日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-57
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卵巣
マウス卵母細胞が顆粒膜細胞でのmiR-322発現を抑制する
*住友 準一藤井 渉内藤 邦彦杉浦 幸二
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抄録

【目的】哺乳類の卵母細胞の正常な発達には,周囲の顆粒膜細胞(卵丘細胞:CC,壁顆粒膜細胞:MG)が重要であり,一方で顆粒膜細胞の分化・機能制御には卵母細胞が分泌する増殖因子(卵因子)が大きな役割を果たす。一般に,細胞の分化・機能制御には,小分子非コードRNAであるマイクロRNA(miRNA)の関与が知られる。しかし,卵因子が顆粒膜細胞の分化・機能を制御する過程にmiRNAが関与しているのか,それどころか,顆粒膜細胞内において,卵因子による発現制御を受けるmiRNAが存在するのかさえ不明である。そこで本研究では,顆粒膜細胞において卵因子によって発現制御を受けるmiRNAを同定することを目的とした。【方法】CCとMGは卵母細胞との距離が異なることから,CC・MG間で発現差のあるmiRNAは卵因子の制御を受けている可能性がある。そこで,妊馬血清性性腺刺激ホルモンで刺激した3週齢B6D2F1雌マウスよりCC,MGを採取し,miRCURY LNA miRNA ArrayシステムによるmiRNAの網羅的発現比較を行った。また,卵母細胞との共培養(2 個/ μl)がMGにおけるmiRNA発現に与える影響を,リアルタイムPCRで解析した。【結果】マイクロアレイ解析により,CC・MG間で発現差の示唆されるmiRNAが複数同定された。これらについてリアルタイムPCRで発現を解析した結果,miR-322-5p(以下322)についてMGでCCの約10倍の発現が確認された(P<0.05)。また,卵母細胞との共培養によって,MGにおける322の発現は有意に抑制された(P<0.05)。これらのことは,卵因子がCCにおける322の発現を抑制することによって,CCとMG間で322の発現差が生じていることを示唆している。本研究では,CCとMGにおいて発現差のあるmiRNAが存在すること,そして,その発現差に卵因子が関わっている可能性を初めて明らかにした。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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