主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第112回日本繁殖生物学会大会
回次: 112
開催地: 北海道大学
開催日: 2019/09/02 - 2019/09/05
マウス着床前初期胚において,受精直後には転写が停止した状態にあるが,1細胞期中期頃から胚性ゲノム由来の遺伝子発現であるZygotic Gene Activation(ZGA)が起こることが知られている。このZGAには2つの段階が存在し,minor ZGAとmajor ZGAと呼ばれている。 minor ZGA を阻害した胚では,major ZGA で発現するはずの遺伝子が活性化されず胚発生が妨げられることから,minor ZGA はmajor ZGA を引き起こす役割があると考えられている。このようにminor ZGA からmajor ZGA への切り替わりは初期胚発生の進行において重要であることが分かっているが,その制御機構に関しては現在ほとんど明らかになっていない。近年の研究でDuxという遺伝子がmajor ZGA遺伝子の一部の発現を調節していることが示唆された。また,Duxはタンデムにリピートしていることが示唆されているが,実際にどのように反復しているかについてはこれまで明らかにされていない。そこで本研究では,まずゲノムからDuxの両端のプライマーを用いてPCRを行い,Duxの全長をコードするPCR産物を得てその配列を決定した。その結果,Duxとは配列が一部異なる15種類のDuxパラログを得た(以下これらをDux family遺伝子と呼ぶ)。次いで,1細胞期胚でDux以外のDux family遺伝子も発現しているかどうかを調べたところ,少なくとも14種類のDux family遺伝子が発現していることがわかった。次に確認されたDux family遺伝子の中の1つについてそのcRNAを合成し,2細胞期初期の片方の割球に顕微注入したところ,Duxの標的と考えられているmajor ZGA遺伝子の発現が上昇した。以上より,着床前初期胚においてDux以外の多数のDux family遺伝子もminor ZGAの時期に転写されており,major ZGAの遺伝子発現を制御する機能を持っている可能性が示された。