日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-47
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ポスター発表
ウシ初期胞状卵胞由来の発育途上卵母細胞の体外培養における発育速度に関する研究
*平尾 雄二
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抄録

【目的】ウシ初期胞状卵胞から採取した発育途上卵母細胞を14日間培養すると一部は発生能をもつ卵子へと成熟するが,体積の平均値は体内発育後(100%)に対して約50%から培養後の約80%へ増大するに留まった。集団としての卵母細胞の発育が十分でない理由を明らかにするため,個々の卵母細胞の体積変化を比較検討した。【材料および方法】直径0.5〜0.8 mmのウシ卵胞から卵母細胞・卵丘細胞の複合体を採取し,4%ポリビニルピロリドン(平均分子量360 000)を添加した修正TCM199で培養した。培養開始日をDay 0とし,卵母細胞の直径をDay 1およびDay 14で測定し体積を算出した。培養前の発育段階の影響を調べるため,Day 1での体積によって6群(198〜296個)にわけた。【結果および考察】Day 1における各群の平均直径はそれぞれ94.1,96.9,98.9,100.7,102.5,104.4 μmであり,Day 14では115.3,117.3,118.8,119.9,120.8,121.7 μmであった。Day 1とDay 14における体積を比較すると,群に関わらず卵母細胞間のばらつきが大きく,増加率が最小の卵母細胞で113%,最大では242%へと発育していた。この結果から,様々なレベルで発育が停滞している多数の卵母細胞の存在が明らかとなった。一方,体積増加量が各群上位10%の卵母細胞では,平均の増加量は534351〜568860 μm3の範囲にあり,群間での差は小さく,使用した培養条件下における最大の発育速度を表していると考えられた。その場合でも,最小の群を代表する20個の卵母細胞のDay 14における体積は,最大の群を代表する26個の卵母細胞に比べ85.2%であり,培養期間が不十分であることが示唆された。以上の結果,Day 14の卵母細胞の体積が不十分であることの理由には,培養中に発育そのものが停滞する場合と最大限に発育しても14日間では不十分な場合が含まれることが明らかとなった。

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