日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-40
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内分泌
ホンモロコ(Gnathopogon caerulescens)由来Sertoli細胞株を用いたホルモン作用解析系の開発
*檜垣 彰吾小山 芳江島田 愛美小野 友梨子遠山 育夫藤岡 康弘酒井 則良池内 俊貴高田 達之
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抄録

【目的】琵琶湖には多くの貴重な固有種が生息しているが,近年それら固有種の個体数が激減している。琵琶湖では,ノニルフェノール(NP)やビスフェノールA(BPA)などの内分泌かく乱物質が検出されており,魚類繁殖性への影響が懸念される。本研究では,琵琶湖に生息する固有魚類の細胞を用い,それら化学物質が固有種に与える影響を検出,解析することが可能な実験系の確立を目的とした。【方法】ホンモロコより精巣を摘出し,細切・酵素処理後,種々の成長因子を含む培養液中(28℃)で培養し,細胞の形態に変化が見られなくなるまで継代を行い,細胞株を樹立した。次に,その細胞へ,ルシフェラーゼ遺伝子の上流にMMTVプロモーター(アンドロジェンおよびプロジェステロンレセプター応答エレメントを持つ)を組込んだベクターを安定導入した。反応性の良好な細胞株を選抜(RMT2-MMTV-Luc#7)し,雄性ホルモン(11-ケトテストステロン:11-KT,テストステロン:T,メトリボロン:R1881),黄体ホルモン(プロジェステロン:P4,17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン:DHP)およびNP,BPAに対する反応性を,48時間暴露後におけるルシフェラーゼ活性により測定した。【結果・考察】遺伝子解析および免疫染色の結果,樹立細胞株がSertoli細胞由来であることが確認された。本細胞株は生理的な濃度下において,魚類特異的な11-KTおよびDHPに反応性を示す一方,TやP4には反応性を示さず,魚類体内でのSertoli細胞と類似したホルモン応答性を示した。また,NPおよびBPAの抗雄性および抗黄体ホルモン作用を調べた結果,NPが抗雄性ホルモン作用を示す事が明らかとなった。魚類ではNPの生物濃縮率が高いことから,体内において,NPがSertoli細胞に直接影響を及ぼしている可能性が示唆された。本研究により,特定魚類におけるホルモンおよび内分泌かく乱物質の作用を,細胞レベルで検出,解析が可能な実験系が確立できたと考えられる。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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