日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-21
会議情報

臨床・応用技術
肉用牛における同時発情時の発情行動と排卵時間の関係及び牛群内順位が発情行動発現に与える影響について
*笠井 一人中島 さつき日下 裕美三浦 弘菊池 元宏坂口 実
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】これまで,スタンディング(ST)行動と排卵時間の関係性は解析されてきているが,その他の発情行動ではほとんど解析されていない。また,牛群内には通常一定の順位が存在し,その個体の社会的順位が発情行動の発現に影響する。本研究ではビデオカメラを用いた行動観察と,超音波画像診断装置を用いた排卵時間の推定による発情行動と排卵時間の関係性の解明と,牛群内順位が発情行動発現に与える影響の解明を目的とした。【方法】北里大学内フリーストール牛舎の肉用牛13頭を供試した。プロスタグランジンF製剤投与により発情を同期化し,延べ24発情における発情行動を3台のビデオカメラで記録した。また,投与2日後から,1日4回の給餌時に超音波画像診断装置を用いて排卵確認を行い,排卵時間を推定(主席卵胞消滅の3時間前)した。行動解析はVan Eerdenburgらの発情スコア表に頭突きと舐めの行動を追加して,排卵60時間前からの記録映像より行った。30分毎にスコアを合計し,100点を上回った時を発情開始,下回った時を発情終了とした。また,供試牛の右前肢に歩数計を装着して行動量を記録し,過去7日間の平均から1.6倍以上に歩数が上昇した期間を行動量からみた発情とした。一部改変した飼槽優先法により牛群内の順位を調べ,確定できなかった1頭(2発情)を除いた12頭(22発情)を用い,上位6頭と下位6頭の2群に分けて解析した。【結果】排卵を起点とした行動開始は匂い嗅ぎが最も早く,ST行動が最も遅く10時間以上の差があった。行動終了から排卵までの時間は,歩数上昇を除いて13~20時間の間にあった。行動開始から終了までの持続時間はST行動が最も短く,最も長かった匂い嗅ぎとの間に約16時間の差があった。発現頻度はマウンティング(MT)行動が最も多く,発情中の1時間当たりの頻度も最多となった。順位別に行動回数をみると,MTから逃避する行動以外は上位牛で多く発現することがわかった。しかし,1時間当たりの平均回数で比較すると有意差はなかった。

著者関連情報
© 2016 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top