日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-27
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臨床・応用技術
ウシ過剰排卵処置時におけるニューロキニンB受容体作動薬の末梢投与が黄体形成ホルモン分泌および回収胚の品質に及ぼす影響
*中村 翔木村 康二美辺 詩織大石 真也大蔵 聡松山 秀一
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抄録

【目的】現在行われている過剰排卵処置では,回収胚の数と品質にばらつきが出るといった問題が度々生じている。また,現在の過剰排卵処置では,黄体形成ホルモン(LH)分泌の抑制が起こることが知られており,このLH分泌抑制が卵子の成熟過程に影響を及ぼし,前述した問題を引き起こすと考えられるが,その改善は未だなされていない。視床下部弓状核に局在するニューロキニンB,ダイノルフィンおよびキスペプチンが共存するKNDyニューロンとよばれるニューロン群は生殖機能の制御に重要な役割を果たすと考えられており,近年,ウシにおいてニューロキニンB受容体作動薬であるsenktideの末梢投与がLH分泌を亢進することが報告されている。そこで本研究では,ウシの過剰排卵処置時においてsenktideの末梢投与が,性腺刺激ホルモン分泌および回収胚の品質に及ぼす影響について検討を行った。【方法および結果】黒毛和種繁殖雌牛(n=12)を用い,ブタ卵胞刺激ホルモン製剤を3日間漸減投与することにより過剰排卵処置を行った。過剰排卵処置開始72時間後からニューロキニンB受容体作動薬であるsenktide(30または300 nmol/min)を静脈内に2時間投与し,投与前後におけるLHの分泌動態を調べた。また,発情後7日目に採胚を行い,回収胚の品質をIETSグレードで評価するとともに,CodeⅠまたはCodeⅡの胚盤胞期胚からRNAを抽出し,DNAマイクロアレイおよびQPCR解析を行った。過剰排卵処置牛へのsenktideの末梢投与は,LH分泌を亢進した。また,senktideの投与により回収胚に対する高品質胚の割合が増加した。さらに,胚における遺伝子発現パターンが変化し,シトクロム酸化酵素1などの代謝亢進に関与する遺伝子発現が上昇した。以上の結果から,過剰排卵処置牛へのsenktideの投与はLH分泌を亢進させるとともに,胚における代謝亢進に関与する遺伝子発現を上昇させ,胚の品質を向上させる可能性が示された。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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