主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第111回日本繁殖生物学会大会
開催地: 信州大学繊維学部
開催日: 2018/09/12 - 2018/09/16
【目的】ラット胚のガラス化保存において,2細胞期胚のガラス化保存は可能であるが,それ以前の発達段階の胚のガラス化保存後の成績は不安定である。近年,遺伝子改変ラットの作製技術の発展により前核期胚の利用が増加している。凍結保存した前核期胚を遺伝子改変ラット作製に利用することは,作業の効率化に有効である。そこで本研究では,体外あるいは体内で発達したラット前核期胚をガラス化保存し,その後の産子への発生について検討した。【方法】8週齢以上のWistar雌ラットを過排卵処理(PMSG: 150 iu/kgおよびhCG: 75 iu/kg)した後,同系統の成熟した雄ラットと交配した。交配した雌よりhCG投与24時間後に前核期胚を採取した。前核期胚を0時間,4時間,7時間体外培養した後,前処理液(P10: 10%プロピレングリコール)および凍結保存液(PEPeS: 10%プロピレングリコール,30%エチレングリコール,20%パーコール,0.3 Mスクロース)を用いて液体窒素中に保存した。融解後,生存した胚は偽妊娠雌の卵管内に移植し,産子への発生について検討した。また,前核期胚をhCG投与より24時間後,28時間後,31時間後に採取し,同様の方法で凍結保存後,融解し移植後の産子への発生について検討した。【結果および考察】採取後0,4および7時間体外培養した前核期胚は,ガラス化保存後12,25および24%が産子に発生し,発達時期が進むとともに発生率が増加する傾向が見られた。また,hCG投与より24時間後,28時間後,31時間後に採取した前核期胚は,ガラス化保存後14,21および23%が産子に発生し,体外培養した場合と同様に,時間の経過とともに発生率が増加する傾向が見られた。以上の結果より,ラット前核期胚は,凍結保存する際の発達時期によって,その後の産子への発生に影響を及ぼすことが示唆された。