日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-29
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臨床・応用技術
光干渉断層画像化法を用いたマウス卵巣内卵胞の非侵襲的定量解析
*高倉 啓黒谷 玲子渡部 裕輝阿部 宏之
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抄録

【目的】卵巣内に存在する卵胞の数の動的変化を把握することは卵巣機能の客観的な評価となり,雌の生殖能力を診断する上で極めて重要である。現在,卵巣内の卵胞の観察には超音波画像診断(エコー)が用いられている。しかし,エコーは超音波の空間分解能がおよそ110 µmであることから,大型卵胞の画像化には有効であるが,小型の前胞状卵胞の画像化は不可能である。そこで我々は,超音波に比べて高い解像度を有し,組織表層領域の画像解析を可能とする低コヒーレンス光干渉を利用した光干渉断層画像化法(オプティカル・コヒーレント・トモグラフィ:OCT)に着目した。本研究では,OCTを用いてマウス卵巣に存在する各発生ステージの卵胞の非侵襲画像化と定量解析を試みた。【方法】B6C3F1系雌マウス(1.5日及び25.5日齢)から卵巣を採集した。採取した卵巣をリン酸緩衝液(PBS)で湿潤状態を保ち,OCTにより卵巣の画像観察を行った。OCTで計測された構造を特定するために,OCT観察後のマウス卵巣をブアン液で固定し,定法に従い組織切片を作製した後,卵巣内の各発生ステージの卵胞の数的変化を解析した。【結果】OCTにより25.5日齢の卵巣を解析した結果,卵胞腔が認められる胞状卵胞様の構造が観察された。さらに,取得したOCTの3次元データを50 µm間隔で平均化し画像を再構築した結果,直径50 µm程度の卵胞様構造が多数観察された。一方,1.5日齢の卵巣には卵胞様構造は認められなかった。組織切片観察の結果,25.5日齢の卵巣では,原始卵胞から一次卵胞及び二次卵胞を経て,卵胞液腔を有する成熟卵胞が観察された。一方,1.5日齢のマウス卵巣には直径約20 µmの原始卵胞のみが存在した。本研究の結果,OCTシステムは直径50 µm程度の前胞状卵胞を非侵襲的にイメージングできることが明らかになった。今後は,OCTシステムの空間分解の向上を図り,原始卵胞のイメージングと各発達段階の卵胞の定量化を行い,OCTシステムの卵巣機能診断の有用性を検証する。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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