日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-28
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卵・受精
ホメオタンパク質EGAM1Nの強制発現がマウスES細胞の細胞分化に及ぼす影響
*佐藤 梓織佐藤 由貴菅原 彩子春日 和小嶋 郁夫小林 正之
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抄録

【目的】マウスにおける最初の細胞分化は桑実期に開始する。私達は,桑実期に発現量が増加するホメオタンパク質EGAM1Nを発見した(Saito et al., Biol. Reprod., 2010)。EGAM1N強制発現はマウスES細胞の未分化状態を安定化することが示されている。そこで本研究では,EGAM1N強制発現がマウスES細胞の細胞分化に及ぼす影響を検討した。【方法】EGAM1N強制発現マウスES細胞株を樹立し,未分化状態維持(+LIF)培養,および4日間のLIF非添加(-LIF)分化誘導,1/10量のLIF (1ng/ml)とレチノイン酸(1 µM)を添加した(+1/10 LIF+RA )分化誘導を行った。なお,レチノイン酸添加による過剰なアポトーシスを抑制するために,1/10量のLIFを添加した。回収したRNAからcDNAを合成し,T (中胚葉誘導マスター転写因子),Cdx2 (栄養外胚葉誘導マスター転写因子),Gata6 (原始内胚葉誘導マスター転写因子),およびAfp (原始内胚葉マーカー)の発現量を定量した。また,未分化状態維持に関与する転写因子のタンパク質発現量を検討した。【結果】-LIF分化誘導したEGAM1N強制発現株におけるTおよびCdx2の発現量は,有意(P < 0.01)に増加した。また,+1/10 LIF+RA分化誘導したEGAM1N強制発現株では,Cdx2Gata6,およびAfpの発現が有意(P < 0.01)に減少した。また,コントロールと比較して,-LIF分化誘導においてNANOGタンパク質発現量が減少し,+1/10 LIF+RA分化誘導においては逆にNANOGおよびOCT4発現量が大きく増加した。以上の結果より,EGAM1N強制発現は-LIF分化誘導においてはTおよびCdx2の活性化を介して中胚葉,栄養外胚葉への分化を促進し,+1/10 LIF+RA分化誘導においてはOCT4およびNANOG発現量を増加させることを介して分化を抑制した可能性が考えられる。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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