日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-31
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性周期・妊娠
子宮内膜腺細胞のLIF, PGE2産生機構におけるEPAC2を介したカルレティキュリン発現の役割
*中山 貴裕吉江 幹浩草間 和哉田村 和広沓掛 真彦立川 英一
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抄録

【目的】妊娠の成立には,子宮内膜の成熟による胞胚受容能の獲得が重要である。内膜腺細胞は,この成熟過程において着床を促進する白血病抑制因子(LIF)とプロスタグランジン(PG)E2を産生する。これらの産生には,cAMPシグナル経路を介したプロテインキナーゼA(PKA)の活性化が関与するが,PKAとは異なるcAMPシグナル仲介因子のExchange protein directly activated by cAMP (EPAC)の役割については不明である。本研究では,ヒト子宮内膜腺上皮細胞株(EM1)を用い,腺に高発現しているEPACサブタイプ2(EPAC2)と以前,我々がEPAC2により発現制御を受けることを示唆したカルレティキュリン(CRT)の役割を調べた。【方法】EM1におけるEPAC2の発現をsiRNAにより抑制した後,CRTの発現を調べた。EPAC2またはCRTの発現を抑制した後,フォルスコリン,PKAまたはEPAC選択的アゴニストを処置し, LIFとPGE2産生の調節因子であるシクロオキシゲナーゼ(COX)2の発現とPGE2産生を調べた。さらに,EPAC2とCRTの発現と細胞老化との関係について老化マーカーであるSA-ß-Gal活性を指標に調べた。【結果】CRTの発現はEPAC2発現抑制により減少した。フォルスコリンまたはPKAアゴニストによりLIF,COX2の発現及びPGE2産生は上昇したが,EPACアゴニストによる影響はなかった。一方,EPAC2またはCRTの発現を抑制すると,LIFとCOX2の発現上昇とPGE2産生が顕著に抑制された。また,EPAC2またはCRTの発現抑制によりSA-ß-Galの活性が上昇した。【考察】内膜腺細胞においてcAMPによるLIF,COX2発現およびPGE2産生にはPKAを介したシグナル伝達が重要であり,EPAC2によるCRTの発現がこの腺機能の調節維持に関与することが示唆された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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