日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-49
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内分泌
卵胞期のウシにおけるキスペプチン末梢投与が性腺刺激ホルモン分泌,発情行動および排卵におよぼす効果の検討
*難波 陽介HASSANEEN Ahmed Saad Ahmed加藤 雅大伊藤 太祐奥田 雄大末富 祐太佐々木 拓弥説田 章平大石 真也藤井 信孝上野山 賀久束村 博子前多 敬一郎松田 二子大蔵 聡
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抄録

【目的】われわれは以前,黄体期初期の成熟雌ウシにおいてウシ全長キスペプチン(Kp-53)の末梢投与が第1卵胞発育波主席卵胞の発育およびLH分泌を刺激することを報告した(第104回本大会)。この結果から,キスペプチンの卵胞発育刺激効果がウシの発情行動の強化および排卵促進に利用できるのではないかと考えた。本研究では,卵胞期のウシを用いて,キスペプチンの末梢投与が性腺刺激ホルモン分泌,発情行動および排卵におよぼす効果を検討することを目的とした。【方法】黒毛和種経産雌ウシを用い,Presynch-Ovsynch法(Moreira et al., J. Dairy Sci., 86, 1646–59, 2001)を一部改変して適用し,プロスタグランジンF(PG)-PG-GnRH-PGの順にそれぞれ11日,10日および7日間隔で筋肉内投与して卵胞期を誘導した。最後のPG投与から24時間後,Kp-53(2 nmol/kg, n=6)または生理食塩水(n=4)を静脈内投与した。Kp-53投与時から,2時間間隔で経時的に採血を行い,血漿中LH濃度を測定するとともに,4時間おきに30分間の行動観察を実施した。また,超音波画像診断装置により,Kp-53投与の24時間前から排卵を確認するまで6時間おきに主席卵胞の直径を測定した。【結果および考察】本実験では,Kp-53または生理食塩水投与時に存在していた主席卵胞が排卵した個体(グループ1,それぞれn=2およびn=3)と,同主席卵胞が閉鎖した後に新たに選抜された主席卵胞が排卵した個体(グループ2,それぞれn=4およびn=1)が観察された。両グループともに,Kp-53または生理食塩水投与の時間を基準として,LHサージのピーク,スタンディング発情の開始および排卵が観察された時間が,生理食塩水投与群と比較して,Kp-53投与群において早くなる傾向がみられた。これらの結果から,卵胞期におけるキスペプチンの末梢投与は,発情および排卵のタイミングを早める可能性が示唆された。また,Presynch-Ovsynch法において,最後のPG投与時に存在する主席卵胞の半数がすでに閉鎖する運命にある可能性が示された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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