主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第112回日本繁殖生物学会大会
回次: 112
開催地: 北海道大学
開催日: 2019/09/02 - 2019/09/05
【目的】本研究室の先行研究では,KSOMにアルギニン(Arg)およびロイシン(Leu)を複合処理(Arg+Leu処理区)することで胚移植による着床率が上昇すること,Arg単独処理(Arg処理区)により着床率が低下すること,Leu単独処理(Leu処理区)では着床率が変化しないことが明らかにされている。Argは一酸化窒素合成酵素(NOS)の作用によりNOに代謝される。マウス胚盤胞では,内皮型NOS(eNOS),リン酸化型eNOS(p-eNOS),誘導型NOS(iNOS)が発現することが報告されている。そこで本研究では,培養液へのアミノ酸処理とNOSアイソフォームの関連を明らかにすることを目的として,Arg,Leuがマウス体外受精由来胚盤胞におけるeNOS,p-eNOS,iNOSの発現に及ぼす影響を解析した。【方法】未経産ICR雌マウスおよび成熟ICR雄マウスを用いて体外受精を行い,胚盤胞を作出した。培養96時間の胚盤胞をArg,Arg+LeuまたはLeuで24時間処理した。免疫蛍光染色により,eNOS,p-eNOS,iNOSの発現動態を解析した。【結果】Arg処理区では,対照区と比較してeNOSの発現量は有意に増加していた。p-eNOS,iNOSの発現量に有意な差はみられなかった。Arg+Leu処理区およびLeu処理区では,対照区と比較してeNOSの発現量に有意な差はみられなかった。本研究の結果,Arg処理区においてeNOSの発現が増加することが明らかになった。体外培養系における過剰なNOは胚発生に悪影響を与えることが報告されている。よってArg処理区では,eNOSの発現増加に伴いNOが過剰に生じたことにより着床率が低下した可能性が考えられた。