列に基づくプライマーを設計し、RT-PCRにより完全長cDNAを得た。次に、in vitroで合成したpMsi1、pMsi2のmRNA及びアンチセンスRNA(asRNA)をブタ卵に顕微注入して過剰発現及び発現抑制を行い、減数分裂過程におけるpMsiの必要性を検討した。【結果】RT-PCRにより他種の相同タンパク質と高い相同性を示すpMsi1とpMsi2が得られた。また両者のmRNAは減数分裂過程を通してブタ卵に存在した。ブタ未成熟卵にpMsi1を単独で過剰発現させたところ、培養18時間において対照と比べ有意に減数分裂の再開が促進され核膜崩壊率は対照の22.8%に対し52.3%であった。次にasRNAの注入によりpMsi1のみ合成を阻害した結果、減数分裂の進行に影響は見られなかった。そこでpMsi1とpMsi2の両者を同時に発現抑制したところ、対照と比較して減数分裂の進行に有意な遅れが見られ、対照卵の減数分裂再開が進行中の核膜崩壊率62.5%の時点で、pMsi抑制卵の核膜崩壊率は37.0%であった。以上より、pMsiが減数分裂の正常な進行に必要であることが示唆された。
  • 櫻井 優広, 野口 倫子, 鈴木 千恵, 吉岡 耕治
    セッションID: OR1-11
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】近年,ブタ胚の体外生産技術が改善され,当研究室でも体外生産胚盤胞の移植による産子作出に成功している。しかし体外生産胚では,胚盤胞が透明帯から孵化できずに着床率が低下することなどが知られており,より安定した胚の体外生産技術の確立が求められている。これまでに我々は,ブタ胚の発生培地に10%ウシ胎子血清(FBS)を添加することで,胚盤胞への発生率および孵化率が向上することを報告した。しかし,FBSには未知因子が多く含まれ,ロット差も大きいため,より安定した成績が得られる無血清培地の開発が必要である。そこで,本研究ではブタ胚の体外生産技術の改善を目的に,血清代替物であるknockout serum replacement (KSR) を添加することで,胚盤胞の孵化率の向上を試みた。【方法】食肉処理場由来の卵巣から採取し,卵子成熟用培地(POM)で44時間成熟培養した卵子は,パーコール分離した凍結融解精子と体外受精を行った。媒精後10時間目に卵丘細胞を除去した体外受精胚は,培養胚発生用培地(PZM-5)で5日間培養した。媒精後5日目(Day 5)に得られた胚盤胞は,0%, 1%, 2%, 5%, 10% KSRあるいは10% FBSを添加した後期胚培養用培地(PBM)で継続培養し,Day 6およびDay 7に胚盤胞の生存率および孵化率を,Day 7に総細胞数を計測した。また,0%および5% KSR添加区はDay 6に内部細胞塊(ICM)および栄養膜外胚葉(TE)の細胞数を計測した。【結果】Day 7に完全に孵化した胚盤胞の割合は,5% KSR添加区で有意に最も高く(0% KSR: 8.9±2.2%, 5% KSR: 51.6±6.2%, FBS: 35.4±8.4%),5% KSR添加区の完全に孵化した胚盤胞の総細胞数(135.6±6.3個)は,FBS添加区(102.6±6.4個)に比べ有意に多かった。また,5% KSR添加区のDay 6胚盤胞では,TE細胞数が無添加区に比べ有意に増加したが(0%: 52.2±3.7個, 5%: 63.4±3.0個),ICM細胞数は差を認めなかった(0%: 12.0±0.9個, 5%: 11.6±0.9個)。以上,PBMへの5% KSR添加により,ブタ胚盤胞のTE細胞数が増加し,孵化が促進されることが示された。
生殖工学
  • 築山 智之, 浅野 良太, 今井 裕, 丹羽 仁史, 大日向 康秀
    セッションID: OR1-12
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】マウスおよびラット以外の哺乳動物種においては、生殖細胞寄与能をもつような多能性を有するES細胞株の樹立に関する報告は依然として皆無といってよく、多能性幹細胞株を樹立・維持するための適切な培養条件を探索・評価する実験系の構築が求められていた。本研究では、iPS細胞樹立系を応用し、キメラ貢献能、生殖細胞寄与能を有する新型の多能性幹細胞株を多様な動物種において樹立・維持可能な新規培養条件の同定を目的とする。【方法】未分化細胞特異的レポーターおよび人為的に発現制御できるリプログラミング因子をポリシストロニックに搭載したpiggyBacトランスポゾンベクターによって遺伝子導入する独自のiPS細胞樹立系を構築し、129B6F1およびNODマウスの胎仔線維芽細胞を用いて新規培養条件の探索を行った。同定した条件を用いて樹立した細胞株が多能性を持つか検証した。Acrosinレポーターを用いることで、樹立した幹細胞株の生殖細胞寄与能を検討した。また、既存のマウスESおよびiPS細胞株を、新規に同定した培養条件下で培養し、多能性を保持したまま移行できるか検証した。さらに、新規に同定した培養条件を用い、ブタの体細胞からの新型多能性幹細胞株の樹立を試みた。【結果および考察】独自に構築した培養条件評価系を用い、129B6F1系統のみならずNOD系統のマウスを用いても多能性を獲得・維持できる新規の培養条件を同定した。この培養条件を用いて樹立した新型の多能性幹細胞株は、体細胞由来、ES・iPS細胞由来に関わらず、高度にキメラに寄与し、生殖細胞にも分化できることを示した。また、ブタの体細胞からもマウスES細胞様の形態を示す細胞株を樹立できることを示した。我々が同定した新規の多能性獲得・維持培養条件はLIFを含まず、得られた細胞株はLIF非依存的に増殖することが可能であることから、本研究は世界中で進められているLIF培地の改良とは一線を画するものであり、今までにない新規の多能性獲得・維持条件を同定したと考えられる。
  • 福田 智一, 星野 由美, 西森 克彦, 佐藤 英明
    セッションID: OR1-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】人工多能性幹細胞(iPS細胞)とは人工的に遺伝子を導入し、終末分化した体細胞に生殖細胞を含む全身の細胞へ分化できる全能性を付加する技術である。ヒトおよびマウスにおいてこのiPS細胞誘導技術は確立されているが、生物生産において重要な家畜であるブタにおいてはその技術の確立は十分とは言えない。iPS細胞化技術が各種動物において可能になれば、様々な産業利用が可能になると考えられる。我々はブタ由来iPS細胞の樹立を試みたので報告する。 【方法】妊娠後約1ヶ月齢のブタ胎児から得られた線維芽細胞へマウスのリプログラミング因子を含むSTEMCCAレンチウィルスを導入した。遺伝子導入の効率を上昇させるために組み換えウィルスの濃縮を行い、加えて培養条件はLIF (Leukemia Inhibitory Factor)、bFGF(basic fibroblast growth factor)などの増殖因子の影響など様々な条件を試みた。加えて幹細胞のマーカーの発現を検出した。  【結果】遺伝子導入後、約2週間後に周辺の線維芽細胞とは明らかに形態が異なる細胞集団(コロニー)が出現した。コロニーはヒトiPS細胞やES細胞と類似した、核が大きく細胞質がほとんど認められない幹細胞の形態を示した。加えて幹細胞のマーカーであるアルカリフォスファターゼ活性を示した。現在、内在性の幹細胞のマーカー遺伝子の発現を検出するなど、その生物学的特徴について検討中である。
  • 櫻井 伸行, 藤井 貴志, 小林 真言, 伊藤 晴海, 橋爪 力, 澤井 健
    セッションID: OR1-14
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】マウス胚では,OCT-4およびCDX2が組織分化に重要な役割を担うことが明らかとなっている。これら因子が互いの発現を抑制することで初期胚内での発現局在性が生じ,内部細胞塊および栄養膜細胞への分化を制御する。一方,ブタ初期胚では,組織分化制御機構にOCT-4およびCDX2がどのように関与するのか等不明な点が多い。そこで本研究では,RNA干渉法を用いてOCT-4遺伝子の発現抑制を行い,ブタ初期胚の組織分化におけるOCT-4の役割と,OCT-4がCDX2遺伝子発現におよぼす影響を検討した。【方法】体外受精由来ブタ1細胞期胚の細胞質に,OCT-4遺伝子発現抑制用siRNA(P-OCT-1, P-OCT-2)もしくはControl siRNAを注入する区,さらにsiRNAを注入しない区(無処理区)を設け,それぞれの処理後の胚発生と桑実期におけるOCT-4CDX2およびFGF4遺伝子のmRNA発現量について検討を行った。【結果】P-OCT-2区のOCT-4発現量は,Control siRNA区および無処理区と比較して有意(P<0.05)に低い値を示した。CDX2およびFGF4発現量に関しては,異なる処理区間で有意な差は認められなかった。各処理を行った胚の発生においては,桑実期までの発生率に有意な差は認められなかったが,胚盤胞(BC)期胚への発生率において,Control siRNA区および無処理区と比較してP-OCT-2区で有意(P<0.05)に低い値を示した。OCT-4発現抑制が桑実期までの発生に影響をおよぼさなかったこと,OCT-4発現量の減少に伴いBC期胚への発生率が低下したことから,ブタ初期胚において桑実胚からBC期胚の時期に起こる組織分化に,OCT-4が重要な役割を担っていることが明らかとなった。また,OCT-4発現抑制によるCDX2発現量への影響が認められなかったことから,ブタ初期胚ではOCT-4がCDX2の発現を制御しないことが示唆された。
  • 田中 宏明, 木藤 学士, 宮川 愛美, 宗 知紀, 山内 伸彦, 服部 眞彰
    セッションID: OR1-15
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】有用タンパク質生産系として遺伝子組換えニワトリを用いた方法が期待されている。生殖系列幹細胞である始原生殖細胞(PGC)に遺伝子操作を行うことにより後代に遺伝子組換え体を作製するものであるが,PGCの増殖や分化機構の解明が遅れており,効率的な遺伝子操作を行うに至ってない。我々は,シングルセルサブトラクション法により,PGCにおいて分泌性の神経細胞増殖因子cNENFをコードする遺伝子の発現を明らかにした。本研究では,PGCの効率的な増殖系を確立するために,リコンビナントcNENFによるPGCの増殖効果を解析した。【方法】ニワトリ胚(stage X)から分離した細胞をLIFと15%KSRを含む無血清培地(GMEM)で培養した。また,ニワトリ胚(stage14-15)から血中を循環するPGCを採取して,LIFと15%KSRを含む無血清培地で培養し,汎用されている系とは異なるフィーダー細胞フリーで実施した。大腸菌で作製したGST融合リコンビナントcNENF43-164を培地に添加した。培養を2週間行った後,生殖細胞マーカーである抗CVH抗体を用いて免疫細胞化学を行い,増殖したPGCをカウントした。【結果】胚組織あるいは血液由来PGCのフィーダー細胞フリーの培養系にGST融合cNENF(10nM)を添加すると,いずれの系でもPGCの有意な増殖が認められた。血液由来PGCの培養系では,GST融合cNENFを添加しなければPGCはほとんど増殖せず,GSTのみの場合でもPGCの増殖は見られなかった。胚組織を培養すると特有の胚様体と呼ばれるコロニーが形成されるが,GST融合cNENFを添加することにより濾胞様の構造を形成することが観察され,同時にPGCの有意な増殖も認められた。以上のことから,C端側のcNENFフラグメントでも活性を示すことから,GST融合cNENFを用いたニワトリPGCの増殖系への応用が可能であることが明らかになった。
  • 山縣 一夫, 上田 潤, 水谷 英二, 斎藤 通紀, 若山 照彦
    セッションID: OR1-16
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】ES細胞は胚盤胞期胚の内部細胞塊に由来する。しかし,全ての胚から必ず樹立できるわけではなく、その過程には不明な点が多い。元来、樹立は培養環境に大きく作用される「デリケート」なプロセスと思われており,これまでその過程については詳細に観察されてこなかった。そこで,以前にわれわれが開発した「細胞にやさしい」ライブセルイメージング技術を用いて,初期胚からES細胞が樹立される過程の連続観察を行った。【方法】Oct3/4遺伝子プロモーター下流にEGFP遺伝子をつないだコンストラクトで作製したトランスジェニックマウス(Ohno et al., 2003)をリポーターに用いた。自然交配で得られた桑実期胚をガラスボトムディッシュ中のフィーダー細胞上に乗せた。それらをイメージング顕微鏡のインキュベータチャンバーに移し,10日間の蛍光4次元観察を行った。樹立されたES様細胞は継代し,キメラマウスの作製を行なうことで多分化能を確認した。【結果】桑実期胚では全ての割球がOct3/4陽性であったが,内腔を生じ十分に膨らんだ胚盤胞期胚では栄養外胚葉でのシグナルが徐々に減弱し,結果的に内部細胞塊にのみシグナルが見られた。その後,栄養外胚葉の細胞は大規模なアポトーシスを起こし消失した。ここまでは比較的どの胚でも同じであったが,これ以降の挙動に胚ごとの差異が見られた。栄養外胚葉細胞のアポトーシスにともなって,内部細胞塊のOct3/4陽性細胞も一部はアポトーシスを起こし,たとえ少数でも生き残こればそこからES様細胞の成長が見られた。一方,Oct3/4陽性細胞すべてが消失したものや,Oct3/4陰性細胞からは樹立できなかった。カスパーゼ阻害剤であるZ-VAD-FMKを培地中に加えると,Oct3/4陽性細胞の減少が抑えられ,結果的に樹立成績が上がった。また,樹立成績を大きく上昇させることで知られている分化抑制剤である3iを培地に加えると,Oct3/4陽性細胞のアポトーシスが起きず,ES様細胞樹立の速度や成功率が向上した。
  • 小林 久人, 櫻井 隆順, 三浦 史仁, 今井 美咲, 望月 研太郎, 柳澤 永吉, 坂下 陽彦, 若井 拓哉, 鈴木 穣, 伊藤 隆司, ...
    セッションID: OR1-17
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】DNAメチル化は哺乳類生殖細胞分化の過程でダイナミックに変化するエピゲノム修飾の一つであり、各配偶子におけるゲノムインプリント確立・外来性リピート配列の抑制などの重要な役割を担う。また、生殖細胞の最終形態である精子・卵子ではまったく異なるメチル化パターンを示す。しかし、そのようなメチル化の性差が生じる各領域のメチル化・脱メチル化のターゲティング機構は明らかにされていない。我々は雌雄始原生殖細胞の包括的なDNAメチル化マップ(DNAメチローム)を作製し、生殖細胞形成過程におけるDNAメチロームの性差を詳細にプロファイリングした。【方法】胎齢10.5-16.5日齢Oct4-GFPマウス胚からFACS法によるソーティングによりマウス始原生殖細胞を雌雄それぞれ2000-4000細胞回収した。微量サンプルからの調整が可能となるPost-Bisulfite Adaptor Tagging(PBAT)法により、DNAメチローム解析用のDNAライブラリーを作製し、HiSeq2000(Illumina)を用いて高速シークエンスを行った。【結果】解析した胎齢を通して雌雄生殖細胞間の全体的なCpGメチル化の性差がみられた。胎齢10.5日から13.5日にかけて、X染色体上のCpGアイランドならびにインプリント制御領域(ICR)のメチル化の消去とともにゲノムワイドな脱メチル化がみられる一方、CpG-richな一部のレトロトランスポゾンにおいて高度なメチル化が残っていることが明らかとなった。また、16.5日齢において父方ICRのメチル化の上昇がみられるが、母方ICRの一部も、雌雄始原生殖細胞間のメチル化差異領域として同定することができた。本発表では生殖細胞におけるDNAメチル化の性差についてより詳細に解説し、機能的性差との関わりについて議論する。
  • 齋藤 恭佑, 福井 えみ子, 吉澤 緑, 松本 浩道
    セッションID: OR1-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】我々は、マウス体内発生胚盤胞においてbreast cancer 1 (Brca1) のmRNAおよびタンパク質が着床能力獲得胚で高い発現を示すことから、着床能力獲得の指標となることを報告した。さらに、体外受精由来胚盤胞におけるBrca1の発現を誘起する培養系を作出した。一方で、着床能力を獲得した胚盤胞の栄養外胚葉 (TE)では、上皮成長因子受容体であるEgfrとErbb4およびtubulointerstitial nephritis antigen-like1 (Tinagl1)の高い発現が報告されている。そこで本研究では、体外培養系でBrca1の発現を誘起した胚盤胞におけるEgfr、Erbb4、Tinagl1の発現動態を解析した。【方法】体外受精96時間後に得られた胚盤胞を、prolactin (PRL)、epidermal growth factor (EGF)、4-hydroxyestradiol(4-OH-E2)をそれぞれ添加した体外培養系で24時間培養した。Brca1発現を誘起した胚盤胞におけるEgfr、Erbb4、Tinagl1タンパク質発現を免疫蛍光染色により解析した。【結果および考察】PRLは、胚盤胞のTEにおけるEgfrの発現を誘起した。EGFは、胚盤胞のTEにおけるEgfr、Erbb4の発現を誘起した。4-OH-E2添加区では、胚盤胞のTEにおけるTinagl1の発現を上昇させる傾向がみられた。PRL、EGF、4-OH-E2はそれぞれ単独でBrca1の発現を誘起する一方で、Egfr、Erbb4、Tinagl1の発現誘起には差がみられた。本研究により、それぞれPRL、EGF、4-OH-E2は異なる経路でEgfr、Erbb4、Tinagl1の発現に作用することが考えられた。PRL、EGF、4-OH-E2の作用する経路を解析することにより、これら着床関連因子の発現メカニズムを明らかにすることができると考えられた。
  • 森 美幸, 家守 紹光, 磯崎 良寛, 林 武司, 浅岡 壮平, 桑野 俊夫, 西村 正太郎, 田畑 正志, 山内 伸彦, 服部 眞彰
    セッションID: OR1-19
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】我々は本学会第104回大会において、多剤耐性Pgpがウシ卵子・胚で発現することを報告した。本研究では、PgpをコードするMDR1遺伝子の発現を誘導する応答因子の検索および受容体の発現解析とともに、検索結果から有効物質として選んだリファンピン(RIF)、フォルスコリン(FSK)、インターフェロンα(INT)が、MDR1遺伝子発現や胚のPgp発現、胚発生、凍結後の胚生存性に及ぼす影響を調査した。【方法】ウシMDR1遺伝子の転写開始点上流域(-5000bp)を検索し、RT-PCRで子宮内膜間質細胞と胚盤胞におけるINT受容体とMDR1の遺伝子発現を調べた。有効物質の検定にはウシ子宮内膜間質細胞を用い、RT-qPCRでMDR1発現を解析した。と畜雌牛卵巣から回収した卵子を体外受精後、培地へRIF+FSK、INT、RIF+FSK+INTを添加して7日間発生培養し、胚盤胞のPgp発現および胚発生率、凍結保存前後の胚細胞数を比較した。【結果】転写開始点上流域には、RIFに応答するDR4-motif配列、FSKに応答するCRE配列、INF等サイトカインに活性化されるJAK/STAT応答配列が認められ、子宮内膜間質細胞と胚盤胞でINT受容体およびMDR1遺伝子の発現を確認した。これを受けて間質細胞におけるMDR1発現を解析したところ、RIF、FSK、INFのいずれも添加6時間までに増加した。体外受精胚のPgp発現量はRIF+FSK、INT、RIF+FSK+INT添加により対照(無添加)と比べて有意に増加した。胚発生率には差は認められなかったが、胚の凍結融解後48時間における生細胞数は、RIF+FSK、INT、RIF+FSK+INT添加により対照と比べて有意に増加した。以上から、RIF、FSK、INFによりMDR1遺伝子発現、Pgp発現が増加すること、さらに、胚のPgpの発現を高めることで凍結胚の生存性が改善することが示唆された。本研究は、「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」により実施した。
性周期・妊娠
  • 荒井 未来, 吉岡 伸, 田崎 ゆかり, 作本 亮介, 奥田 潔
    セッションID: OR1-20
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】霊長類の子宮内膜は機能層の脱落 (月経) を伴う細胞死および増殖により周期的に更新されることが知られている。ウシでは月経のような機構は無いが、我々はウシにおいても卵胞期から黄体初期にかけて子宮内膜構成細胞が更新されることを示してきた。しかしウシ子宮内膜の更新に必須である細胞死の排卵周期を通じた制御機構は分かっていない。多くの組織において免疫細胞の産生する tumor necrosis factor-α (TNF) および interferon-γ (IFNG) がアポトーシスを誘導することが知られており、卵胞期のウシ子宮に免疫細胞が多数進入することから TNF および IFNG が子宮内膜の細胞死に関与する可能性が考えられる。本研究ではウシ子宮の機能維持機構を解明する目的で、排卵周期を通じた子宮内膜におけるアポトーシスの制御機構を検討した。【方法】1) 排卵周期を通じたウシ子宮内膜組織におけるアポトーシス関連因子の発現を調べた。2) 培養子宮内膜上皮細胞ならびに間質細胞に estradiol-17β (E2: 10 pM) または progesterone (P4; 30 nM) を 24h 前処理後、TNF (6 nM)、IFNG (2.5 nM)、E2 (10 pM) および P4 (30 nM) を単独または組み合わせて添加し 48h 培養後の細胞生存率を調べた。【結果】1) ウシ子宮内膜組織における caspase-3 mRNA 発現量は黄体初期と比較して黄体後期に有意に高かった一方、cleaved caspase-3 タンパク質発現量は 17 kDa において黄体中期および黄体後期と比較し卵胞期に有意に高かった。また caspase-3 活性を抑制する X-linked inhibitor of apoptosis protein (XIAP) mRNA 発現量は卵胞期および黄体初期と比較して黄体中期ならびに黄体後期に有意に高かった。2) 上皮細胞および間質細胞に E2 または P4 を感作後あるいは存在下で TNF および IFNG を添加したところ、細胞生存率は control 区と比較して有意に低下した。【考察】ウシ子宮内膜における周期的なアポトーシスは TNF および IFNG により誘導され、XIAP を含むアポトーシス抑制因子により制御される可能性が示された。
  • 古川 翔, 木崎 景一郎, 橋爪 一善
    セッションID: OR1-21
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】着床過程には様々な母体側,胎子側の因子が関与しており,中でも細胞増殖因子は着床界面での細胞機能を制御する主要因である。上皮増殖因子(EGF)ファミリーの増殖因子は,マウスやヒトにおいて着床時に重要な役割を担うことが報告されており,特にHBEGF は着床に不可欠な因子と考えられている。ウシにおいても,これらの因子が着床に何らかの影響を与えることが推測されるが,詳細な機能は不明である。本研究では,HBEGF のウシの着床期子宮内膜での発現動態を検索するとともに,同因子の細胞の遊走能に及ぼす作用を解析した。【材料及び方法】ウシの着床期の子宮内膜,胎膜におけるEGF ファミリーの遺伝子発現を定量的RT-PCR で解析するとともに,HBEGF とEGF 受容体(EGFR)のタンパク発現を免疫組織化学染色(IHC)により検討した。また,ポアサイズが8 μmのセルカルチャーインサートに,ウシの栄養膜細胞(BT),子宮内膜線維芽細胞(BES),及び子宮内膜上皮細胞(BEE)を播種し,HBEGF が細胞の遊走能に及ぼす影響を検討した。【結果及び考察】定量的RT-PCR の結果,HBEGF,トランスフォーミング増殖因子-α,及びEGFR遺伝子は着床期子宮内膜と胎膜で高い発現を認めた。IHC の結果,HBEGF,EGFR は共に胎膜と子宮内膜の管腔上皮と腺上皮において強い発現を認め,間質において弱い発現を認めた。細胞遊走能の検証では,HBEGF はBT とBES の遊走能を促進したが,BEE では遊走能に変化はなかった。このようにHBEGF の細胞の遊走能に及ぼす作用は細胞種特異性があり,細胞内で発動するシグナル伝達経路や細胞が含有する分子が細胞種ごとに異なると推測され,着床界面での子宮内膜細胞と栄養膜細胞の相互作用機構にHBEGF が深く関与することが明らかとなった。これらの結果は,ウシの着床期においてもHBEGF が子宮内膜の改変,並びに胎盤形成の開始に促進的な役割を担うことを示唆している。
  • 茂野 智子, 高橋 透, 木崎 景一郎, 橋爪 一善
    セッションID: OR1-22
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】妊娠初期の反芻動物では,胚の栄養膜細胞により妊娠特異的I型インターフェロン(IFN)であるIFN-τ(IFNT)の分泌の上昇がおこる。IFNTは,妊娠認識シグナルとして子宮内膜に作用して黄体機能の維持に働くと同時に,免疫細胞の遺伝子発現を変化させると考えられている。妊娠初期に子宮内膜および末梢血白血球においてI型IFN応答性遺伝子であるISG15,MX1,MX2,OAS1などの発現が上昇する。本研究では,ウシ子宮内膜および栄養膜細胞に及ぼすIFNTの作用機序を明らかにするため,培養細胞にIFNTを添加した時の遺伝子発現動態を検討した。【方法】ウシ子宮内膜線維芽細胞および栄養膜細胞(BT-1細胞)を用い,IFNTを0 (対照培養液),0.1あるいは1 µg/ml添加し,添加0時間(添加前),2時間,24時間に細胞を回収した。回収した細胞から総RNAを抽出し,リアルタイムRT-PCR法により各細胞におけるmRNAの発現量を比較,検討した。【結果】子宮内膜線維芽細胞では,添加後2時間および24時間において,ISG15,MX1,MX2,OAS1の発現上昇を認めた。対照群に比較して1 µg/ml添加群では添加後2時間および24時間において発現量が有意に上昇した。一方,BT-1細胞では,IFNTの有無に関わらず添加後24時間で,ISG15,MX1,OAS1の発現上昇を認めた。IFNT添加前,ISG15,MX1,OAS1の発現量は,子宮内膜線維芽細胞よりもBT-1細胞において高く,MX2はどちらの細胞にも発現を認めなかった。また,先に末梢血白血球で妊娠に伴い上昇したCXCL6など数種類の遺伝子発現を検証したが,いずれの遺伝子も子宮内膜線維芽細胞並びにBT-1細胞へのIFNT添加に伴い上昇した遺伝子は無かった。これらのことから,ウシ子宮内膜線維芽細胞はIFNTに反応してI型 IFN 関連遺伝子群の誘導,発現上昇をすること,栄養膜細胞系には,そのような反応系は存在しないことが示唆された。
  • 武弓 竜一, 森本 洋武, 小川 英彦, 河野 友宏
    セッションID: OR1-23
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】胎盤形成における雌雄ゲノムの役割を明らかにするために,我々は雄核発生胚から栄養膜幹細胞(TS細胞)を樹立した。雄核発生胚由来TS細胞(ATS細胞)は分化誘導後,栄養膜巨細胞(TG細胞)特異的遺伝子を発現したことから,TG細胞への分化には雄ゲノムが関与していると考えられた(Ogawa et al.,2009)。同年,母方発現インプリント遺伝子であるP57/kip2を欠損したTS細胞が樹立された(Ullah et al., 2009)。この細胞は分化誘導後TG細胞特異的遺伝子を発現するが,核の巨核化が認められなかった。さらに,分化誘導後も細胞は増殖を続け,分化誘導後10日目にはほぼ全ての細胞の核が多核化を示すことが報告された。これにより,TG細胞への分化には雌ゲノムが重要であることが示唆された。そこで本研究では,ATS細胞がTG細胞へ分化しているのかを明らかにするため,分化誘導後の細胞の特性を調べた。【方法】ATS細胞2株を供試した。また,コントロールとして受精卵由来TS細胞を用いた。分化誘導後0~6日目におけるP57/kip2及びTG細胞特異的遺伝子の発現解析をRT-PCRにより行った。また,同時期の細胞を回収し,細胞の増殖率の算出及びFACSを用いたDNA量の測定を行った。さらに,分化誘導後10日目の細胞における多核化細胞の出現について観察した。【結果】分化誘導後,TS細胞ではP57/kip2の発現が見られたが,ATSでは発現が抑制されていた。しかし,TG細胞特異的遺伝子の発現はTS細胞同様,分化誘導後に上昇が見られた。また,ATS細胞では分化誘導後も細胞の増殖能が維持され,4N以上の細胞の出現に遅延が見られた。一方,ATS細胞における多核化細胞の出現率はTS細胞と同様低率であった。以上から,ATS細胞は分化誘導後,TG細胞特異的遺伝子の発現と,細胞の増殖性についてはP57/kip2欠損TS細胞と似た特性を示すが,細胞は多核化せずに巨核化すると考えられた。
  • Shien ZHU
    セッションID: OR1-24
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    This study was designed to evaluate DNA methylation and expression of DNA methyltransferases in MetaphaseⅡoocytes and DNA methylation of pre-implantation embryos during mouse aging. Oocytes from 6-8 week-old mice are referred to as young group and those from 35-40 week-old are referred to as old. They were fertilized in vitro and in vivo respectively to obtain the embryos. DNA methylation in oocytes and pre-implantation embryos were assessed using fluorescence staining. Dnmts expressions in oocytes were assessed with Western blot. DNA methylation in oocytes and pre-implantation embryos decreased significantly during mouse aging. Expression of Dnmts in the oocytes from old group was lower than that from young. Either cleavage or blastocyst rate was significantly lower in oocytes of older mice (69.9% vs. 80.9%, P<0.05; 33.9% vs. 56.4%, P<0.05). The pregnancy rate of old mice was lower than that of young mice (46.7% vs. 100%, P<0.05). The stillbirth and fetal malformations rate was significantly higher in the old group than in the young (17.2% vs. 2.9%, P<0.05). In conclusion, both the decreased expression of Dnmts in oocytes and the change of DNA methylation in oocytes and pre-implantation embryos due to aging may be related to lower reproductive potential in old female mice.
  • Mahmoud AWAD, Keiichiro KIZAKI, Toru TAKAHASHI, Kazuyoshi HASHIZUME
    セッションID: OR1-25
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    Secreted protein of Ly-6 domain 1 (SOLD1) is a novel member of Ly-6 Superfamily was detected in the extracellular matrix of the mesenchyme in placental cotyledonary villi and was suggested to be involved in the construction of the placenta, however the physiological function of SOLD1 is still obscure. In the present study, the reverse transcription polymerase chain reaction (RT-PCR) analysis reflected that SOLD1 mRNA was strongly expressed in the fetal membranes on day 35 of gestation, while at the same time weakly expressed in the endometrial tissues. We further examined the expression of SOLD1 mRNA and protein using trophoblast cell lines; 13 trophoblast cell lines (BT-A∼ L and BT-1). Total RNA was extracted from all cell lines, then cDNA was synthesized for quantitative real time RT-PCR. The highest expression of SOLD1 was found in BT-E, while the lowest expression was in BT-C. These expression intensities were weak in comparison with fetal membranes. Immunocytochemical analysis was performed using anti-bSOLD1 antibody, SOLD1 protein positive cells were detected in BT-E. In Western blotting analysis, SOLD1 protein was detected in both cell lysate and conditioned medium in all cell lines. Progesterone and Estradiol treatment of BT-E was performed to detect the effect of steroid hormones on SOLD1 mRNA expression. Three different concentrations of progesterone (3 nM, 30 nM and 300 nM) and estradiol (3 pM, 30 pM and 300 pM) had no significant effect on SOLD1 expression. These data suggest that all BT cell lines produce SOLD1 but the regulatory mechanism for the protein expression during early placentation is still unclear; at least these steroid hormones may not be involved.
  • Rasoul KOWSAR, Jinghui LIU, Koumei SHIRASUNA, Takashi SHIMIZU, Akio MI ...
    セッションID: OR1-26
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    Oviduct is the venue for fertilization and faced to sperm and pathogens in physiological and pathophysiological modes, respectively.These allogenic factors may induce female immunity. Little is known about mechanisms for local immune tolerance in the oviduct. Toll-like receptors (TLRs) are involved in innate immune response to microbial pathogens and also contribute to recognition of endogenous molecules derived from physiological processes. We aimed to investigate local regulation of immunity in the oviduct using bovine oviduct epithelial cell (BOEC) culture. A low dose of lipopolysaccharide (LPS, 10 ng/ml) up-regulated TLR-4,COX2, and IL1b (Th1 cytokine) mRNA expression, toward inflammatory mode. In contrast, a high dose of LPS (100 ng/ml) up-regulated TLR-2, IL1b, and IL4 (Th2 cytokine), but not TLR-4, mRNA expression, toward the suppression of inflammation. Co-stimulation of BOEC by LPS and sex hormones at concentrations observed during preovulatory period in situ (E2, 1ng/ml; P4, 1 ng/ml; LH, 10 ng/ml) completely blocked the stimulatory effects of LPS. In physiological model, LH substantially stimulated TLR2 and IL4 mRNA expression, toward immune tolerance. A stimulation with LH, P4, E2, or all together (LH+P4+E2) up-regulated IL4 and down-regulated IL1b mRNA expression, suggesting the shift of balance of Th cytokines toward Th2 type. Taken together,the bovine oviduct is quite sensitive to low levels of LPS in pro-inflammatory response, but higher level of LPS induces anti-inflammatory response to avoid harmful over-reactions; besides LH has a critical role in the induction of immune tolerance in the bovine oviduct
  • 小林 芳彦, 奥田 潔
    セッションID: OR1-27
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】卵管は配偶子および初期胚の移送に重要な役割を持つ。配偶子ならびに初期胚の移送には,卵管上皮の繊毛運動および卵管平滑筋の収縮弛緩運動が関与している。卵管平滑筋の運動は prostaglandin E2 (PGE),PGF2α (PGF),endothelin,oxytocin ならびに 一酸化窒素 (NO) などにより調節されている。このうち PGE はマウス大動脈内皮,PGF はウシ黄体由来血管内皮において,それぞれ NO 産生を刺激することが報告されている。そのため卵管の NO 産生にも PGE および PGF が何らかの影響を及ぼすことで平滑筋運動が調節される可能性が考えられるが,詳細は明らかでない。本研究は卵管平滑筋運動の調節機構を明らかにする目的で実施された。【方法】1) 卵巣の肉眼的所見により,排卵後の日数から 5 周期 (黄体初期: 2-3 日,形成期: 5-6 日,中期: 8-12 日,後期: 15-17 日および卵胞期: 19-21 日) に分類し,各期の卵管組織を 4 時間培養した後,培養上清中の PGE および PGF 濃度を EIA により測定した。2) 排卵後 0-3 日目のウシ卵管膨大部および峡部から上皮細胞および間質細胞を単離し,コンフルエントに達した後 PGE (0.01, 0.1, 1 μM) および PGF (0.01, 0.1, 1 μM) を添加し,24 時間培養後の誘導型 NO 合成酵素 (iNOS) mRNA 発現を定量的 RT-PCR 法により検討した。【結果】1) PGE 産生は膨大部において他の周期と比較し黄体初期に高かった。峡部においては黄体初期および形成期に高く,中期に低かった。PGF 産生は膨大部において他の周期と比較し黄体初期に高かった。峡部においては黄体初期および中期に高く,卵胞期に低かった。2) 膨大部上皮および間質細胞において,PGE および PGF は iNOS mRNA 発現を低下させたが、峡部上皮および間質細胞の iNOS mRNA 発現は PGs の影響を受けなかった。以上より,排卵後の卵管において多く産生される PGs が,膨大部上皮および間質細胞の iNOS を介した NO 産生を抑制することで,卵子および初期胚の移送のための平滑筋運動を促進している可能性が示された。
卵・受精
  • Martin ANGER
    セッションID: OR1-28
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    Chromosome segregation errors are highly frequent in mammalian female meiosis and their incidence increases with maternal age. The fate of aneuploid eggs is dependent on stringency of mechanisms detecting unattached or repairing incorrectly attached kinetochores. In case of their failure, the newly forming embryo will inherit the impaired set of chromosomes, which has severe consequences for its further development. It was debated for long time whether SAC in oocytes is capable of arresting cell cycle progression in response to unaligned kinetochores. From what we know, it is clear that abolishing SAC is forcing oocytes to segregate their chromosomes randomly during precocious entry into anaphase. However, it was also reported that for the Anaphase Promoting Complex (APC) activation, which is a prerequisite to anaphase entry, alignment only of a critical mass of kinetochores on equatorial plane is sufficient. This indicates that the function of SAC in oocytes is different from somatic cells. To analyze this phenomenon we have used live cell confocal microscopy to monitor chromosome movements, spindle formation, APC activation and polar body extrusion (PBE) simultaneously in individual oocytes at various time points during first meiotic division. Our results are demonstrating that multiple unaligned kinetochores and severe congression defects are tolerated at metaphase to anaphase transition. This indicates that checkpoint mechanisms operating in oocytes at this point are essential for accurate timing of APC activation in meiosis I, but they are insufficient in detection or correction of unaligned chromosomes, preparing thus conditions for propagating the aneuploidy to the embryo.
  • Tereza TORALOVA, Veronika BENESOVA, Katerina VODICKOVA KEPKOVA, Petr V ...
    セッションID: OR1-29
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    The preimplantation development still hides many secrets especially regarding the gene expression and the in vitro prepared embryos still do not reach the quality of in vivo prepared ones. Moreover, there are still not adequate techniques to evaluate developmental potential of the embryo. The quality is determined mainly based on the morphological appearance or cleavage timing. Hence there is a need for search for more precise markers. Particularly, high impact is focused on identification of genes whose gene expression could be used as marker of high developmental competence of the embryo. The candidate genes are searched based on their gene expression. The initial searching is performed using microarray analysis based on comparison of gene expression of two embryonic populations (e.g. 4- and 8-cell stage). Selected genes are then tested for mRNA expression throughout whole preimplantation development. The increase in mRNA level at the stage of embryonic genome activation (late 8-cell stage in cattle) suggests the importance of the gene. Here, I will briefly describe two of the identified genes - nucleophosmin and cullin 1. Nucleophosmin is nucleolar protein that participates especially in ribosome biogenesis and RNA processing. Its protein localization during bovine preimplantation development copies the state of formation of nucleoli. Cullin 1 is basic member of E3 ubiquitin ligase SCF complex. At the EGA stage the mRNA expression of cullin 1 switches between two genes coding transcripts with 83% homology. This suggests high importance of cullin 1 expression, however the true cause of the switch remains to be elucidated. Supported by GACR 523/09/1035; GACR 204/09/H084 and GAUK 43-251133
生殖工学
  • Thanh Quang DANG-NGUYEN, Seiki HARAGUCHI, Satoshi AKAGI, Tamas SOMFAI, ...
    セッションID: OR1-30
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    In mice and cattle, telomere length is reset during morula-blastocyst transition due to a change in telomerase activity. However, little has been known about the changes of telomere length in cloned pig embryos and the effect of donor cell type on this process. In the present study, we examined telomere length and telomerase activities of cloned porcine morulae and blastocysts using different donor cell types for nuclear transfer: 1) embryonic stem-like cells (Haraguchi et al., unpublished; ES group), 2) cumulus cells (C group), embryonic fibroblasts 3) passage 7 and 4) 10 (F7 and F10 groups, respectively). Telomere length of the donor ES (35.8 ± 1.5 kb), C (24.4 ± 0.5 kb), F7 (18.7 ± 0.6 kb) and F10 (17.2 ± 0.1 kb) cells were significantly different (P<0.05; one-way ANOVA). The ES, C, F7 and F10 morulae had shorter (P<0.05) telomere (18.2 ± 0.3 kb, 17.8 ± 0.7 kb, 18.5 ± 0.3 kb and 18.4 ± 0.4 kb, respectively) compared with ES, C, F7 and F10 blastocysts (22.3 ± 1.5 kb, 23.5 ± 2.6 kb, 20.2 ± 1.0 kb and 20.9 ± 1.0 kb). Relative telomerase activities of the ES, C, F7 and F10 morulae (4.2 ± 0.4, 4.0 ± 0.5, 5.1 ± 0.4 and 4.9 ± 0.4, respectively) were lower (P<0.01) compared with those of the ES, C, F7 and F10 blastocysts (8.2 ± 1.1, 8.6 ± 0.6, 12.5 ± 2.9 and 8.3 ± 1.1, respectively). In conclusion, restoration of telomere length in cloned pig embryos during morula-blastocyst transition was likely a telomerase-dependent process, and was independent from telomere length and type of donor cells.
  • Jan MOTLIK
    セッションID: OR1-31
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    Huntington disease (HD) is a fatal dominantly inherited neurodegenerative disease caused by the expansion of the polyCAG stretch in the gene coding ubiquitous huntingtin protein (htt). In order to facilitate studies of pathogenesis and therapeutics of HD we have generated transgenic miniature pig. F1 generation of HD transgenic miniature pigs is the offspring of F0 transgenic saw which was generated using microinjection of lentiviral vectors encoding N-truncated (548aa) human htt containing 145 polyQ repeats under the control of human htt promoter into the zygote. Genome analyses demonstrate the integration of transgene into the chromosome 1q24-q25 and the repetition of 124 glutamines in human htt. Assuming a presence of the two endogenous porcine htt alleles, we can announce that transgenic animals have integrated 1 insert of transgene in their genome. TR-FRET analysis of the F1 animals proved the active expression of human mutant htt in miniature pig´s cortical tissue. Western blot confirmed the expression of htt protein in the tissues from all three germ layers. F1 boars were able to produce F2 transgenic generations with the transgenic rate of approximately 50 % per birth. The first evident phenotype of Huntington disease has appeared in F1 transgenic boars at the age of 14 months. Reproductive parameters, number of spermatozoa per ejaculate, motility and in vitro penetration test, are gradually decreasing. The same phenotype has been discovered in F2 transgenic boars at the similar age. The preclinical stages in transgenic minipigs will provide a possibility to test in future all new pharmacological and molecular biology trials to find a disease modifying treatment of HD.
  • 谷 哲弥, 加藤 容子, 角田 幸雄
    セッションID: OR1-32
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】未受精卵をレシピエント卵細胞として作製された体細胞クローン胚は、卵細胞質内で起こる核リプログラミングが不完全ため個体への発生能が低く、その原因の一つとして未受精卵子に含まれている核リプログラミング因子の量的問題が推測されるが不明な点が多い。またES細胞と体細胞の融合法では、ES細胞に予めNANOGを強発現することでその効率が向上することやiPS細胞の誘導においてもそれぞれの核リプログラミング因子の量的バランスが重要であることが報告されている。そこで本研究では、予め既知の核リプログラミング因子をブタ未受精卵に人為的に強発現させ、その能力が増強させられるかブタ体細胞核移植卵の体外発生能により検討した。【方法】屠畜場由来体外成熟培養ブタ卵子は染色体を除去後、OCT4、SOX2、KLF4、C-MYC、NANOG、GADD45A、TCTPなどの核リプログラミング関連因子のRNA(0.1-10ug/ug)を卵細胞質へ注入したものをレシピエント卵細胞とした。ブタ胎児繊維芽細胞をドナー細胞とし電気融合法により核移植卵を作製後、ヒストンメチル化抗体を用いた免疫染色、8日間培養後の胚盤胞への体外発生率によりその影響を調べた。【結果】各遺伝子のRNAは、注入後3時間でそのタンパク質の発現が確認された。核移植後の核の変化は、強発現卵を用いた場合でも対照区と同様に高メチル化状態であった。高濃度のRNAを注入した強制発現卵由来の核移植卵の発生能は、遺伝子の種類に関わらず4細胞期で停止した。低濃度のRNAを注入した強発現卵の場合でも、対照区としてGFPを注入した場合と比較して発生率を向上させることはできなかった。これらの結果より、核リプログラミング因子を予め強発現した未受精卵をレシピエント卵細胞として体細胞核移植に用いても、その能力を増強させることはできず、エピジェネティックな変化も起こさないことから卵細胞質内で起こる不完全な核リプログラミングは既知の核リプログラミング因子の量的問題ではないことが明らかとなった。
  • 李 羽中, 寺下 愉加里, 野老 美紀子, 若山 照彦
    セッションID: OR1-33
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年,TSAなどのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)をクローン胚に処理することで,クローンマウスの作成率を大きく改善することが可能となった。しかし,HDACは18種類が見つかっており,各種のHDACiはそれぞれ特定のHDACを阻害するだけである。もし複数のHDACiを核移植後に添加することによってより多くのHDACを阻害すれば,クローンマウスの作出成績をさらに改善できるかもしれない。本研究では,数種類のHDACiを同時に培地に添加することでクローンマウスの作成効率の改善を試みた。【方法】マウス胚移植後,活性化培地に4種類のHDACi(TSA,Scriptaid,SAHA,Oxamflatin)を混合したもの(実験区A:それぞれのHDACiは発表されたのと同じ濃度;実験区B:1/4濃度;実験区C:1/10濃度 )を添加し,従来法と同じ9時間の処理した後培養し,胚盤胞までの体外発生率と産仔率を調べた。次にHDACisの濃度を6時間後に変更し,翌日(合計20時間)まで処理したクローン胚の体外発生率,産仔率,ntES樹立率を調べた。【結果】4種類のHDACi混合液を用いると,どの濃度の実験区でも9時間処理によって未処理区より有意に胚盤胞への発生率を改善出来た。胚移植後,実験区A,B,Cそれぞれから4.4%,7.1%および8.3%の成功率でクローンマウスが生まれてきた。一方,連続20時間HDACi混合液で処理を行った場合,二細胞期でのヒストンアセチル化が9時間処理より促進され,特に実験区BではTSA単独処理よりクローン産仔率が倍以上改善された(実験区B:8.8%,TSA:4.0%)。ntESの樹立率も78%まで上昇した。【考察】今回の研究結果から,複数のHDACiを最適濃度で用いれば,長時間HDACi処理してもクローンマウスの作成効率を低下させないことが明らかとなった。従来のHDACi 9時間処理法と比べ深夜の培地交換が必要なく,研究者にとってより簡便な体細胞核移植法となるだろう。
  • 伊佐治 優希, 田島 陽介, 今井 裕, 山田 雅保
    セッションID: OR1-34
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】マウス体細胞核移植(SCNT)において、細胞融合法で作出した再構築卵の細胞質にd-BSAを顕微注入すると、そのSCNT胚の胚盤胞期への発生が促進され、胚盤胞の内部細胞塊数が増加することを我々は明らかにしている。本研究では,SCNT胚の発生およびヒストンアセチル化レベルに及ぼすd-BSAの卵細胞質内顕微注入およびその注入時期の影響について検討した。【方法】B6D2F1系雌マウスの卵丘細胞をドナーとし,細胞融合法によってSCNT胚を作出した。活性化開始前もしくは6時間後において,6% FITC-BSAもしくはd-BSA (0, 6%)を卵細胞質に顕微注入した。FITC-BSAを注入した胚では,活性化開始6.5時間後でのFITCの蛍光を観察しBSAの局在を調べた。d-BSAを顕微注入した胚では,胚盤胞期への発生率,そして,前核期と2細胞期におけるヒストンH3K9およびH4K12のアセチル化レベルを免疫蛍光染色法で調べた。【結果】活性化開始前に6%d-BSAを顕微注入することによって,胚盤胞期への発生率が0%d-BSA注入(コントロール)と比較し有意に上昇した(65% vs. 35%, P<0.05)が,活性化開始6時間後にd-BSAを注入しても有意な差は無かった(42% vs. 36%)。また,注入時期に関わらず,細胞質だけではなく前核内にもFITC-BSAの局在が観察された。さらに,SCNT胚の前核期と2細胞期におけるH3K9およびH4K12のアセチル化レベルは,活性化開始前のd-BSAの顕微注入によってコントロールと比較し増加した。活性化開始6時間後に注入した場合には,それらはコントロールと差は無かった。以上より,SCNT胚の細胞質にd-BSAを注入すると,ヒストンアセチル化レベルの上昇と胚盤胞期への発生の促進が誘起されること,さらにこの効果は,d-BSAが活性化開始から前核形成までの間に作用することによって発揮されることが明らかとなった。
  • 田島 陽介, 伊佐治 優希, 今井 裕, 山田 雅保
    セッションID: OR1-35
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目 的】ビタミンC(VC)がヒト及びマウスのiPS細胞の樹立効率やブタ体細胞核移植(SCNT)胚の着床前及び着床後の胚発生率を向上させることが報告されている。本研究では,マウスSCNT胚の胚盤胞期への発生および内部細胞塊(ICM)及び栄養外胚葉(TE)の細胞数,そして前核期におけるヒストンH3K9のアセチル化レベルに及ぼす活性化開始後のVC処理の影響について検討した。【方法】B6D2F1系マウスの除核MII期卵母細胞にドナーとして同系マウス由来卵丘細胞を不活性化センダイウイルスによって融合しSCNT胚を作成した。塩化ストロンチウムによる活性化処理の開始時から0~50 μg/mlのVCで24時間処理を行った。活性化後96時間に胚盤胞期への発生率を,そして,得られた胚盤胞の細胞数を抗Oct3/4及び抗Cdx2抗体を用いた免疫蛍光染色法により求めた。また,活性化後10時間の前核期胚を,抗アセチル化ヒストンH3K9抗体を用いた免疫蛍光染色法によりアセチル化レベルを測定した。【結果】10,25,50 μg/mlのVC処理により胚盤胞期への発生率(71.2%,73.8%,73.8%)は無処理区(38.3%)と比較し有意(P<0.001)に増加したが,1 μg/mlでは46.0%と有意な差はなかった。また,発生した胚盤胞の細胞数について,無処理区(ICM:7.5個,TE:41.2個)に比べ, 10,25,50 μg/ml VC処理区におけるICMは14.1,15.2,13.8個とそれぞれ有意(p<0.01)に増加し,TEは55.9,53.0,49.0個で10 μg/ml区において有意差(p<0.01)が見られた。さらに,活性化開始10時間後の前核期胚におけるヒストンH3K9のアセチル化レベルは,無処理区と比較し10 μg/ml VC処理により2.6倍へと有意(P<0.001)に上昇した。以上より,VCがマウスにおいてもSCNT胚の着床前発生を改善することが明らかになった。
  • 及川 真実, 井上 貴美子, 的場 章悟, 志浦 寛相, 越後貫 成美, 阿部 訓也, 石野 史敏, 小倉 淳郎
    セッションID: OR1-36
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】X染色体不活性化は,哺乳類の雌において二本あるX染色体の一方を不活性化する機構であり,Xist遺伝子の発現によって開始される。マウスの場合,通常の受精を経た初期胚では,Xistは精子由来のX染色体からのみ発現し,卵子由来のX染色体からは発現しないというインプリント発現を示す。一方,体細胞核移植胚では両X染色体からXistが異常発現することから,Xistのインプリントが生殖細胞特異的に存在することが示唆される。しかしながら,Xistのインプリントについては,その性依存性,確立時期,そして実体さえも明らかでない。そこで,本研究では各発生段階の雌雄生殖細胞をドナーとした核移植胚でXistの発現を解析することで,Xistのインプリントの性依存性および確立時期を明らかにすることを目的とした。【方法】コントロールとして,雌雄の体外受精胚を用いた。雄性生殖細胞由来胚として,始原生殖細胞,生殖幹(GS)細胞,円形精子細胞(2個/卵子)の核移植胚を,そして雌性生殖細胞由来胚として,単為発生胚あるいは卵胞卵子由来胚を用いた。培養48時間目(4-cell期)以降の胚のXistの発現を,定量RT-PCRあるいはマイクロアレイ,RNA-FISHにより解析した。【結果】雄の体外受精胚においてXistの発現は見られなかったが,調べた全ての雄性生殖細胞由来胚で4-cellから胚盤胞期まで発現が観察された。雌の体外受精胚では,Xistは4-cell以降のほぼ全ての割球で片親性の発現を示したが,単為発生胚および発育卵胞卵子由来胚では,Xistの発現は4-cellでは見られず,桑実期胚以降に一部割球の片方のX染色体のみで観察された。以上の結果からXistは,体細胞-雄性生殖細胞を通じて,胚性遺伝子活性化により発現が誘導されるdefault(非インプリント)状態にあり,この発現を抑制するインプリントは,卵子発育期においてのみ確立されると考えられる。
  • 上村 悟氏, 井上 貴美子, 楊 正博, 三好 浩之, 小倉 淳郎
    セッションID: OR1-37
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】自然交配,体外受精,ICSIによる繁殖が困難な稀少マウス系統に対しては,体細胞核移植クローンによる個体再生が有効である。その際のドナー細胞の条件として,マウス個体への負担が少なく,繰り返し採取でき,迅速に核移植に適したG0/G1期細胞を獲得できることが挙げられる。そこで本研究では,末梢血由来血球細胞を用いた核移植クローンマウスの作製を試み,その有効性を検討した。【方法】マウス尾静脈から末梢血1滴を採取した。赤血球溶解バッファを用いて赤血球を除去し,有核血球細胞(白血球)の懸濁液を得た。まず得られた血球細胞をランダムに核移植した。クローン胚はトリコスタチンAで8時間処理した後,2細胞期もしくは4細胞期で偽妊娠雌に移植し,産仔数を確認した。次に,リンパ球特異的レクチン蛍光標識とFACS解析により白血球中のリンパ球と顆粒球を判別し,それぞれの細胞のクローン産仔率を比較した。さらにOct4-ΔPE-GFPマウスを用いて,クローンマウスの作出とPCRによる確認を行った。【結果と考察】血球細胞種を特定せずランダムに核移植した実験では,産仔率は2.8%であった(7匹/253胚移植)。得られた産仔は,正常な生殖能力を示した。レクチン蛍光標識とFACS解析の結果から,リンパ球と顆粒球は細胞サイズにより判別できることが明らかとなったため,両者を選択的に注入したところ,顆粒球の方が産仔率が高かった(0.9%: 1/112 vs 3.2%: 3/94)。これらの結果から,末梢血一滴からクローンマウスが作製可能であることが示され,ドナー細胞として顆粒球を用いることが有効であると考えられた。さらに,Oct4-ΔPE-GFPマウスの顆粒球からも産仔が得られ(2.4%: 3/127),いずれの産仔もGFPを持つことが確認できたことから,遺伝子改変マウスにも応用可能な技術であることが示された。本手法は,マウス個体を生かしたまま,末梢血1滴から迅速かつ簡便に核移植クローンを行えるため,貴重なマウス系統の救済に期待できる。
  • 相山 好美, 川澄 みゆり, 張替 香生子, 篠村 麻衣, 金井 正美, 恒川 直樹, 九郎丸 正道, 金井 克晃
    セッションID: OR1-38
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】家畜の精巣断片を免疫不全マウスの皮下へと移植することで機能的な精子を産生する手法が確立されているが、その精子産生効率は低く、実用化レベルには至っていない。哺乳類の精巣では、精原幹細胞(Spermatogonial stem cells; SSCs)は、精細管の基底部で神経栄養因子(Glial cell line derived neurotrophic factor; GDNF)やその受容体 (GDNF receptor alpha 1; GFRα1)の制御下で自己複製を行い、恒常的に維持されている。一方、生体内の雄性生殖腺は、精細管、精巣網、精巣輸出管、精巣上体管が整列した複雑な管構造をとり、精巣上体管は水分を活発に吸収して管腔内に一方向性の微小水流(Flow)を生じさせる。Flowは精子の輸送や環境の維持に関わると考えられているが、詳細な機能は不明である。本研究では、Flowの重要性に着目した新たな皮下移植法を確立し、産生された精子の個体への発生能を確認するとともに、本手法の有用性をSSCs維持の観点から検証することを目的とした。
    【方法】マウス(胎齢14.5日)の精巣-精巣上体を切り出し、精巣と精巣上体が繋がった状態(ep+)、および精巣上体を外した状態(ep-)で免疫不全マウスの皮下に移植した。精巣は8-15週間後に採材し、精子産生能の解析、精子の顕微授精(Intracytoplasmic sperm injection; ICSI)による発生能の確認を行った。また、SSCs維持能の確認としてGDNFおよびGFRα1の発現を組織学的に解析した。
    【結果】精子産生効率はep-群が2.1%であったのに対しep+群は38.6 %と高く、ep+群での精子産生は移植から少なくとも15週間は維持された。また、ep+群では精巣上体精子の貯留が観察され、ICSIによる正常な個体発生が確認された。さらに、ep+群では野生型と同様のGDNFとGFRα1の発現が観察され、SSCsの恒常的な維持が示唆された。
  • 吉本 英高, 中尾 聡宏, 酒匂 一仁, 石束 祐太, 坂井 裕輝, 堀越 裕佳, 福本 紀代子, 春口 幸恵, 近藤 朋子, 竹下 由美, ...
    セッションID: OR1-39
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
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    【目的】近年, 多くの遺伝子改変マウスが、国内外の研究施設間で輸送されている。マウスを輸送する有用な手段として, 精巣上体尾部の冷蔵輸送がある。マウス精子は, 冷蔵環境下において48時間まで受精能を維持できるが, 48時間以降は, 顕著に受精能が低下する。この輸送時間の制約が, 精巣上体尾部の冷蔵輸送における技術的な問題となっている。そこで本研究では, 精子の冷蔵保存培地および体外受精法を改良することにより, マウス精子の冷蔵保存および体外受精法の確立を試みた。【方法】卵子および精子は, C57BL/6マウスの成熟雌および雄マウスから採取した。精巣上体尾部を流動パラフィン (Nacalai Tesque Inc), M2 medium (Sigma), CPS-1 (Cell Science and Technology Institute Inc)またはLifor (Lifeblood Medical Inc)中で, 72時間冷蔵保存し, 体外受精により精子の受精能を評価した。次に, Liforで72時間冷蔵保存した精子を用いて, 各種濃度のGSH(0, 0.5, 1.0, 1.5または2.0 mM)を添加した体外受精培地 (HTF) が, 受精能に及ぼす影響を検討した。最後に, 旭川医科大学から当研究室へ冷蔵輸送された精子を用いて体外受精を行い, 冷蔵輸送された精子の受精能および得られた胚の発生能を評価した。【結果】各種冷蔵保存液の中で, Liforで保存された精子が最も高い受精率を示した(流動パラフィン: 26.5%, M2 medium: 17.1%, CPS-1: 19.6%, Lifor: 59.8%)。体外受精培地へのGSHの添加は, 冷蔵精子を用いた体外受精の受精率が顕著に向上させた(0 mM: 48.0% vs. 1.0 mM: 89.8%)。精子の冷蔵輸送試験では, 冷蔵輸送された精子からも高い受精率が得られた。さらに, 得られた胚は, 正常に産子へと発生した。以上, 本知見は, 精子の冷蔵保存および体外受精技術を確立し, 遺伝子改変マウスの簡便な輸送技術として利用されることが期待できる。
  • 金子 武人, 芹川 忠夫
    セッションID: OR1-40
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】フリーズドライによる精子保存法は、液体窒素不要の長期保存および常温輸送が実現可能であることから、多くの動物種で注目されている技術である。我々は、ラット・マウスにおいて10 mM Tris + 1 mM EDTA(TEバッファー)を用いてフリーズドライした精子から産子を得ることに成功しているが、長期保存の成功例はこれまでに報告されていない。そこで本研究では、ラット・マウス精子をフリーズドライ後長期保存し、その後の受精能について検討したので報告する。
    【方法】11週齢以上のWistar雄ラットおよびC57BL/6J雄マウスの精巣上体尾部から採取した精子をTEバッファー中に懸濁した。精子懸濁液は、フリーズドライした後4℃で3~5年間保存した。保存後のフリーズドライ精子は超純水で復水後、顕微授精により過排卵処理した同系統の卵子と受精させ、その後の産子への発生について観察した。
    【結果および考察】フリーズドライ後、5年間保存したラット精子および3年間保存したマウス精子と受精した卵子から正常な産子を得ることができた。どちらの精子も、フリーズドライ直後の精子と受精した卵子から得られた産子の割合と比較して有意な差は見られなかった。また、ラット・マウスそれぞれの精子から得られた産子は成熟後、正常な繁殖能力を示していた。以上のことから、本研究で用いたフリーズドライ精子保存法プロトコールは、ラット・マウスの双方に利用可能であることが示された。また、これまでマウスの報告は交雑系を用いたものがほとんどであったが、今回遺伝子組換えマウスの作製に汎用されているC57BL/6系統のマウス精子を用いて長期保存に成功したことから、フリーズドライ精子保存法は液体窒素不要の新規遺伝資源長期保存法として今後の実用化が期待される。
  • 持田 慶司, 長谷川 歩未, 平岩 典子, 目加田 和之, 吉木 淳, 小倉 淳郎
    セッションID: OR1-41
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】野生由来マウス系統は種々の遺伝的な特異性や多様性から,遺伝資源として重要視される一方で,系統の保存や計画生産のための生殖工学技術の利用は制限されてきた。その原因の一つに胚移植による産子獲得の困難さが挙げられる。我々は昨年,MSM/Ms系統において他系統との混合胚移植と免疫抑制剤の使用により,産子獲得に成功したことを発表した。今回は,野生由来マウス26系統についてガラス化保存後に胚移植を行った成績を報告する。【材料と方法】動物Mus musculus molossinus 10系統,M. m. musculus 7系統,M. m. castaneus 2系統,M. m. domesticus 3系統,M. m. ssp. 4系統を用いた。ガラス化保存:体外受精で得られた2細胞期胚を5% DMSO + 5% EG +90% PB1液で3分平衡後,ガラス化溶液(42.5% EG + 17.3% Ficoll + 1M sucrose-PB1液)へ移し,1分後に液体窒素へ保存した。加温・回収:液体窒素から取り出したチューブを室温で3分間静置し,0.5M sucrose-PB1液を加えて更に3分後に胚を回収した。0.25M sucrose-PB1液で洗浄後,glucose添加CZB液内で胚移植まで培養した。胚移植:ICR偽妊娠雌に2細胞期胚を単独,またはICR胚と混合移植して4日後に免疫抑制剤 (Cyclosporin A:1mg/kg)を皮下投与し,19日後に帝王切開で産子を確認した。【結果】ガラス化保存した26系統の胚で平均97%の高い生存率が得られた。通常の胚移植で17系統から産子が得られたが,残りの7/9系統から免疫抑制剤と混合胚移植の併用で産子が得られ,産子率が30%未満の場合に改善される傾向がみられた。以上から,Mus musculusに属するほとんどの野生由来マウス系統では体外受精で得られた胚をガラス化保存することで,必要な時に安定した成績で生体化できることが確認された。
卵巣
  • 川崎 友里絵, 青木 祐歌, 眞方 文絵, 宮本 明夫, 白砂 孔明, 清水 隆
    セッションID: OR2-1
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】分娩後の高泌乳牛では急激な乳生産による負荷が,エネルギー不足や免疫機能の低下を引き起こし,周産期疾病の多発や,繁殖障害の要因となっている。同一飼養管理下においても,繁殖性や疾病の発生には個体差があり,これは個体がもつ遺伝的素因による可能性が高い。そこで,特定の量的形質を示すマーカーである遺伝子の多型に着目した。我々は,多様な病原体の認識に関与し免疫機能において重要な役割を果たすToll-like receptor 4(TLR4)の一塩基多型(SNP)が,空胎日数及び人工授精の回数に関連することを報告した(第104回日本繁殖生物学会大会)。繁殖性低下は免疫機能の低下やそれに伴う疾病の発生によって引き起こされることから,TLR4-SNPが乳牛の免疫機能に影響を与えている可能性が高い。そこで本研究ではTLR4-SNPが免疫応答に与える影響を調べるため,多型による顆粒球のアポトーシス出現率の違いを検証した。【方法】TLR4-SNPのCC型とCT型の乳牛(泌乳後期,分娩後170~230日,妊娠牛)の頸静脈から採血し,末梢血顆粒球を単離するとともに,白血球数を計測した。白血球数が正常範囲内にある乳牛のみを解析に用いた。単離した顆粒球にリポポリサッカライド(LPS)を処理し,20時間培養した。培養後,顆粒球をアネキシンVで染色し,フローサイトメトリーで測定し,アポトーシス出現率を検証した。【結果】20時間培養後の対照区およびLPS処理区における顆粒球のアポトーシス出現率は,CC型に比べCT型で低い傾向が認められた。特に,0.01µg/mlのLPS処理区においてCC型に比べCT型で有意に低かった。以上の結果から,LPS処理はウシ顆粒球のアポトーシス出現率を減少させること,またTLR4-SNPの多型がLPSによるアポトーシス出現率に関与することが示された。これらのことは,TLR4-SNPが乳牛の免疫応答に影響することで繁殖性に関連する可能性を示唆している。
  • 澤田 結衣, 新井 至, 阿部 友紀子, 大竹 佳絵, 清水 隆, 宮崎 均
    セッションID: OR2-2
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】家畜は夏季の暑熱ストレスにより排卵抑制が起こり,生殖能力が低下する。これは夏季不妊と呼ばれ,畜産業において深刻な問題である。哺乳類の性周期における卵胞の排卵と閉鎖の運命決定は顆粒膜細胞の生存が鍵を握る。当研究室では,雌家畜において暑熱ストレスが体内で活性酸素種を発生させ,顆粒膜細胞のアポトーシスを誘発し,排卵障害を起こすと考えている。アシタバ(Angelica Keiskei)は八丈島原産のセリ科植物で,アシタバ特有の機能性成分であるカルコン4-Hydroxyderricin(4-HD)とXanthoangelol(XA)を含む。本研究で用いる源生林アシタバは越冬可能な新品種であり,成長が速くCO2吸収率も高いことから機能性飼料として期待される。本研究では源生林アシタバ抽出物及び4HD,XAによる卵巣保護効果の検討を目的とした。【方法】1)21日齢雌ウィスターラットを対象区(25℃)と暑熱区(35℃)に分け,対象区ではコーンオイル,暑熱区ではコーンオイルのみまたはサンプル懸濁液を1日1回,計5回経口投与した。暑熱暴露は計96時間行い,2種のゴナドトロピンを皮下注射し排卵を誘発し,卵管膨大部にある排卵卵子数を測定した。2)健常ブタ卵巣の卵胞から顆粒膜細胞を調製し,10%血清を含むDMEM/F-12HAM培地を用い24時間培養した。その後サンプル存在下で24時間培養した後サンプルを除去し,H2O2を培地中に添加し16-18時間後にトリパンブルーを用い生存率を測定した。【結果】1)暑熱ストレスにより減少したラット排卵数は,源生林アシタバ粗抽出物,4HD,XAのいずれの投与においても改善された。2)アシタバ粗抽出物,精製した4HD,XA はそれぞれH2O2依存的な顆粒膜細胞のアポトーシスを抑制した。以上のことから,アシタバ成分が顆粒膜細胞に酸化ストレス抵抗性を付与することで排卵数減少を改善することが示唆され,家畜の夏季不妊に対する源生林アシタバの有用性が期待できることが明らかとなった。
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