日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-70
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精巣・精子
Lipidure-BL添加によるブタ精子のスライドガラスへの付着低減
*小林 吉倫大木 美奈金 允貞定兼 和哉濱野 光市保科 和夫高木 優二
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抄録

【目的】コンピュータを用いた精子運動性解析装置(CASA)は,精子の運動性の客観的評価に有効である。しかし,用いる基材や培養液によって精子がスライドガラスに付着し,評価が困難な場合がある。これまで我々は,MPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマーをスライドガラス表面にコーティング処理を施し,培地はブタ精子の希釈保存液として知られるモデナ液に1%PVAを添加することで精子のスライドガラスへの付着を低減できることを報告した(日畜学会2013)。しかし,コーティング処理に手間がかかり,準備に時間を要するため,より簡便な手法の開発が必要である。Lipidure-BLは,ホスホリルコリン基を有する水溶性のポリマーであり,試薬の安定化,非特異的吸着を低減できる。そこで本研究では,6種類のLipidure-BLをモデナ液に添加し,ブタ精子の付着の低減について検討したので報告する。【方法】日油(株)の6種類のLipidure®-BL-103,-203,-206,-405,-802,-1002を実験に供した。スライドガラスは脱脂洗浄し,カバーガラスとの間隙を10μmになるようにセットした。モデナ液にLipidure-BL,PVAを添加し,ブタ精子の運動性をCASAにより評価した。【結果】モデナ液のみの場合,全ての精子がスライドに付着したが,Lipidure-BLを添加することで有意に精子の付着が低減し,特にLipidure-BL-206,-802,-1002の効果は著しかった。Lipidure-BL添加は,MPCポリマー処理よりもスライドへの付着低減効果は低かったものの,精子の曲線速度は有意に高かった。以上のことから,Lipidure-BL添加によりスライドのコーティング処理が不要であり,精子の運動性評価に利用できることが示された。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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