日本繁殖生物学会 講演要旨集
第108回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-17
会議情報

性周期・妊娠
PRL, EGF, 4-OH-E2 複合添加培地で培養したマウス体外受精由来胚盤胞の着床能力
*竹内 美紀高橋 明仁古川 悦子福井 えみ子吉澤 緑松本 浩道
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】我々はプロラクチン(PRL),上皮成長因子(EGF),4-ヒドロキシエストラジオール(4-OH-E2)がマウス胚盤胞におけるbreast cancer1(Brca1),epidermal growth factor receptor(Egfr,Erbb1)とErbb4,tubulointerstitial nephritisantigen-like1(Tinagl1)の発現を誘起することを見出した。これらの発現動態は添加因子により異なるため,PRL, EGF, 4-OH-E2複合添加(3因子添加)により複数の経路を同時に賦活化し,これら着床関連因子の発現が上昇した胚を受胚用マウスに移植することで胚の着床能力を検討した。また,アルギニン(Arg)とロイシン(Leu)はそれぞれ異なるmTORを介した経路に作用し,栄養芽細胞の遊走性を刺激する。そこでArgとLeu を3因子添加培地に添加し,胚の着床能力向上を試みた。【方法】培養90時間後に得られた体外受精由来胚盤胞を無添加区,3因子添加区(20 mIU/ml PRL,10 ng/ml EGF,10 nM 4-OH-E2),3因子+Arg,Leu添加区(3因子+0.2 mM Arg, 0.2 mM Leu)に分け24時間培養した。対照群と実験群の胚を受胚用マウス左右子宮角にそれぞれ6個ずつ移植した。移植から2日後に1%シカゴブルーの尾静脈注射により着床部位を可視化し着床率を評価した。【結果】3因子添加区と無添加区で培養した胚を移植した結果,3因子添加区の着床率は59.5%であり無添加区の着床率23.8%に比べ有意に高い値を示した。これらの結果から3因子添加により複数の経路を同時に賦活化させることで胚の着床能力が向上することが明らかとなった。一方,3因子添加区と3因子+Arg,Leu添加区で培養した胚を移植した結果,両者の間に有意な差はなかった。Arg,Leu添加によるmTORを介した経路の活性化は3因子添加による着床能力向上には影響を与えないことが示唆された。

著者関連情報
© 2015 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top