主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第112回日本繁殖生物学会大会
回次: 112
開催地: 北海道大学
開催日: 2019/09/02 - 2019/09/05
【目的】非閉塞性の乏精子性・無精子症は,疾患モデルが存在せず研究が進んでいない。そこで我々はその代替モデルとして加齢精巣の解析をすすめている。本研究では精巣移植術を用いて,加齢環境が精巣に与える影響を調べた。【方法】精巣ドナーマウスにはC57BL/6-Tg(CAG-EGFP)C14-Y01-FM131Osbマウス(1.5〜4.5 dpp)を,レシピエントマウスには健康なC57BL/6Nマウスを加齢させたものさせたもの(2〜2.4年齢)を用いた。19Gの注射針を用いて精巣内に移植し,移植4ヶ月後に摘出した。解析は免疫染色と定量的PCRを行なった。遺伝子改変マウスはIL1RA(IL1拮抗阻害因子)とIL1R2(IL1のおとり受容体)の両欠損マウス(以下ΔRAΔR2マウス)を使用した。【結果】老齢レシピエントに移植した精巣でも精子形成は確認された。しかし自己複製因子Gdnfの発現量が維持されているにも関わらず,未分化型精原細胞が減少していた。この時,精子形成に必要なレチノイン酸の合成遺伝子Aldh1a2,分解遺伝子Cyp26a1はともに変化が見られなかった。以上の結果から,加齢による未分化型精原細胞の減少には,自己複製因子やレチノイン酸以外の要因が関与していることが示唆された。そこで我々はその要因として,老化細胞から分泌され,病的でない程度の炎症を惹起するSenescence-associated secretory phenotype(SASP:老化細胞関連分泌現象)因子に着目した。定量的PCRの結果,加齢精巣ではSASPの分子実体である炎症性サイトカインIl1a/Il1b及びその下流因子であるIl17aの発現が上昇していることを見出した。現在これらのサイトカインの発現上昇による精巣への悪影響を解明すべく,IL1シグナル過剰入力が起こるΔRAΔR2マウスの精巣の解析をすすめている。