日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-19
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生殖工学
マウス2細胞期胚において分配異常を起こした染色体の回収と同定の試み
*柴﨑 郁江鎌田 裕子鳥飼 昂平長友 啓明水谷 英二若山 照彦
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抄録

【目的】近年,初期胚における染色体分配の様子は,ライブセルイメージングなどでの観察が可能となり,染色体分配異常(ACS)の有無や発生時期は,産仔率と関係があることがわかっている。In vitroによる胚作出は基礎研究,農業,医療など多方面で広く一般に普及している非常に有用な技術であるが,体外胚生産でのACS発生頻度は自然な受精の場合と比較して高いことが知られており,特にクローン胚をはじめ,顕微操作を伴った胚においてその頻度は高い。しかしながら,核から遊離した染色体は,染色体の一部が断片化したのか,1本がそのまま遊離しているのか,遊離する染色体に規則性はあるのかといったことは,未だわかっていない。そこで本研究ではマイクロマニピュレーターを用いてマウス2細胞期でのACS胚から遊離している微小核を摘出し,同定を試みることでACSの発生理由について理解を深めることを目指した。【方法】顕微授精に用いる精子は,染色体異常が高頻度で起こる,フリーズドライ精子を採用した。定法に従い顕微授精により胚を作出した。染色体を蛍光により可視化するためH2B-mCherry融合タンパクのmRNAを注入し,2細胞期でACSの有無を蛍光観察で判定した。見つかったACS胚の遊離微小核はマイクロマニピュレーターにセットした外形8–10 μmのガラスピペットで抜き出した。分離した微小核は極体と核を除去した未受精卵に注入し,早期染色体凝集(PCC)させることで染色体解析を可能にした。【結果および考察】2細胞期ACS胚からの遊離微小核の摘出は,サイトカラシンとコルセミドを添加した操作培地を用いることで可能となった。遊離微小核を顕微操作により胚から抜き出す際,それが核本体と離れていて簡単に回収できるものと,核本体と結合していて分離できないものの2パターンがあった。回収した微小核は,除核未受精卵へ注入後数時間で早期染色体凝集(PCC)を形成した。本研究によりACS胚の核から遊離した微小核は単離でき解析可能なことが示唆された。今後,PCCを起こした微小核注入卵を用いてより詳細な解析をしていきたい。

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