日本繁殖生物学会 講演要旨集
第108回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-60
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性周期・妊娠
ウシ子宮内膜上皮細胞におけるSide population細胞の解析
*松山 秀一古澤 軌池田 光美美辺 詩織木村 康二
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抄録
【目的】ウシにおいては分娩を機に受胎率が低下することが知られている。このような受胎率低下は分娩後の子宮内膜再生の不具合が一因と考えられるが,ウシの分娩後における子宮内膜再生メカニズムは未だ解明されていない。ウシとは異なり,月経周期ごとに脱落と増殖を繰り返し絶えず更新されるヒトの子宮内膜においては子宮内膜幹細胞が子宮内膜の更新に寄与することが示唆されている。我々はこれまでに,ウシ子宮内膜上皮細胞においても幹細胞活性を有すると報告されているSide population (SP)細胞が存在することを明らかにしており,本研究では,ウシ子宮内膜上皮培養細胞におけるSP細胞の出現パターンおよびSP細胞の分化能について明らかにすることを目的とした。【方法および結果】ウシ子宮からトリプシン処理により単離し,培養した子宮内膜上皮細胞を用いてHoechst33342にて染色後,フローサイトメトリー解析に供し,SP細胞の存在を確認した。さらにセルソーターによって,ウシの子宮内膜上皮培養細胞からSP細胞を分取し,骨芽細胞および脂肪細胞分化用培地を用いて培養したが,それぞれ骨芽細胞および脂肪細胞への分化は認められなかった。また,マトリゲルと混合したウシ子宮内膜上皮SP細胞を免疫不全マウスの皮下に注入し,9週間後に移植部位を確認したところ,テラトーマの形成は認められなかった。このように,ウシの子宮内膜上皮SP細胞はヒト子宮内膜SP細胞で示されているような多分化能を示さないことから,ウシの子宮内膜再生メカニズムは幹細胞が寄与するヒトの子宮内膜更新とは大きく異なる可能性が示唆された。また,子宮内膜上皮細胞におけるSP分画の割合は一定でなく個体間で大きく変動していたことから,ウシ子宮内膜上皮SP細胞は子宮内膜更新の段階に応じて増殖するような前駆細胞として機能することで子宮内膜の更新に寄与している可能性がある。
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© 2015 日本繁殖生物学会
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