日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-24
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性周期・妊娠
マウス分娩後子宮に存在する老化細胞のクリアランス機構
*江頭 真宏廣田 泰藤田 知子原口 広史松本 玲央奈松尾 光徳大須賀 穣藤井 知行今川 和彦前多 敬一郎
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抄録

【目的】分娩後の子宮回復における子宮内膜のリモデリングは次回の妊娠の準備として必須の過程である。最近我々はマウス妊娠子宮において老化細胞が生理的に出現することを報告したが,動脈や卵巣などでは老化細胞が分泌する液性因子によって組織障害が引き起こされることがわかってきており,分娩後の老化細胞除去が次回妊娠に向けた子宮機能回復に重要であると考えられる。本研究では,マウス妊娠子宮に出現する老化細胞が分娩後に除去される仕組みを明らかにするため,以下の実験を行った。【方法】実験には野生型ICRマウスを用いた。分娩を認めた日を分娩後1日目と定義し,分娩後1日目から1か月目までの子宮を採取し,細胞老化マーカーであるSA-ß-gal染色,細胞老化調節因子であるp21とp16の免疫染色,および各種白血球マーカーを用いた免疫染色を行った。また,分娩後のマウスに抗F4/80中和抗体を投与してマクロファージを除去したのち,分娩後8日目に子宮を採取しSA-ß-gal染色を行った。【結果】SA-ß-gal染色では,分娩子宮の胎盤剥離部位(着床痕部)に老化細胞が集積して存在し,時間経過とともに減少し分娩後1か月で消失することがわかった。また老化細胞が集積する領域において,p21陽性細胞の存在が認められたが,p16陽性細胞はほとんど認められなかった。次に老化細胞除去への白血球の関与を考えて分娩後子宮における白血球の局在を検討したところ,好中球,T細胞,NK細胞は老化細胞領域にほとんど認められなかったが,マクロファージは分娩後4日目以降の老化細胞領域周囲に集積していた。さらに,分娩後マウスへの抗F4/80抗体投与によるマクロファージ除去によって着床痕部に存在するSA-ß-gal陽性領域の増大が認められ,老化細胞除去へのマクロファージの関与が示された。【考察】分娩後子宮の機能回復の過程においてマクロファージを介した老化細胞の除去機構の存在が示され,この仕組みが正常子宮組織の分娩後の機能回復に寄与している可能性が示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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