日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-2
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卵巣
ウシ卵胞液中に存在するLipopolysaccharide(LPS)による卵胞でのエストラジオール(E2)産生抑制作用
*真方 文絵堀内 まや越前谷 陸三浦 亮太朗松井 基純宮本 明夫清水 隆
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抄録

【目的】乳牛の子宮内膜炎は分娩後の細菌感染によって引き起こされ,繁殖障害の主要な要因となっている。起因菌であるグラム陰性細菌の細胞壁構成成分であるLPSは,卵胞発育を制御するゴナドトロピンの分泌を阻害し,卵巣機能を障害することが報告されている。さらに,子宮内膜炎罹患牛ではその卵胞液中から高濃度のLPSが検出されており,LPSが卵巣機能に直接影響を及ぼす可能性が示唆されている。本研究では,卵胞液中のLPSが卵胞のE2産生に与える影響を検証した。【方法】食肉処理場よりウシ卵巣を採取し,直径8 mm以上の大卵胞を解析に用いた。[実験1]卵胞液中のLPS濃度を測定し,高LPS卵胞(0.5 EU/ml以上)と低LPS卵胞(0.5 EU/ml未満)に分類した。それぞれの卵胞において卵胞液中のE2濃度を測定,さらに卵胞膜細胞および顆粒層細胞でのステロイドホルモン産生関連遺伝子の発現を解析した。[実験2]LPSが卵胞のE2産生に与える影響を細胞レベルで調べるために,E2産生の基質となるアンドロステンジオン(A4)を産生する卵胞膜細胞に着目した。卵胞膜細胞をLPSで処理し,A4産生量およびA4産生関連遺伝子の発現解析を行った。【結果】[実験1]高LPS卵胞の卵胞液中E2濃度は,低LPS卵胞に比べ有意に低かった。また,顆粒層細胞のP450arom遺伝子および卵胞膜細胞のCYP17遺伝子の発現は,高LPS卵胞で有意に低かった。さらに,LH受容体(LHr)遺伝子の発現低下も認められた。[実験2]培養96時において,LPSは卵胞膜細胞でのA4産生を抑制した。また,LPS処理によりCYP17遺伝子およびLHr遺伝子の発現が有意に減少した。【考察】高LPS卵胞のE2産生抑制は,顆粒層細胞のE2産生阻害に加え,LPSによる卵胞膜細胞のA4産生の阻害によって引き起こされることが明らかとなった。本研究より,卵胞液中のLPSによる局所的な卵胞機能の抑制が,乳牛の子宮内膜炎における卵巣機能障害の一因となっている可能性が示された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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