日本繁殖生物学会 講演要旨集
第108回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-9
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卵巣
in vitroで分化したマウス胎仔卵巣における網羅的遺伝子発現解析
*谷本 連諸白 家奈子河野 友宏平尾 雄二尾畑 やよい
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抄録
【目的】体外で卵子形成の全過程を行う技術の開発は,生殖細胞の研究のツールとして有用であるのみならず,産業・医療分野での応用が期待される。しかし,始原生殖細胞を含む受精後12.5日目(E12.5)の生殖巣の器官培養に始まる体外培養からは機能的な卵子は得られていない。この一因として,器官培養中の卵胞形成不全がある。胎仔卵巣の培養では,成長期卵母細胞への分化に関する問題は認められないが,個々の卵母細胞をそれぞれ顆粒膜細胞と莢膜細胞が覆う正常な卵胞構造がほぼ見られない。そのため体外培養において卵母細胞の十分な成長・成熟を支持することができない。そこで本研究では,in vitroにおける卵胞形成不全の原因を明らかにするため,器官培養を行ったマウス胎仔由来卵巣と,同時期のin vivo由来卵巣の遺伝子発現プロファイルを比較した。【方法】マウスE12.5胚の卵巣を摘出し,Transwell-COL上で10%FBS添加alphaMEM培地中にて7日間培養した。また新生仔マウスの卵巣を摘出し,それぞれRNAを抽出した。これらのサンプルを用いてRNAseq法によるトランスクリプトーム解析を行い(N=3),qRT-PCR法により結果を確認した(N=5)。【結果】ANOVA解析により統計的に処理を行ったところ,in vitro/in vivo卵巣間で発現量が有意に異なる遺伝子を4544個特定し,その中で発現量が下位15%の遺伝子を除去した。さらにIPAにより遺伝子の機能ごとに分類した。培養卵巣では発現しない血球系の細胞で発現する遺伝子等を除去した結果,AmhやInha等のTGFβスーパーファミリー遺伝子や,Cyp19a1等のステロイド合成経路に大きな差が見られることが明らかになった(FC>3またはFC<-3,p<0.05)。これらの遺伝子は,原始卵胞形成過程で発現が変動すると報告されている遺伝子群と一致した。一方で成長因子の発現量はin vitro由来卵巣で発現が有意に高かったが,ステロイド合成系の遺伝子は発現量が低かった。Cyp19a1は莢膜細胞のみで発現するとの報告もあり,こうした発現変化から卵巣内の細胞種ごとに分化速度が異なる可能性が示唆された。
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© 2015 日本繁殖生物学会
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