日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-2
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ポスター発表
ヤギ視索前野由来キスペプチンニューロン不死化細胞株の樹立
*大下 雪奈棟朝 亜理紗末富 祐太真方 文絵束村 博子大蔵 聡松田 二子
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抄録

【目的】視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)サージ状分泌は雌において排卵を誘起する。ウシ,ヤギなどの家畜では視床下部視索前野(POA)にキスペプチンニューロンが分布し,ヤギにおいてPOAキスペプチンニューロンは高濃度エストロジェンにより活性化されることから,GnRHサージ分泌の中枢であることが示唆されている。家畜における排卵制御の詳細なメカニズムの解明に有用な細胞株を得るため,ヤギのPOAキスペプチンニューロンに由来する細胞株の樹立を試みた。【方法】 胎齢118日雌シバヤギ胎子から採取したPOAの初代培養細胞に,SV40 large T抗原遺伝子を組み込んだレンチウイルスベクターを添加して不死化した。遺伝子が導入された細胞を選抜し,得られた細胞集団のクローニングを行って,各細胞クローンから全RNA抽出とcDNA合成を行った。POAキスペプチンニューロンで発現するキスペプチン遺伝子(KISS1)とエストロジェン受容体α遺伝子(ESR1)の発現,および内部標準としてβアクチン遺伝子(ACTB)の発現をリアルタイムRT-PCRにより定量し,KISS1ESR1のmRNA発現が高かったものを選抜した。これらの細胞クローンにエストラジオール(0,1,10,50,100,1000 pM)を添加して24時間培養し,全RNAを抽出した。リアルタイムRT-PCRを行い,エストロジェン添加によってKISS1 mRNAが増加傾向を示したものをPOAキスペプチンニューロン細胞株の候補とした。[結果及び考察] ヤギPOA初代培養細胞の不死化によって80個の細胞クローンを得た。このうち,KISS1ESR1の発現が高い5個の細胞クローンを選抜した。そのうち3個の細胞クローンにおいてエストラジオール添加によりKISS1発現が上昇する傾向が認められ,これらをヤギPOAキスペプチンニューロン不死化細胞株の候補として同定した。これらの細胞株は,家畜の排卵におけるキスペプチンニューロンの機能解明に役立つことが期待される。

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© 2019 日本繁殖生物学会
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