主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第113回日本繁殖生物学会大会
回次: 113
開催地: 東北大学
開催日: 2020/09/23 - 2020/09/25
【目的】マウスでは着床前初期発生期,特に1細胞期から2細胞期の後期にかけて著しい遺伝子発現パターンの変化が起こる。クロマチン構造は遺伝子発現調節に深く関与することが知られており,1細胞期の胚は非常に緩んだクロマチン構造を持ち,2細胞後期になると急激に締まったクロマチン構造へと変化する。そして,このようなクロマチン構造および転写制御の変化に2細胞期のDNA複製が関わっていることが古くから報告されている。しかし,2細胞期のDNA複製がどのようにしてクロマチン構造変化ひいては遺伝子発現パターンの変化を引き起こしているのか,その分子機構についてはこれまでまったく明らかにされていない。コアヒストンH3変異体であるH3.1/3.2は締まったクロマチン構造に関与し,1から2細胞後期にかけてDNA複製依存的にその核局在量が急激に増加することが報告されている。そこで本研究では2細胞期のDNA複製によるクロマチン構造変化ひいては遺伝子発現プログラムの変化へのH3.1/3.2の関与について解析を行なった。【方法・結果】まず初めにH3.1/3.2をノックダウン(KD)した2細胞後期の胚においてFRAP法によるクロマチン構造解析を行なった。その結果,KD胚では2細胞後期においてもクロマチン構造は緩いままであった。さらに,H3.1/3.2のKDによる遺伝子発現パターン変化への影響を調べるため,1細胞期で発現し,2細胞後期でDNA複製依存的に発現が抑制される遺伝子群の発現解析を行なったところ,KD胚では2細胞後期での発現が十分に抑制されていなかった。最後にH3.1/3.2のKDが初期発生に与える影響を調べたところ,KD胚は2細胞期以降の胚発生率が低下していた。これらの結果から,1から2細胞後期にかけてDNA複製依存的にH3.1/3.2がクロマチンに取り込まれることにより締まったクロマチン構造が形成され,この締まったクロマチン構造により1細胞期で発現する一部の遺伝子群の発現を抑制していることが示唆された。