日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-113
会議情報

生殖工学
暑熱ストレスがウシ体外受精胚のカテプシンB活性および発生能に及ぼす影響
*山中 賢一樫澤 彩和田 康彦阪谷 美樹竹之内 直樹高橋 昌志
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】我々はこれまで,リソソーム内でタンパク質分解に関わる酵素であるカテプシンBの活性とウシ体外受精胚の発生能との間に負の相関があることを明らかにしてきた。一方,暑熱ストレスにより受精胚の発生能が低下することがこれまでに報告されているが,カテプシンB活性の関与について調べた報告はない。したがって,今回は体外受精時の暑熱ストレスがウシ体外受精胚の発生能およびカテプシンB活性に及ぼす影響について検討を行った。さらに,カテプシンB活性の抑制により暑熱ストレスを受けた胚の発生阻害回避の可能性についても検討を行った。【方法】対照区,暑熱ストレス(HS)区,暑熱ストレス+カテプシンB阻害剤E-64添加(E-64;濃度:1, 5, 10 μM)区を設定し,対照区は38.5℃,HSおよびE-64区は40.0℃で体外受精を行った。媒精完了後,卵丘細胞を剥離し,38.5℃,5%CO2の条件下で発生培養を行った。培養後2日目にMagic Red Cathepsin B Detection Kitを用いてカテプシンB活性の検出を行った。また,発生率は分割率と胚盤胞形成率をそれぞれ培養後2日目,8日目に観察することで算出した。さらに,胚盤胞期胚は二重染色およびTUNEL染色により細胞構成数およびアポトーシス陽性細胞の検出により品質評価を行った。【結果】発生率はHS区において対照区と比較して分割率,胚盤胞形成率ともに有意に低下した。一方,5 μM添加E-64区で分割率,胚盤胞形成率および総細胞数がHS区と比較して有意に増加し,対照区と同等の成績であった。さらに,各実験区のカテプシンB活性を調べたところ,HS区では対照区と比較して有意に高く,5 μM添加 E-64添加区では,HS区と比較して有意に低かった。以上の結果から,暑熱ストレスによるカテプシンB活性の増加が胚発生阻害を引き起こす原因の一つであるという可能性が示された。

著者関連情報
© 2013 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top