日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-46
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ポスター発表
体外と体内の受精環境が胚のオートファジー活性に与える影響について
*蟹江 沙耶渡辺 連岸上 哲士
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抄録

【目的】哺乳類の着床前胚の発生率は,体内環境おいては高い一方,体外では低く,受精および発生する環境の影響が顕著である。体外培養によりさらに高い産仔率および健康な個体を得るためには,体外環境を適切に調節することで体内環境にいる胚の細胞生理状態に近づけることが重要と考えられる。胚のオートファジー活性は着床前の発生に不可欠であり,その活性の程度がその後の発生率や産子率の指標になることが報告されている。本研究では,体外と体内の受精環境が胚の生理状態に与える影響を明らかにするため,胚の環境がオートファジー活性に与える影響を調べた。【方法】過排卵処理したICR系統のマウスを用いて体外受精胚をIVFにより作出し,体内受精胚を交配後2細胞灌流により回収した。胚のオートファジー活性のライブセルイメージングを行うため,各胚をDAPGreenにより染色後CV1000を用いてタイムラプスによる観察を行った。また,培地成分の影響を検証するためCZB培地ならびにCZB培地からBSAやGlnを含まない培地でオートファジー活性を比較した。【結果・考察】体内と体外受精胚のオートファジー活性の変化を2細胞期から胚盤胞期にわたり比較したところ,2細胞期では体内受精胚の活性が高く,それ以降の桑実期や胚盤胞期では逆に体外受精胚において活性が高くなる傾向にあることが明らかとなった。このことから,受精を含む2細胞期までの胚の環境は着床前発生におけるオートファジー活性に影響を与えることが示唆された。さらに,培養液成分がオートファジー活性に与える影響を明らかにするためGlnやBSAを含まない培地で体外受精胚のオートファジー活性を観察したところ,2細胞期におけるオートファジー活性が上昇することが明らかとなった。以上のことから,体内と体外受精胚ではオートファジー活性が着床前発生を通じて異なることや培地成分の影響を受けることが示唆された。

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