日本繁殖生物学会 講演要旨集
第108回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-7
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精巣・精子
幼若期マウス雄性生殖細胞の放射線感受性に及ぼす線量率と照射時期の影響
*渡部 浩之香田 淳立野 裕幸
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抄録
【目的】細胞への放射線照射はDNA損傷を引き起こす。従って生殖細胞への放射線照射は継世代的な影響を誘発する可能性がある。本研究では胎仔期後半から新生仔期のマウスに異なる線量率でガンマ(γ)線を照射したときの雄性生殖細胞における放射線感受性を評価した。【方法】妊娠16.5日目の胎仔,生後4日目および11日目の新生仔に690 mGy/分の線量率で2 Gyのγ線を急照射した(高線量率)。また同時期(妊娠14.5–19.5日目,生後2–7日目および9–14日目)に400 mGy/日の線量率でγ線を5日間連続照射した(集積線量=2 Gy,中線量率)。γ線照射後,雄マウスを10週齢まで飼育し,精巣重量・精子形成能・精子染色体正常性を調べた。【結果】精巣重量は,胎仔期に高線量率および中線量率γ線を照射した群で各々0.0132 gおよび0.0360 gとなり,非照射対照群(0.1053 g)の12.5–34.2%にまで減少した。一方で線量率にかかわらず新生仔期にγ線が照射された個体では,精巣重量の大きな低下は見られなかった(0.0762–0.1055 g)。精子形成能は線量率にかかわらず胎仔にγ線を照射することで損なわれ,特に胎仔へ高線量率γ線を照射した群では精子形成はほとんど認められなかった。一方,新生仔へ高線量率および中線量率γ線照射した群では正常な精子形成が認められた。胎仔に中線量率γ線,新生仔に高線量率および中線量率γ線を照射した群から回収した精子の染色体分析を行ったところ,線量率・照射時期にかかわらず回収された精子は非照射対照群と同等の染色体正常性を有していた。以上の結果から,幼若期マウスの雄性生殖細胞では胎仔期後半に放射線への感受性が高くなるが,出生後すぐに放射線に対して抵抗性を持つようになることが明らかとなった。これらの時期に放射線が照射されたとしても,その後形成される精子には遺伝的ダメージが蓄積されていないことが示された。
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© 2015 日本繁殖生物学会
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