日本繁殖生物学会 講演要旨集
第108回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-61
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性周期・妊娠
妊娠早期のウシ子宮における血管内皮細胞増殖因子ファミリーの遺伝子発現動態と血管数およびリンパ管数の変化
*林 憲悟細江 実佐金原 浩子藤井 史織作本 亮介
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抄録
【目的】血管内皮細胞増殖因子(VEGF)ファミリーは,雌性生殖器の血管新生やリンパ管新生に関与することが知られている。本研究は,妊娠早期のウシ子宮において,VEGFを介した血管新生やリンパ管新生が促進されるかを明らかにするため,妊娠および非妊娠子宮内膜におけるVEGFファミリーの遺伝子発現と,子宮組織における血管数およびリンパ管数の変化を解析した。【方法】妊娠Day 15,18,27 (Day 0=人工授精日)および発情周期Day15,18 (Day 0=発情日)の黒毛和種雌ウシより子宮組織を採取した(n=3–4)。各組織から総 RNA を抽出後,VEGFリガンド(VEGFA,B,C,D)および受容体(VEGFR1,2,3)の遺伝子発現量をリアルタイムPCR 法により解析した。また,血管内皮細胞のマーカーであるvWFとリンパ管内皮細胞のマーカーであるLYVE1の免疫組織化学染色により,妊娠牛および非妊娠牛の黄体側および非黄体側子宮組織における血管数およびリンパ管数を計測した。【結果】妊娠Day 18子宮内膜において,VEGFAおよびVEGFR3 mRNAの発現が他の妊娠日齢より高く,VEGFB mRNAの発現が低かった。VEGFD mRNAは妊娠Day 15からDay 27にかけて発現が減少した。一方,妊娠Day 18におけるVEGFA,VEGFC,VEGFR1,VEGFR3のmRNA発現量は,非妊娠子宮内膜よりも低かった。妊娠牛の黄体側子宮組織において,間質層における血管数はDay 15と比較してDay 18で多く,Day 18では非妊娠牛よりも血管数が多かった。また,妊娠牛の黄体側子宮組織の筋層におけるリンパ管数は,Day 15と比較してDay 18で多い傾向が見られた。一方,非妊娠牛の子宮組織では血管数,リンパ管数ともにDay 15とDay 18の間で有意差は認められなかった。以上より,発情周期だけでなく妊娠早期のウシ子宮内膜でVEGFファミリーとその受容体が発現することが明らかとなり,VEGFAを中心とするVEGFファミリーが妊娠早期のウシ子宮内膜における血管新生やリンパ管新生を調節する可能性が示された。
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© 2015 日本繁殖生物学会
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