日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-20
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臨床・応用技術
ガラス化GV期ウシ卵丘卵子複合体を成熟培養した後の卵細胞質内脂肪滴動態について
*田島 和弥久保 友紀平林 真澄保地 眞一
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抄録

【目的】M-II期ウシ未受精卵子は,裸化卵子(DO)に適用できる媒精条件を採用する限り,DOの状態で効率よくガラス化保存できる。一方GV期卵子の場合,DOにすること自体がIVM後の卵細胞質成熟不全を引き起こすが,COCの卵丘細胞層をダウンサイズしてからガラス化すればIVMFC後の胚盤胞発生率は有意に改善された。本研究では,GV期でガラス化・加温したダウンサイズCOCをIVMした後に観察された,卵細胞質内脂肪滴の存在様式の変化について解析した。【方法】新鮮ウシ卵巣由来COCを外径平均196 µmにまでダウンサイズした後,クライオトップをデバイスとしてガラス化保存した。加温・CPA希釈後に22時間のIVMに供し,第一極体の有無により核成熟率を求めた(対照は新鮮卵子)。成熟卵子については,卵子断面積に占める脂肪滴の面積,脂肪滴数,脂肪滴サイズ,ミトコンドリア活性,CG分布を調べた。また,テオフィリン・ヘパリン処理精子で6時間処理したIVF卵子の脂肪滴占有域を非侵襲的に分類し,低酸素条件下で8日間のIVCにWOW培養系を採用することで胚盤胞発生率との関係を調べた。【結果】ガラス化・IVM後の成熟卵子における脂肪滴占領域はImageJ解析で新鮮対照よりも約10%狭く,NileRed染色により脂肪滴数の減少(387.2 vs. 514.8個/卵子),およびサイズの増大(7.3 vs. 4.3 µm2/脂肪滴)が観察された。核成熟率,ミトコンドリア活性,CG分布には差は認められなかった。卵細胞質内脂肪滴の動態変化が胚盤胞発生率の低下(34.4 vs. 60.1%)に直結するデータがWOWにより得られることを予想したが,脂肪滴占有率50%未満,50〜69%,70%以上に分類したガラス化IVMFC卵子からの胚盤胞発生率はそれぞれ,28.6,38.6,33.3%であり,ガラス化卵子で多く観察された脂肪滴存在様式はエネルギー指標や胚盤胞発生能にインパクトを与えるものではなかった。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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