日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-20
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性周期・妊娠
ウシ子宮内膜における排卵周期を通じたアポトーシスの制御
*荒井 未来吉岡 伸田崎 ゆかり作本 亮介奥田 潔
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抄録

【目的】霊長類の子宮内膜は機能層の脱落 (月経) を伴う細胞死および増殖により周期的に更新されることが知られている。ウシでは月経のような機構は無いが、我々はウシにおいても卵胞期から黄体初期にかけて子宮内膜構成細胞が更新されることを示してきた。しかしウシ子宮内膜の更新に必須である細胞死の排卵周期を通じた制御機構は分かっていない。多くの組織において免疫細胞の産生する tumor necrosis factor-α (TNF) および interferon-γ (IFNG) がアポトーシスを誘導することが知られており、卵胞期のウシ子宮に免疫細胞が多数進入することから TNF および IFNG が子宮内膜の細胞死に関与する可能性が考えられる。本研究ではウシ子宮の機能維持機構を解明する目的で、排卵周期を通じた子宮内膜におけるアポトーシスの制御機構を検討した。【方法】1) 排卵周期を通じたウシ子宮内膜組織におけるアポトーシス関連因子の発現を調べた。2) 培養子宮内膜上皮細胞ならびに間質細胞に estradiol-17β (E2: 10 pM) または progesterone (P4; 30 nM) を 24h 前処理後、TNF (6 nM)、IFNG (2.5 nM)、E2 (10 pM) および P4 (30 nM) を単独または組み合わせて添加し 48h 培養後の細胞生存率を調べた。【結果】1) ウシ子宮内膜組織における caspase-3 mRNA 発現量は黄体初期と比較して黄体後期に有意に高かった一方、cleaved caspase-3 タンパク質発現量は 17 kDa において黄体中期および黄体後期と比較し卵胞期に有意に高かった。また caspase-3 活性を抑制する X-linked inhibitor of apoptosis protein (XIAP) mRNA 発現量は卵胞期および黄体初期と比較して黄体中期ならびに黄体後期に有意に高かった。2) 上皮細胞および間質細胞に E2 または P4 を感作後あるいは存在下で TNF および IFNG を添加したところ、細胞生存率は control 区と比較して有意に低下した。【考察】ウシ子宮内膜における周期的なアポトーシスは TNF および IFNG により誘導され、XIAP を含むアポトーシス抑制因子により制御される可能性が示された。

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© 2012 日本繁殖生物学会
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