日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-10
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精巣・精子
ウシ卵管上皮細胞培養上清による好中球の精子及びビーズに対するin vitroにおける貪食活性の差異
*松川 悠久YOUSEF Mohamed S福井 歩羽田 真悟佐々木 基樹松井 基純清水 隆宮本 明夫
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抄録

【目的】これまでに本研究室において,屠場由来の発情周期中のウシ卵管還流液中で数千の好中球の存在が確認され,卵管上皮細胞培養上清(BOEC (+))が好中球のNETs放出を抑制し,その結果,精子貪食を抑制することを示した(Marey et al., 2014)。今回,1)ウシ卵管腔内の免疫細胞像を詳細に観察し,2)精子活力の有無による好中球の貪食活性の差異と,3)BOEC(+)で培養された好中球による精子とビーズに対する貪食率の差異を検討した。【方法】1)屠場由来のウシ卵管を採取直後に凍結し,凍結切片を作成後May-Grunwald-Giemsa染色とPAS染色し,顕微鏡観察した。2)本学畜産フィールド科学センター飼育の発情周期を回帰する雌ウシより採血し,好中球を濃度勾配法により単離した。好中球を,BOEC単層培養上清BOEC (+)と新鮮培養液BOEC (–)でそれぞれ2時間培養した。一方,凍結精液を融解し,swim-up法により活力の良い精子と,56℃30分で非働化処理された不活化精子を得た。その後,好中球と1時間共培養し貪食させ,顕微鏡下で観察・撮影し貪食率を求めた。3)ビーズ貪食試験でも同様の方法で実験を行い,蛍光顕微鏡とFCMにより細胞数を計測し貪食率を求めた。ビーズはカルボキシル化ポリエスチレンでコーティングされ,黄緑色蛍光の直径2.0 µmのものを用いた。【結果】1)ウシ卵管内腔に少数の免疫細胞,特に多形核球とリンパ球の存在を確認した。2)活力のある精子と不活化精子に対する好中球の貪食率に差はなく,さらにBOEC(+)により両区の貪食率は共に4割程度低下した。3)対照区とBOEC(+)で培養された好中球によるビーズ貪食率の間に差はなかった。以上の結果から,BOEC(+)は,活発な精子と不活化された精子に対して好中球の貪食を同様に抑えるが,ビーズに対しては貪食を抑えなかった。これは,好中球がNETsを用いずにビーズを貪食するためBOEC(+)によるNETs抑制作用が影響しないためと考えられた。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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