日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-90
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生殖工学
ブタ初期胚と卵管組織の相互作用におよぼす精漿の影響
*東間 千芽櫻井 伸行高橋 一生江村 菜津子皆川 修人橋爪 力澤井 健
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抄録

【目的】胚と雌性生殖器組織の共培養は多くの動物種で行われており,その相互作用が受精や胚発生に重要な役割を担うと考えられている。精漿はプロスタグランジン(PGs)などの因子を含み,これらは雌性生殖器組織に作用して生殖器組織由来のPGsの発現を調節する。本研究では,共培養に用いる卵管上皮細胞への精漿感作がブタ初期胚の発生におよぼす影響について検討した。【方法】培地に0%,5%,10%および20%濃度の精漿を添加して24時間培養したブタ卵管上皮細胞のPTGS2およびPTGFSのmRNA発現解析を行った(実験1)。精漿を0%,1%および5%濃度で感作した卵管上皮細胞上でブタ体外受精胚を72時間共培養もしくは非共培養し,その後胚を非共培養条件下で96時間培養した(実験2)。精漿を0%および5%濃度で感作した卵管上皮細胞上で共培養した胚および非共培養胚を培養開始24時間目および48時間目に採取し,Calcein染色により胚の生存性について検討した(実験3)。【結果および考察】実験1:PTGS2発現量は10%精漿添加区において,無添加区と比較して有意(P<0.05)に高い値を示した。PTGFS発現量は各処理区間に有意な差は認められなかった。実験2:培養2日目の分割率および3日目の8-細胞期以上の発生率は5%精漿添加区において,その他の区と比較して有意(P<0.05)に低い値を示した。4日目の16-細胞期以上の発生率は5%精漿添加区において,非共培養区と比較して有意(P<0.05)に低い値を示した。6日目の胚盤胞期以上の発生率は精漿添加区において,非共培養区と比較して有意(P<0.05)に低い値を示した。実験3:Calcein陽性率は各処理区間で有意な差は認められなかった。蛍光強度は精漿添加区において,その他の区と比較して有意(P<0.01)に低い値を示した。本研究結果より,ブタ初期胚と卵管上皮細胞の共培養は胚の発生や生存性に影響しないが,精漿の卵管上皮細胞への作用が胚発生を阻害することが示唆された。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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