日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-23
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臨床・応用
体外受精胚および単為発生胚を用いた長期不受胎牛への追い移植の効果の比較検証
*柳沼 日佳里舟島 なつみ石田 大樹濱野 晴三宮村 元晴土屋 秀樹鬼頭 武資岩田 尚孝桑山 岳人白砂 孔明
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抄録

【目的】酪農現場でリピートブリーダー牛(RBC)の存在が問題視され,繁殖手段としてAI(人工授精)後7日目に胚移植を行う追い移植で約半数が受胎することが明らかにされている。我々は追い移植に交雑種体外受精(IVF)胚を使用してきた(AI+IVF)が,双胎妊娠による分娩事故の発生が問題点となる。これを回避するため単為発生(PA)胚を用いた追い移植(AI+PA)を考え,正常牛にAI+PAを行っても異常産が起きないことを報告した。本研究では,RBCに対するIVFやPA胚の追い移植の効果とIVFとPA胚の機能的差異の検討を行った。【方法】乳用種および交雑種卵子からIVFおよびPA処理により胚を作出し,黄体側または非黄体側子宮角に無作為に移植した。IVFとPA胚の機能的差異について遺伝子発現を網羅的に解析した。【結果】経産牛におけるAI回数別受胎率は,4~6回で32.7%,7~9回で29.4%,10回以上で27.0%だった。AI+IVFのAI回数別受胎率は,4~6回で41.8%,7~9回で39.2%,10回以上で30.6%であり,4~9回の個体に対して有意に受胎率が向上した。AI+PAのAI回数別受胎率は,4~6回で36.5%,7~9回で42.1%,10回以上で17.4%であり,7~9回の個体に対して有意に受胎率が向上した。AI+IVFの総受胎率は46.7%で,AI+PAの総受胎率35.6%よりも有意に高かった。両追い移植とも胚の移植部位による受胎率の差は認められなかった。IVFと比較してPA胚はインターフェロンタウmRNA発現量とインターフェロン活性が高かったが,胚盤胞発生率や透明帯脱出率が低かった。遺伝子発現解析の結果,Gene ontology解析ではCell proliferation等が,KEGG解析ではMetabolic pathways等が有意な関連を示した。以上から,IVFやPA胚追い移植はRBCの受胎を改善させるが,胚の機能の差異により長期不受胎牛の受胎改善効果に違いが見られると考えられた。

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© 2019 日本繁殖生物学会
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