日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-35
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臨床・応用技術
黄体と同側の卵巣に位置する第1卵胞波主席卵胞の存在はウシの受胎率を低下させる
*三浦 亮太朗高橋 啓人羽田 真悟松井 基純
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抄録

【目的】ウシでは排卵直後に新たな卵胞波が形成され,これは第1卵胞波と呼ばれるが,この第1卵胞波が繁殖生理や受胎性に与える影響はよく分かっていない。そこで,今回,第1卵胞波主席卵胞が黄体と同一卵巣内に共存するまたは共存しないということが,受胎率にどのように影響を与えるかを検討した。【方法】試験1では,帯広畜産大学畜産フィールド科学センターにおいて,2008年3月~2009年6月に,人工授精後1日以内に排卵が確認され,排卵後5から9日の間に黄体と第1卵胞波主席卵胞が確認された,経産泌乳牛(71頭)および未経産牛(43頭)のデータを用いた。全授精頭数に対する受胎頭数(総受胎率),経産泌乳牛授精頭数に対する受胎頭数(経産受胎率),未経産牛授精頭数に対する受胎頭数(未経産受胎率)を調べた。また,黄体が存在する卵巣に第1卵胞波主席卵胞が共存する牛(共存群:54頭)の受胎率および共存しない牛(非共存群:60頭)の受胎率を調べた。試験2では,2010年3~7月に,経産泌乳牛(14頭)を用い,排卵確認日から3,6および12日目に採血と超音波画像診断装置を用いて卵巣の観察を行い,血中プロジェステロン(P4)濃度および黄体と第1卵胞波主席卵胞との共存および非共存を確認した。【結果】総受胎率57.0%,経産受胎率47.9%,未経産受胎率72.1%であった。非共存群(72.2%)が共存群(40.4%)に比べ有意に高い受胎率を示した(P<0.01)。また経産牛と未経産牛別で検討したとき,双方とも非共存群で有意に高い(P<0.05)受胎率を示した(経産牛;非共存群:62.1% vs 共存群:27.6%,未経産;非共存群:84.0% vs 共存群:55.6%)。血中P4濃度は排卵確認日から3日目において非共存群で有意に高く(P<0.05),6および12日目では差はなかった。【考察】人工授精後における,同一卵巣内での第1卵胞波主席卵胞と黄体共存の有無は,その後の受胎性に大きく関与することが示され,その要因の1つとして主席卵胞が黄体と共存することで黄体のP4産生能に影響を与えることと示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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