日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-26
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臨床・応用技術
耐凍剤濃度と凍結条件がイヌ凍結精子の生存性およびミトコンドリア活性に及ぼす影響
*緒方 和子竹内 絢香佐藤 あかねBORJIGIN Sarentonglaga山口 美緒原 明日香KHURCHABILING Atchalalt菅根 尚子福森 理加長尾 慶和
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抄録

【目的】盲導犬をはじめとする高い遺伝資質の求められるイヌの繁殖および育種改良に対し,凍結保存精液を用いた人工授精が有効と期待される。しかしながら,現在のイヌ凍結精子は融解後の質の低下が著しく,受胎性が低い。本研究では,イヌ凍結融解精子の質の向上を目指し,凍結希釈液に添加する耐凍剤の細胞毒性および凍結時に生じる氷晶によるイヌ凍結精子への傷害の軽減を目的に検討を行った。【方法】ラブラドール・レトリーバー種9頭より精液を採取し,卵黄,トリス,クエン酸,糖類および抗酸化剤を含む一次希釈液,ならびに耐凍剤としてグリセロール(GL)を含む二次希釈液により希釈処理を行った。凍結は,密閉箱内で液体窒素(LN2)蒸気にストローを曝し平衡した後,LN2へ浸漬することで行った。GL濃度を0,1.5,3,6または9%に設定し,至適濃度を検討した。凍結平衡時間を15または30分,LN2液面からストローまでの距離を1,4,7または10 cmとし,凍結速度を–12.0,–6.7,–4.3または–2.8℃/minに設定することで,至適凍結条件を検討した。凍結融解後の評価として,運動活性および生存指数の経時評価を行った。また,フローサイトメトリーにより,凍結融解0および24時間後における生存性(Live/Dead染色)およびミトコンドリア活性(JC-1染色)を評価した。【結果】運動活性については,融解直後では,全ての凍結速度区において,GL濃度6%区で無添加区と比較して高い値となった(P<0.05)。融解24時間後では,凍結速度1㎝区で他の凍結速度区と比較して高い傾向が得られた。ミトコンドリア活性については,融解24時間後では,GL濃度3%区で高い値が得られた。凍結平衡時間については,GL濃度による精子生存指数の有意な変化はみられなかった。以上より,凍結速度–12℃/minおよびGL濃度3%の凍結条件は,イヌ精子凍結時の氷晶形成による傷害の軽減ならびに融解後のミトコンドリア機能の保護に有効である可能性が示された。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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