主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第112回日本繁殖生物学会大会
回次: 112
開催地: 北海道大学
開催日: 2019/09/02 - 2019/09/05
【目的】鉄は,体内で細胞増殖や酵素の補因子として利用される。食事から肝臓へ貯蔵された鉄は,その全身の増減に応じて高度に制御される。鉄不足時に鉄は輸送体のFerroportin(FPN)により肝臓から血中へと放出され,Transferrin(TF)と結合し標的組織へ運搬される。一方過剰時にはFPNを阻害するHepcidin(HPD)により血中への鉄の放出が阻害される。当研究室で卵胞発育期のブタ卵胞液にTFが蓄積することを見出したことから,本研究では卵胞発育期特異的な肝臓と卵巣間のコミュニケーションの存在と意義を検討した。【方法】実験1 3週齢C57BL/6雌マウスにPMSG,hCGを投与し,卵巣,顆粒膜細胞(GC)のTF mRNA,タンパク質,TF受容体(TFR1)のmRNA,タンパク質,局在を調べた。またGCの鉄局在をPMSG刺激前後で検討した。実験2 PMSGおよびhCGを投与したマウス肝臓および血清を回収し,肝臓のTf,Fpn,Hpd発現,TF,FPN,HPDのタンパク質発現と局在,血清鉄量を測定した。実験3 E2単独投与およびE2とE2受容体阻害剤(ICI)を同時投与したマウス肝臓を回収しTf,Fpn,Hpd発現,血中鉄量を調べた。【結果および考察】実験1 GCのTF発現はPMSG,hCG投与に関わらず低値であったが,TF量はPMSG刺激後に有意に増加した。TFR1はPMSG投与後のGCで発現,局在化し,PMSG投与後のGCに鉄は局在していた。実験2 PMSG投与後の肝臓でTF,FPN mRNA,タンパク質はPMSG刺激により発現,局在し,hCG投与後に消失した。一方HPD mRNA,タンパク質はPMSG投与後に低下した。血清鉄量は,PMSG投与後に増加し,hCG投与後に減少した。実験3 E2投与でTf,Fpnの遺伝子発現および血中鉄が上昇し,E2とICIの同時投与で低下した。以上より,FSH刺激により卵巣で合成されるE2が肝臓の鉄放出を誘導し,この結果卵胞発育期特異的に鉄が卵巣に蓄積すると考えられた。