日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: AW1-4
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生殖工学
ゼブラフィッシュにおけるキンギョ由来ミトコンドリア移植によるヘテロプラスミーの誘起
*遠藤 充山羽 悦郎藤本 貴史
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抄録

【目的】魚類では異種間交雑や倍数性操作により核ゲノム構成を人為的に制御し,不妊個体が作出されてきた。一方,哺乳類ではミトコンドリアヘテロプラスミーの顕在化による雄性不妊が報告されている。魚類ではヘテロプラスミーと生殖特性の関係についての知見が少なく,細胞質に起因する妊性の変化を解明できれば,新たな不妊化技術となる可能性がある。本研究では,ヘテロプラスミーが配偶子形成に与える影響の調査に向け,ゼブラフィッシュ受精卵へキンギョミトコンドリアを移植し,人為的ヘテロプラスミー誘起を試みた。【方法】キンギョ未受精卵から単離したミトコンドリアをMitoTracker Green FMで蛍光染色した。このキンギョ由来ミトコンドリアを,人工授精により作出したゼブラフィッシュの1細胞期胚に顕微注入し,ミトコンドリア移植を行った。32個体の移植胚を個別培養し,生残率,奇形率を調べるとともに,蛍光顕微鏡によりキンギョ由来ミトコンドリアの動態を観察した。また,8細胞期から孵化期までの各胚発生段階におけるキンギョmtDNAの存否を,種判別プライマーを用いたPCRにより調査した。プライマーはゼブラフィッシュとキンギョのミトコンドリア遺伝子atp6に対して種特異的に増幅するように設計した。【結果】受精72時間後の孵化期における移植胚の生残率と奇形率は81.3%,11.1%であり,無処理胚(83.3%,5.7%)と比較して有意差はなかった。移植胚では,キンギョ由来ミトコンドリアを示す蛍光シグナルが胚発生の進行とともに胚体全体へ拡散した。また,移植胚のすべての胚発生段階でゼブラフィッシュとキンギョのmtDNAが検出された。以上のように,移植したキンギョmtDNAは胚発生を通して存在したため,本研究のミトコンドリア移植は,魚類のヘテロプラスミー研究の良いモデルであると考えられた。今後,ヘテロプラスミー個体での始原生殖細胞の分化や配偶子形成の解析により,ヘテロプラスミーが生殖特性へ与える影響を明らかにできると考えられる。

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