日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-107
会議情報

卵・受精
プリン塩基代謝のウシ胚発生に及ぼす影響
*木村 康二松山 秀一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】ウシ初期発生胚は成体細胞と比べて特異な代謝系を備えている。そのためウシ胚は他の細胞と比べて特殊な環境で培養されている。体外成熟・受精・培養に供される胚のすべてが胚盤胞期にまで発育することはなく、その原因の一つは現在用いられてる培養系が健全な胚発生に適切でないことが示されており、さらなるウシ胚培養系の改良が必要である。このためにはウシ胚における物質代謝を詳細に解明することが必須であり、グルコースを中心にさまざまな物質のウシ胚における代謝が明らかとなっている。グルコース代謝の一部はペントースリン酸経路に流入し、その後プリン塩基合成へとつながるが、ウシ胚の核酸の主要構成成分であるプリン塩基代謝については未解明な点が多い。本研究ではプリン塩基代謝のウシ胚発生に及ぼす影響について検討した。【方法】食肉センター由来卵巣から卵子を吸引し体外成熟および体外受精により受精卵を得た。受精後18時間から66時間(1-8細胞期)または66時間から186時間(8細胞期-胚盤胞期)にプリンde novo合成阻害剤であるアミノプテリンおよびでプリン塩基(アデニンおよびヒポキサンチン)を胚培養液に添加し、胚発生率を検討した。【結果】アミノプテリンによってプリン塩基のde novo生合成を抑制したところ、1-8細胞期胚では発生率の低下は見られなかったが、8細胞期-胚盤胞期では濃度依存的に有意に胚発生率を低下させた。次にこのプリン塩基de novo生合成抑制下でプリン塩基を添加したところ、アミノプテリンによるde novo生合成阻害効果は有意に改善された。また、プリン塩基を胚培養液に添加したところ、1-8細胞期では1mMまでの添加でヒポキサンチンは胚発生に影響を与えなかったが、アデニンでは有意に胚発生を抑制し、8細胞期-胚盤胞期ではアデニンおよびヒポキサンチンとも有意に胚発生を抑制したが、その効果はアデニンでより大きいものであった。以上の結果から、プリン塩基は胚発生に必要である一方でその過剰添加は胚発生に負に作用することが明らかとなった。

著者関連情報
© 2012 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top