日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-137
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生殖工学
ニジマス生殖細胞を濃縮するための細胞表面マーカーの単離
*林 誠市田 健介定家 咲子長坂 安彦吉崎 悟朗
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抄録
【目的】ニジマス精巣細胞を孵化稚魚腹腔内に移植すると、精原細胞の一部は宿主生殖腺へと生着し、機能的配偶子を生産する。この技法は、様々な水産上有用魚種や絶滅危惧種の生産への応用が期待されている。これまで、移植効率を上げるために、フローサイトメーター(FCM)を用いて、GFP蛍光や、精原細胞に特徴的な光散乱を指標とした精原細胞の濃縮法が確立されてきた。しかし、実用化を目指すためには、FCMのような特殊な機器を必要としない精原細胞濃縮法が必要である。そこで、本研究では、簡便な磁気細胞単離法による精原細胞濃縮法を確立するため、精原細胞特異的な細胞表面抗原に対する抗体を作成することを目的とした。 【方法】精原細胞特異的な細胞表面抗原に対する抗体を作成するために、生きた精原細胞を抗原として用いてモノクローナル抗体の作成を行った。具体的には、生殖細胞特異的にGFPを発現するvasa-GFP遺伝子導入魚が樹立されているニジマスから、GFPを指標にFCMを用いて単離した精原細胞を抗原とした。マウス4匹の左足にニジマス精原細胞を50万細胞ずつ5回免疫した後、左足リンパ節を取り出した。このリンパ節由来の細胞をミエローマ細胞と融合させ、96wellプレート6枚に播種した。得られた培養上清について、Cell ELISA、蛍光顕微鏡観察およびFCMによるスクリーニングを行った。 【結果】ミエローマ細胞と融合させたリンパ節細胞を96wellプレート6枚に播種したところ、2週間後に全てのwell(576well)でコロニーの形成が確認された。そこで、ニジマス精原細胞を用いてCell ELISAを行ったところ、198種類の培養上清で陽性シグナルが観察された。次に、蛍光顕微鏡およびFCMを用いてスクリーニングを行ったところ、14種類の培養上清では、ほぼ全ての精原細胞でシグナルが観察され、生殖腺体細胞ではほとんどシグナルが観察されなかった。本研究において、精原細胞を特異的に標識する抗体を14種類得ることができた。今後、これらの抗体を用いて磁気細胞単離法による精原細胞の濃縮を行って行く予定である。
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© 2012 日本繁殖生物学会
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