日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-5
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精巣・精子
ヒストン脱メチル化酵素Kdm2aによる精子形成の制御機序
*小沢 学川上 絵里徳永 暁憲坂本 怜子吉田 進昭
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抄録

[緒言]哺乳動物の生殖細胞の発生過程において,ヒストンおよびDNAのエピジェネティックな修飾が著しく変動することが知られており,それらの修飾を調整する遺伝子を欠損させたマウスの多くが不妊の表現型を示すことから,生殖細胞の正常な発生においてエピジェネティックな修飾が極めて重要な役割を果たしていることが示唆される。我々は第105回日本繁殖生物学会大会においてヒストンH3K36me2の選択的脱メチル化酵素Fbxl10の欠損により加齢に伴い重篤な精子形成不全が誘発されることを報告している。本研究ではFbxl10のホモログであるFbxl11/Kdm2aの生殖細胞特異的欠損マウスを作成し精子形成における同遺伝子の果たす役割について解析した。[結果および考察]生殖細胞特異的にKdm2aを欠損したオスマウスは,100%不妊となった。そこで,出生後から性成熟に至る期間の精巣を免疫組織学的に解析したところ,生後8週までにほぼすべての精細管から減数分裂期以降の精母細胞ならびに半数体の精娘細胞が失われるという精子形成不全の表現型を確認した。興味深いことに,PLZF陽性精原細胞およびGFRA1陽性精原幹細胞は精母細胞や精娘細胞を全く含まない異常な精細管においてむしろ対照区と比較して増加しており,高い体細胞分裂活性(Ki67陽性)を示していた。一方,FACSを用いた解析からPLZF陽性精原細胞はKdm2a欠損マウスの精巣において増加するもののc-Kit陽性の分化型精原細胞の割合には変化が見られなかった。さらに,Kdm2a欠損マウスの精巣よりThy1陽性の未分化精原細胞を分取して体外培養に供したところ,体外においても自己複製能を示した。以上の結果より,Kdm2aが精原(幹)細胞の増殖を調整するとともに,自己複製から分化へと性質を転換する上で極めて重要な役割を果たしていることが示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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