日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-1
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卵巣
免疫機能関連因子の一塩基多型(SNP)が乳牛の繁殖性及び免疫機能に与える影響
*川崎 友里絵青木 祐歌眞方 文絵宮本 明夫白砂 孔明清水 隆
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抄録

【目的】分娩後の高泌乳牛では急激な乳生産による負荷が,エネルギー不足や免疫機能の低下を引き起こし,周産期疾病の多発や,繁殖障害の要因となっている。同一飼養管理下においても,繁殖性や疾病の発生には個体差があり,これは個体がもつ遺伝的素因による可能性が高い。そこで,特定の量的形質を示すマーカーである遺伝子の多型に着目した。我々は,多様な病原体の認識に関与し免疫機能において重要な役割を果たすToll-like receptor 4(TLR4)の一塩基多型(SNP)が,空胎日数及び人工授精の回数に関連することを報告した(第104回日本繁殖生物学会大会)。繁殖性低下は免疫機能の低下やそれに伴う疾病の発生によって引き起こされることから,TLR4-SNPが乳牛の免疫機能に影響を与えている可能性が高い。そこで本研究ではTLR4-SNPが免疫応答に与える影響を調べるため,多型による顆粒球のアポトーシス出現率の違いを検証した。【方法】TLR4-SNPのCC型とCT型の乳牛(泌乳後期,分娩後170~230日,妊娠牛)の頸静脈から採血し,末梢血顆粒球を単離するとともに,白血球数を計測した。白血球数が正常範囲内にある乳牛のみを解析に用いた。単離した顆粒球にリポポリサッカライド(LPS)を処理し,20時間培養した。培養後,顆粒球をアネキシンVで染色し,フローサイトメトリーで測定し,アポトーシス出現率を検証した。【結果】20時間培養後の対照区およびLPS処理区における顆粒球のアポトーシス出現率は,CC型に比べCT型で低い傾向が認められた。特に,0.01µg/mlのLPS処理区においてCC型に比べCT型で有意に低かった。以上の結果から,LPS処理はウシ顆粒球のアポトーシス出現率を減少させること,またTLR4-SNPの多型がLPSによるアポトーシス出現率に関与することが示された。これらのことは,TLR4-SNPが乳牛の免疫応答に影響することで繁殖性に関連する可能性を示唆している。

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© 2012 日本繁殖生物学会
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