日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-40
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臨床・応用技術
分娩後の黒毛和種牛における子宮内感染とその後の繁殖成績との関係
*三堂 祥吾鍋西 久重永 あゆみ中原 高士村田 望Mohamed Sadawy Rawy Mohamed北原 豪大澤 健司
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抄録

【目的】牛の分娩後の子宮修復を妨げる要因の一つとして病原細菌による感染が挙げられる。乳牛においては分娩後5週までに半数以上の個体において子宮内から細菌が排除されることが知られているが,肉牛,特に黒毛和種に関する報告は少ない。そこで,黒毛和種の分娩後の子宮内環境の動態とその後の繁殖成績との関係を明らかにするために試験を行った。【方法】黒毛和種経産牛51頭(年齢:3.34±1.34歳,産歴:2.25±0.72,平均±SD)を供試した。供試牛は分娩後2週までに子牛を離乳し,同一個体より2週(2W)から6週(6W)の各週でサイトブラシを用いて子宮内膜スメアを採取し,一般細菌の分離を試みた。また,分娩後30日以降に交配(AIまたはET)が行われた個体(25頭)おける,初回交配日数および受胎率と空胎日数を算出した。【結果】初回交配日数は58.1±23.3日(平均±SD),初回受胎率は40.0%,平均空胎日数は82.1±55.1日であった。採材した週毎に算出した細菌分離率は2W(45.2%),3W(52.6%),4W(34.1%)と推移し,その後5W(20.0%),6W(23.1%)と低値を示した。試験期間を通して,主要細菌としてStaphylococcus spp.E. coliAcinetobacter spp.Trueperella pyogenesなどが分離された。2Wに細菌陽性の個体における初回受胎率は22.2%(2/9)であったのに対し,陰性の個体では50.0%(8/16)であった。また,試験期間中のいずれかの週において細菌陽性であった個体における初回受胎率は30.0%(6/20)で,細菌陰性の個体の80.0%(4/5)と比較して有意(p<0.05)に低かった。【考察】黒毛和種の細菌分離率が分娩後3Wから4Wにかけて減少し始めることから,この時期に子宮内環境の清浄化が進行していることが示唆された。また,分娩後早期における子宮内の細菌の存在がその後の繁殖成績に関係していることが示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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