日本婦人科腫瘍学会雑誌
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シンポジウム3
婦人科悪性腫瘍における当院のがん遺伝子パネル検査の現状と課題
水野 祥河田 啓合田 真優子三澤 亜純小池 亮稲葉 洋文三角 史鈴木 由梨奈堀江 弘二
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2025 年 43 巻 2 号 p. 29-35

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抄録

概要:【背景】がん治療における個別化医療が掲げられ,がん遺伝子パネル検査(以下CGP)が導入された一方で,検査による薬剤到達率は8~10%と低い.【方法】2019年7月~2024年6月まで当院でCGPを提出し,エキスパートパネル(以下EP)を実施した549例から婦人科悪性腫瘍症例を抽出し,がん種や遺伝子変異の検出率,国内承認薬や治験への到達や後治療について後方視的に検討した.【結果】当院の婦人科悪性腫瘍症例は57例(子宮体癌8例,子宮頸癌22例,卵巣癌30例,その他7例)であった.がん関連遺伝子は58例(86.7%)で同定され,国内臨床試験は33例(49.3%)で提示された.そのうち6例(9.0%)(国内承認薬6例,臨床試験なし)で治療が提示された.また,EPで提示された以外の臨床試験に至った症例は7例(10.4%)であった.治療到達例の遺伝子変異は全てMSI-High,TMB-High,相同組み換え修復(HRD)異常であった.CGPで上記遺伝子変異があってもPD-1抗体やPARP阻害剤の投与既往により治療に到達しなかった症例もあった.【結論】婦人科悪性腫瘍症例で遺伝子変異に基づく治療が提示される症例は既報とほぼ同等であった.今後の初回治療などの変化によりCGPの有用性を注視する必要がある.

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