主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第111回日本繁殖生物学会大会
開催地: 信州大学繊維学部
開催日: 2018/09/12 - 2018/09/16
【目的】常染色体優性遺伝病であるマルファン症候群の発症機構の1つにハプロ不全があり,その発症有無及び重篤度の違いは正常アリルのfibrillin-1遺伝子(FBN1)発現量と関係していると考えられている。本研究では,我々が既に開発したヘテロFBN1変異ブタのFBN1発現量をRNA干渉によりノックダウン(KD)することで,表現型を制御可能か否かの検証を目的とした。【方法】FBN1を標的とするshRNAを恒常的に発現するベクター(shRNAベクター)を3種類作製した(sh3602,sh6999,sh7625)。それらをブタ線維芽細胞に導入し,リアルタイムPCRでFBN1mRNA発現抑制度を比較した。次にFBN1ヘテロ変異個体由来の精巣上体凍結精子を用いてICSI-mediated gene transfer法により,体外成熟卵にshRNAベクターを導入した。sh3602区では154個,sh7625区では164個の胚をそれぞれ1頭のレシピエントの卵管に移植した。【結果】3種のshRNAベクターはそれぞれ効果的なFBN1mRNA発現抑制を示した(対照区比7.7%,16.1%,14.0%)。KD効果の高いshRNAベクター(sh3602,sh7625)を導入した胚の胚盤胞形成率と細胞数は,それぞれ32.5%(25/77)及び52.6±7.2,36.7%(29/79)及び60.9±10.8であり,非導入区の成績34.2%(26/76)及び71.7±9.9と同等であった。shRNAベクター導入胚を移植した2頭のレシピエントの受胎が確認された。【考察】FBN1発現抑制を目的とするshRNAベクター導入後も,胚の体外・体内発生能は良好に保たれると考えられた。今後は誕生してくる個体の表現型解析を行う予定である。