日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-57
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性周期・妊娠
プロジェステロンは妊娠ラット子宮内膜間質細胞の概日振動の位相を変化させる
*趙 立佳陳 華濤諫山 慧士朗山内 伸彦服部 眞彰
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抄録

【背景と目的】我々は、子宮内膜間質細胞でも細胞時計が振動していることを報告してきた。ラット子宮では、胚が妊娠5日前後に着床すると間質細胞は増殖して脱落膜細胞への分化が始まり、12日頃で脱落膜化が完了する。この過程をステロイドホルモン(E2, P4)が子宮内膜細胞の増殖、分化、脱落膜化、および胚の早期着床を制御している。しかし、妊娠初期に重要な役割を担うP4が子宮の細胞時計に及ぼす影響については解明すべき点が多く残されている。本研究では、妊娠初期の子宮の細胞時計におけるP4の機能を明らかにすることを目的とした。 【方法】妊娠4.5日のラットから子宮内膜間質細胞を分離して、血清含有培地(10% FBS,DMEM/F12)で2日間培養、その後100nM P4を含む無血清培地(0.1% BSA, 1% ITS,DMEM/F12)で2日間培養した後、細胞を2時間dexamethasone(DXM)あるいはウマ血清(HS)で同期化し、再び無血清培地で4~5日間培養した。同期化後は生物発光をKronos AB-2500を用いてモニターしながら、6h毎に培養細胞から総RNAを抽出し、リアルタイムqPCRにより時計遺伝子の発現を測定した。生物発光の振幅、位相はCosinor解析によって計算した。細胞増殖はCell Counting Kit-8によって測定した。 【結果】いずれの同期化因子によっても間質細胞の時計は約24h周期の振動を示すことが認められたが、P4の影響の違いは生物発光の振幅に見られた。DXMではP4によって振幅が減少したが、HSでは有意な変化を示さなかった。一方、位相はいずれの同期化因子でも有意なshift-backが見られ(DXM: 3.69±0.07h;HS: 2.41±0.04h)、妊娠子宮の細胞時計に及ぼすP4の特徴的な機能を示唆している。また、この培養条件では、P4は細胞増殖に変化を及ぼさなかった。併せて、時計遺伝子の発現変化についても報告する。

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© 2012 日本繁殖生物学会
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