日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-12
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内分泌
性行動の脱メス化およびオス化におけるキスペプチンの役割
*中村 翔池上 花奈上野山 賀久冨川 順子後藤 哲平田村 千尋三宝 誠平林 真澄前多 敬一郎束村 博子
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抄録

Kiss1遺伝子にコードされるキスペプチンは,性腺刺激ホルモン放出ホルモン分泌を介して生殖機能を制御することで注目を集めている。Kiss1 ノックアウト(KO)ラットは,雌雄両性で性腺刺激ホルモン分泌が欠如し,生殖機能を持たない。これに加え,KOラットのオスは,オス型性行動を示さず顕著なメス型性行動を示す。本研究では,KOオスラットにおけるオス型性行動の欠如が,生成熟後のキスペプチンの欠如によるかどうかを検証するため,精巣除去テストステロン負荷KOラットのオスにおいて,キスペプチンの側脳室投与を行った。その結果,マウント,挿入,射精といった一連のオス型性行動は復活しなかった。このことはキスペプチンが発達期においてオス化および脱メス化に必要である事を示している。キスペプチンの発達期における役割を明らかにするため,種々検討を行った。Kiss1 KOラットのオスが発達期にテストステロンを分泌しているかを明らかにするため,胎生18日および出生後2時間の個体から採血したが,KOラットのオスは野生型のオスと同様の血漿中テストステロン濃度を示した。また,Kiss1 KOラットの出生日にエストラジオールベンゾエート(EB, 150 µg)を皮下注射したところ,メス型性行動は両性ともに示さず,野生型と同様に新生児期のエストロジェンにより,性行動の脱メス化が起こることがわかった。以上の結果から,キスペプチンは性行動のオス化および脱メス化に不可欠であり,胎児あるいは新生児の精巣からテストステロンが分泌されて以降,エストロジェンに変換されて効果を現すまでのいずれかの過程において機能を有することが示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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