日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-91
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生殖工学
FSH処理したOPU由来黒毛和種COCのガラス化保存と発生胚からの子牛生産
*松田 秀雄山之内 忠幸相川 芳雄大竹 正樹後藤 由希橋谷田 豊
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抄録

【目的】一般に超低温保存したウシ卵子は,体外受精(IVF)後の胚盤胞発生が低率である。その原因の一つにガラス化に供する卵子の品質による影響があげられる。本研究では,ガラス化保存したウシCOCの胚盤胞発生率の向上を目的に,OPU前のFSHによる卵胞発育処置を行い,採取したCOCのガラス化保存−加温−IVF後の胚発生成績を調べ,さらに移植胚に由来する子牛の生産および正常性について検証した。【方法】黒毛和種7頭(延べ13頭)を用い,発情周期の任意の時期に8 mm以上の卵胞を吸引除去ならびにCIDRを挿入(0日目)し,翌日午後から5日目朝まで合計20AUのFSHを漸減投与(4,4,3,3,2,2,1および1AU)し,6日目の朝にOPUを行った。採取したCOCをDPBS + 0.3%PBSで調整した20%および30%パーコール液に段階的に入れ,20%パーコール液で沈降し30%で浮遊したCOCをガラス化保存に用いた。選別したCOCは,4%エチレングリコール(EG)に12分間平衡後,35%EG +5% ポリビニルピロリドン+0.4 Mトレハロースに30秒間曝露し,Cryotopを用いて液体窒素に浸漬して超急速ガラス化保存を行った。COCは,加温およびガラス化液の希釈後2 hの修復培養を行い,家畜改良センター定法によりIVFを行い,発生した胚盤胞を排卵同期化した受胚牛へ移植した。対照区は,FSH無処理の供胚牛から採取したCOCをガラス化保存した。FSH処理区と対照区における卵子ガラス化保存卵子由来の胚盤胞発生率および移植後の産子の生産性と正常性を調査した。【結果】FSH処理区と対照区の卵割率(27.3% vs. 25.6%),胚盤胞発生率(11.0% vs.7.8%)およびCode1の胚盤胞の割合(65.2% vs. 70.6%)に差はなかった。また,発生した胚盤胞を移植した結果,FSH処理区では受胎牛2頭から産子2頭を生産した。一方,対照区では受胎牛3頭のうち,1頭が60日齢以降に流産したが2頭の産子を生産した。産子はすべて正常に分娩し,過大子はみられず,また遺伝子検査による親子判定に問題がなかった。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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