日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-5
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卵巣
黄体細胞の NO 分泌ならびに局所調節因子としての黄体細胞由来 NO の影響
*法上 拓生作本 亮介奥田 潔
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抄録

【目的】一酸化窒素 (NO) は黄体退行因子であり、ウシ黄体において NO は主に血管内皮細胞 (LEC) が分泌すること、また、LEC の NO 分泌を prostaglandin F2α (PGF) が刺激することが知られている。ウシ顆粒層細胞において NO 合成酵素 (NOS) の発現することから、黄体細胞においても NOS の発現する可能性があるものの詳細は分かっていない。そこでウシ黄体退行機構に関する研究の一環として、ウシ黄体細胞における NO 分泌調節機構および黄体細胞が分泌する NO が黄体細胞自身に及ぼす影響を調べた。【材料および方法】1) ウシ黄体細胞における血管内皮型NOS (eNOS) および誘導型 NOS (iNOS) mRNA 発現を RT-PCR 法により調べた。2) 黄体細胞に PGF (1 µM) を添加し、培養上清中 NO 濃度を griess 法により調べた。3) 黄体細胞に PGF ならびに NO 合成阻害剤 L-NAME (100 µM) を単独または組み合わせて添加し、培養上清中プロジェステロン (P4) 濃度を EIA により調べた。また、黄体細胞に PGF, L-NAME, 腫瘍壊死因子 (TNF; 0.5 nM) およびインターフェロン γ (IFNG; 0.5 nM) を単独または組み合わせて添加し、細胞生存率を WST-1 法により調べた。【結果】1) 黄体細胞において eNOS および iNOS mRNA発現が認められた。2) PGF 添加区において control 区と比較し培養上清中 NO 濃度が高かった。3) PGF および L-NAME を組み合わせて添加した区において control 区と比較し P4 濃度は有意に高かった。PGF 添加区において control 区と比較し細胞生存率は有意に高かった。PGF および L-NAME を組み合わせて添加した区では PGF 添加区と比較し細胞生存率は有意に低かった。また、サイトカインのみを添加した区と比較し、サイトカインと L-NAME を組み合わせて添加した区において細胞生存率が有意に低かった。以上の結果より、NO は黄体細胞からも分泌されており、黄体細胞由来の NO は黄体細胞自身の P4 分泌を抑制する一方で細胞生存率を高める 2 つの相反する作用を有することが示唆された。

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© 2012 日本繁殖生物学会
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